「20時報道」:チンダルレ・サファリニ児童基金 金正日が名付け親 (2012年11月30日 「朝鮮中央TV」)

    「20時報道」を見ていたら、バッジを付けた外国人女性が登場した。しかも、ただのバッジではなく、金日成・金正日両名が赤旗に描かれている金正日逝去後に登場した(アナウンサーが着用しだした)大型バッジである。人共旗バッジかと思ってよく見たが、やはり円が二つ見えるので、金日成・金正日バッジであろう。番組では、この女性のことを「チンダルレ・サファリニ」と呼んでおり、「サファリニ」は外国人名だとしても「チンダルレ」はアナウンサーの発音からしても朝鮮語の「ツツジ」と同一である。

    児童基金設立及び寄付金寄贈式で演説をするバッジを付けたチンダルレ・サファリニさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-29-17.flv

    一体、この女性は何者なのかと思って調べてみたら、2012年3月22日付の『労働新聞』の記事「太陽の光の下、チンダルレは外国の地でも美しく咲いている」にその答えが出ていた。

    『労働新聞』:「태양의 빛발아래 진달래는 이국땅에서도 아름답게 피여난다」
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0037&chAction=D

    記事によると、この女性は駐朝パレスチナ外交代表団の代表ムスタファ・アル・サファリニの娘であるという。ムスタファ夫妻は長年不妊に悩んでおり、平壌産院で不妊治療を受け、結婚10年後に平壌でこの女性を生んだという。子供を授かった夫婦は、金正日さんが建てた平壌産院で治療を受けることができ、無事かわいい娘が生まれたということで、金正日さんに感謝の手紙を書いた。手紙の中でムスタファさんは「昔から、子供が生まれたら最も高い博識を持ち、尊敬する方にお願いをして命名してもらうのがパレスチナ人民の風習なので、偉大な将軍様に娘の名前を付けて頂きたい」と懇願した。彼の「正気の沙汰とは思えない僭越な」願いを「寛容に受け入れた」金正日さんは、この娘を「チンダルレ」と名付けた。チンダルレさんは7歳まで「平壌市民にかわいがられながら」暮らした後、平壌を離れた。

    この記事が書かれた当時26歳のチンダルレさんは、北京第3病院で医者として勤務しているとのことで、「平壌は私が生まれたところで、子供時代を過ごした故郷であり、私の第二の祖国である。金正日将軍様は、私に生命を与えて下さり、暖かい愛で育てて下さったお父様だ」と語っているという。

    父のアル・ムスタファ・サファリニさんとチンダルレさん(北京にて)
    チンダルレ親子
    Source: 労働新聞、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0037&chAction=D

    北朝鮮の国籍法が出生地主義を採用しているのかどうかは分からないが、チンダルレさんは金正日さんに命名されたということもあり、準朝鮮公民扱いを受けてバッジも提供されたのであろう。

    意味ありげにバッジを触る金ジョンスク対外文化連絡委員会委員長
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-29-17.flv

    児童基金を設立することはよいことであるが、どう考えても北京の病院の医師であるチンダルレさんの個人的に資金だけでは、基金にはならないであろう。この式典には、北京公共外交文化交流有限公司理事長の馬振軒さんも参席し演説を行っているので、中国系の資金が投入されたのではないかと思う。

    なお、私は気づかなかったのだが、9月に北京で行われた対北朝鮮投資説明会でチンダルレさんが「チンダルレ児童基金」への協力を呼びかけたとの報道がある。

    『중앙일보』「김정일 아랍계 수양딸, 北 투자설명회 등장」:
    http://article.joinsmsn.com/news/article/article.asp?total_id=9441574

    また、チンダルレさんの名前の中国語への音訳である「金達莱」(朝鮮中央通信の中国語版で確認、中国語翻訳サイトで調べたが、「金达莱」にツツジという意味はないようだ)を彼女の名前のように紹介しているサイトもあったが、上に書いた記事のとおり「チンダルレ」は「ツツジ」を表す朝鮮語(固有語)である。

    <追記>
    「朝鮮中央通信」が動画でチンダルレさんのインタビューを配信した。動画では、彼女が大写しになっており、やはり胸のバッジは金日成・金正日バッジであった。7才まで平壌で育ったとのことなので、朝鮮語でインタビューを受けると思ったのだが、彼女は英語で話している。英語は非常にうまく、平壌を離れてからは英語圏の学校か国際スクールで学んだのではないかと思われる。一方、お父さんのアル・ムスタファさんと思われる男性は、金ジョンスク委員長との対談に際して中国語を話している。この両名は、朝鮮語よりも英語や中国語の方がうまいということなのであろうか。

