大連の北朝鮮籍貨物船 動きは活発 (2017年8月17日)

    17日朝、11時頃の大連コンテナターミナルと大連沖の北朝鮮船籍船の状況を見た。

    コンテナ埠頭には、大連沖に停泊していた別の北朝鮮籍貨物船が入港している。
    20170817 1100jst
    Source: Marine Traffic, 2017/08/17 1100JST

    また、大連港沖を見ると、昨日、着岸していた貨物船が北朝鮮に向かって航行しており、新たに北朝鮮船籍船が入港してきている様子も分かる。昨日の記事にも書いたように、30日間の猶予期間があるので、この状況はしばらく続くものと思われる。もし、30日後にもこの状況が続いているのであれば、積荷が制裁対象品目ではないか、中国が制裁を厳格に履行していないということになる。
    20170817 1103jst
    Source: Marine Traffic, 2017/08/17 1103JST

    ざっと見ただけであるが、この他にも煙台沖などを航行する北朝鮮船籍船が確認できた。

    大連沖にいた北朝鮮船籍船、コンテナ埠頭に着岸中 (2017年8月16日)

    15日、大連沖に停泊していた北朝鮮船籍船2隻が、大連のコンテナ埠頭に着岸している。

    地図がずれていることに注意。
    20170816 marine traf 1812jst
    Source: Marine Traffic, 2017/08/16 1812JST

    Google Earthで見ると、2隻はそれぞれの☆の位置に着岸していると思われる。
    20170816 g earth dalian close1
    Source: Google Earth 筆者加工

    コンテナ埠頭なので、コンテナの中身は不明。仮に安保理決議2371で取引が禁じられた品目であっても、既に契約が行われている場合(今回のケースはそれに相当するであろう)、安保理当該委員会に45日以内に報告することを条件に、決議採択から30日以内であれば輸入は許可されている。一方、中国独自の輸入禁止措置にこうした猶予期間が設けられているのかは不明。

    下の写真は、咸鏡南道にあるHungnam Manson Trading Companyの加工水産物であるが、これらも安保理決議2371では取引禁止品目とされている。
    20170815 foreign trade seafood f
    Source: Foreign Trade of the DPRK, 2016 3, Foreign Trade Publishing House, p.21

    <追記: 2017/08/17 1246>
    中国当局の禁輸措置に関するコメントをいつもタイムリーに中国語を翻訳してコメントして下さる方から頂いた。本当に有難い限りである。以下、コメントからも見られるが、訳出された部部のみ記事の方にも転載しておく

    **************
    ----------
    国連安保理第2371号決議の執行に関する公告
    商務部 海関総署 公告 2017年第40号

     国連安保理第2371号決議の執行のため、中華人民共和国対外貿易法にもとづき、ここにおいて朝鮮との輸出入貿易に係わる一部産品につき下記の管理措置をとる:
    1 公告の施行日より、石炭・鉄・鉄鉱石・鉛・鉛鉱石・水産物の朝鮮からの輸入を全面的に禁止する。公告の施行日の前に既にわが港に到着している上述の貨物につぃては、通過の許可を与えることができる。9月5日の零時からは、輸入の手続きも行わない(税関が既に申告を受けたが、まだ通過の許可手続きをしていない貨物を含む)。この後、入境する上述の産品については、一律に貨物輸入禁止により処理する。
    2 上記の措置は、信頼できる情報にもとづいて、朝鮮原産ではなく、かつ朝鮮の羅津港(Rason)を経由して再輸出されたと輸出国が証明する石炭には適用しないが、輸出国は事前に国連安保理が第1718号決議にもとづいて設立した委員会に報告しなければならない。羅津港を経由して朝鮮原産でない石炭を輸入する中国企業は、国連安保理が第1718号決議にもとづいて設立した委員会への輸出国の報告資料を保持しつつ通関手続きを行わなければならない。
    3 関係する禁輸産品の詳細については付属文書を参照のこと。
    本公告は2017年8月15日より施行する。
    付属文書:国連安保理2371号決議により新増設された対朝鮮禁輸一部産品の明細
    ----------

    第2項は、一部の石炭が「他国原産の石炭の再輸出」という名目で北朝鮮から輸出されていたことを示しているように思われます。実際、前回の公告第12号を確認すると、輸入を停止したのは「朝鮮原産の石炭」となっているので、北朝鮮の港から来たものであっても「朝鮮原産」に相当しないとされる石炭は輸入可能だったことになります。
    今回の措置にそういう「抜け穴」があるのかについては、自分も興味があるのですが、なかなか公告と付属文書の文面だけからでは判断がつけられません。

    ----------

    コメントを下さった方がお書きに「第2項」は、ロシア産(等外国の)石炭の羅先港経由での第三国への輸出を許可する条項で、安保理決議条項にも含まれている。記憶では、北朝鮮産の石炭輸入に上限を設けた一つ前の決議には既にこの条項はあり、きちんと比較こそしていないが、今回の制裁決議2371でもそれをそのまま引き継いでいるものと思われる。

    「第1条項」は、一見、制裁決議を履行する形を取っている。しかし、今一つよく分からないのは「公告の施行日の前に既にわが港に到着している上述の貨物については、通過の許可を与えることができる」と「通過の許可」を与えておきながら、一方で、「9月5日の零時からは、輸入の手続きも行わない」としている点である。「通過」を一度陸揚げされ、そのまま第三国に輸出されるという意味ではなく、「税関を通過させる」つまり、「中国に輸入する」という意味で捉えれば、安保理制裁と内容的には一致するのだが。

    「災難に遭ったエビ」:米国と中国にTHAAD問題で翻弄されるエビ(韓国)、BGMはディズニー系らしい、文在寅光復節演説 (2017年8月15日 「uriminzokkiri」)

    15日、uriminzokkiriにアップロードされた動画。「鯨の争いでエビの背中が割れる」という朝鮮の諺を基にした風刺アニメ。

    「アメリカ鯨」と「アジア鯨」の板挟みになり、THAAD配備で困り果てている「エビ」の姿を現している。「アジア鯨」はもちろん中国であるが、中国とは言っていないところもポイント。また、アニメに描かれている鯨の顔も「アメリカ鯨」は凶悪な強盗のように、「アジア鯨」は普通の顔をしている。しかし、エビが「アジア鯨」を指して「偉容」という吹き出しでは、「偉容」に括弧が付けられている。また、THAADを示す「長い槍」の袋にも「用」と一つだけ漢字が使われている。この辺り、わざわざ1文字だけ漢字を入れることで中国を連想させるための細かな演出であろう。

    また、YouTubeにこの動画をアップロードしたところ、BGMの著作権に関する案内が出た。使用禁止の楽曲ではないが、視聴による収益が著作権者に入るというもの。uriminzokkiriの動画は、しばしば外国の楽曲を使っており、この案内はよく見る。しかし、このアニメに使われているBGMはトーマス・ニューマンの映画『Finding NEMO』の中で使われている『新しい家』という曲のようで、ディズニー系の楽曲である。

    エビもNEMOも海の中で暮らしているのだが・・・ということなのか、もっと深い意味があるのか『Finding NEMO』を見ていないのでよく分からない。

    日本語字幕付き。

    Source: uriminzokkiri, 2017/08/15

    15日、「エビ」の文在寅の光復節演説を聞いていたら、「元帥様」の「戦略軍視察」ニュースが飛び込んできて、文在寅演説は項目を並べただけになってしまったが、文在寅は「エビ」どころかなかなか立派なことを言った。「韓国の許可なく、朝鮮半島で戦争を起こすことは許さない」という言葉であるが、これは米国が一国主義に基づいて身勝手に北朝鮮に対する武力攻撃をすることは容認しないという実に力強いメッセージである。

    「中国、新国連安保理対北朝鮮制裁発動、北朝鮮が対話に戻ることを期待」 (2017年8月14日 「Global Times」)

    14日、Global Timesが、「中国商務部と中国海関(税関)が月曜日(14日)に、安保理制裁2371で規定された品目に対する措置を発動する発表した」と報じた。

    Global Times, China to start enforcing new UN sanctions on N.Korea, hopes to get Pyongyang back to talks, http://www.globaltimes.cn/content/1061291.shtml

    <追記: 2017/08/15 1455>
    大連沖に停泊中の北朝鮮船籍船。
    20170815 1445jst dalian port
    Source: Marine Traffic, 2017/08/15 1450JST

    画面左の☆から
    WOORY STAR
    SAHYANGSAN
    KUM SONG 5
    航跡があるのが8月13日01UTCに入港してきたTONG MYONG 9

    今後、どのような動きをするのか注目。

    「朝鮮半島をめぐる無謀な行動は現実としての戦争の危機を高める」:北朝鮮が先にグアムに向けてミサイルを発射すれば中国は中立 (2017年8月10日 「Global Times」)

    <追記:2017/08/15 9049>
    15日の中国外交部定例記者会見で、外交部報道官は、「北朝鮮がグアムを攻撃した場合、中国は中立を保つか」という質問に対し、下記のように発言した。

    ***************
    2つ目の質問についてですが、そのような仮定的な質問に答えるのは適切ではないし、私も答えたくありません。
    On your second question, it is not appropriate for me to answer such a hypothetical question, neither do I want to do so.

    Foreign Ministry of PRC, Foreign Ministry Spokesperson Hua Chunying's Regular Press Conference on August 14, 2017
    2017/08/15, http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/t1484636.shtml
    *****************

    肯定もしていないし、否定もしていないので、「中立」の可能性は否定されたわけではない。下記の中朝条約第2条に関わる話なので、外交部も容易に発言できないのであろう。

    <追記ここまで>
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


    10日のGlobal Timesに掲載されたReckless game over the Korean Peninsula runs risk of real warという社説の中で以下。

    *****************

    中国は、これ以上、「米国と北朝鮮に対して引き下がるよう説得はできない。しかし、両国にはっきりと明言しておくが、彼らの行動が中国の国益を危険にすれば、中国は断固たる対応をする。
    Beijing is not able to persuade Washington or Pyongyang to back down at this time. It needs to make clear its stance to all sides and make them understand that when their actions jeopardize China's interests, China will respond with a firm hand.

    中国は、また次のことも明言しておく。北朝鮮がミサイルを発射し、米国領土を先に脅威に晒し、それに米国が報復をしても、中国は中立を保つ。米国と韓国が北朝鮮政権を転覆、交替させるための攻撃を仕掛け、朝鮮半島の政治情勢の変更をしようとするならば、中国はそれを妨げる。
    China should also make clear that if North Korea launches missiles that threaten US soil first and the US retaliates, China will stay neutral. If the US and South Korea carry out strikes and try to overthrow the North Korean regime and change the political pattern of the Korean Peninsula, China will prevent them from doing so.

    Global Times, Reckless game over the Korean Peninsula runs risk of real war, http://www.globaltimes.cn/content/1060791.shtml
    *****************

    朝鮮半島のstatus quoが中国の立場であることは従来通りであるが、北朝鮮がグアムに向けてミサイルを発射することは、status quoを変更するという認識から、中朝友好協力相互援助条約第2条のいずれか一方の国が武力攻撃された場合の自動介入条項の対象にならないことを明言した形になる。

    一方で、米韓が北朝鮮を攻撃しstatus quoを変更しようとするならば、中国はそれも「防ぐ」としている。「防ぐ」方法については言及されていないので、外交・経済上の措置だけなのか、軍事行動も含むのかは不明である。

    この中国の立場表明は、特に北朝鮮に対して強い抑止となると思われる。つまり、中国は、これまでの北朝鮮によるミサイル発射には、核実験と比べれば、比較的寛容な態度であったが、朝鮮戦争につながるような無謀な「方向」に向けての発射をすれば、中国は直接攻撃はしないものの、北朝鮮が攻撃されても傍観するというものである。一方、米国の立場からすれば、北朝鮮を攻撃した場合、憂慮すべき中国の自動介入がないことが確認されたわけで、北朝鮮を攻撃しやすい状況になったといえる。

    もちろん、北朝鮮がミサイルを発射してもしなくても、米国が北朝鮮を攻撃すれば、東北アジアは壊滅的な打撃を受けることは依然として変わらない。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「副部長同志」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

          dprknow

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