    チンダルレさんは、20年ぶりにに平壌を訪れたときに北朝鮮のために何か良いことをしたいと考えたが、自分は医学部の学生なので(自分一人では何もできないと思い)、父や中国の人々と相談して「チンダルレ児童基金」を創設し、北朝鮮の子供たちの医療・健康問題の一助にしたいと考えたと述べている。それは、北朝鮮が自分にとって第二の故郷だからであると語っている。チンダルレさんはインタビューの冒頭で「私は父なる将軍様に名前を与えられた」と言っているが、どうやら北朝鮮が強調するほど今回の基金創設の決意とそれは強い関係はなさそうである。むしろ、医学を学ぶ若い学生として、北朝鮮の子供たちの現状を見て、本当に何かしたいという気持ちが彼女のインタビューを見ていると伝わってくる。このような純粋な気持ちから創設された基金が、その趣旨通りに北朝鮮の子供たちのために使われて欲しい。思えば、チンダルレさんと金正恩さんはほとんど同じ年である。年齢的には、金正恩さんにもチンダルレさんのような純粋さがあっても良いと思うのだが。

    インタビューを受けるチンダルレさん
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1200419

    「<訪問記>どうぞいらっしゃい、喜びとロマンが溢れる場所に(人民野外スケート場、ローラースケート場)(2012年11月27日 「朝鮮中央TV」)

    こちらは、「偽」ではなく本当の番組である。アイススケート場とローラースケート場については、既に過去記事に書いたが、この番組で見つけた追加情報である。

    まず、アイス・スケートシューズであるが、貸し出す際にブレードを磨いているのではなく、希望をすれば研磨機で磨いてくれるシステムのようである。また、スケートシューズはフィギヤ用、ホッケー用、スピード用など各種準備されており、希望に応じて貸し出すと番組では紹介している。

    各種シューズを紹介するレポーター
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-27-13.flv

    この番組では、アイススケート場で転ぶ人を多く映し出しているが、危なっかしいのは、手袋をしてスケートをしている人がほとんどいないことである。下の写真の男性は前のめりに転んでいるが、ブレードで手を切らないかとみていてはらはらした。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-27-13.flv

    番組では、外国製の整氷車も紹介している。スケート場の関係者は記者の「何時間毎に整氷作業をするのか」という質問に対して、「氷の状態により随時行っている」と答えている。

    整氷作業をする外国製整氷車
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-27-13.flv

    次に、番組ではローラースケート場を紹介している。過去記事では、「Jボードが珍しい」というようなことを書いたが、この番組を見ているとJボードもいくつか用意されており、貸し出されているようである。また、もう一種類別のボードがあるようだが、ネットで軽く検索するも、何というボードなのか見つけることはできなかった。

    各種ローラースケートを紹介するレポーター。スケートボードは「板ローラー」、Jボードは「関節ローラー」(Jボードは商品名のはずだが、Jをjointの頭文字と解釈している)、手に持っている不明のローラーは「個別ローラー」と呼んでいる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-27-13.flv

    「敬愛する金正恩同志の高貴な風貌について各国で報道」(2012年11月29日 偽「労働新聞」)

    경애하는 김 정 은동지의 고귀하신 풍모에 대하여 여러 나라에서 보도

    parody kim ju


    경애하는 김 정 은동지의 고귀하신 풍모에 대하여 14일과 27일 미국과 중국의 인터넷 신문들이 각각 보도하였다.

    미국의 인터넷 신문 《디 어니언》은 14일 경애하는 김 정 은동지께서는 온 세계에서 가장 남성적 매력을 지니시는 분이라는 글을 실었다. 이 글에서 《디 어니언》은 경애하는 김 정 은동지께서는 둥그렇게 생기시고 소년적 매력이 있으시는 핵위력과 곧 같으신 얼굴과 막강하시고 튼튼하신 몸을 지니시는 분이라고 칭찬하면서 평양에서 태어나신 원수님의 고귀하신 풍모는 온나라 녀성들을 하여금 솟구치는 격정을 금치 못하게 하고있다고 지적하였다.

    또 《디 어니언》기사를 그대로 인용한 기사를 중국의 인타넷 신문 《인민망》 27일부가 게재하였다. 신문은 경애하는 김 정 은동지의 많은 사진을 모시였다.

    「20時報道」:『先軍革命領導を引き継がれ』出版、送電線交換 (2012年11月21日 「朝鮮中央TV」)

    11月13日付けの「労働新聞」で既に報じられているが、金正恩さんの偉業に関する図書『先軍革命領導を引き継がれ』第1巻が出版されたと昨夜の「20時報道」が伝えている。このような重要な文献についての報道を「労働新聞」での報道よりも1週間以上遅れてテレビ報道するのは何か理由があるのだろうか。

    『先軍革命領導を引き継がれ』第1巻
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    Sorce: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-21-16.flv

    上の写真で見られるように、こちらは重要図書でありながら表紙に厚紙を使っていない装丁である。人民が学習しやすいようにという配慮であろうか。国内向けと海外向けで使い分けているのかもしれないが、過去に「朝鮮中央放送(ラジオ局)」が送ってくれた金日成関連の図書の表紙は厚紙であったような気がする。今回は、金正恩さんの著作ではないので、薄紙表紙にしたのかもしれない。

    この本の内容は、「20時報道」でもある程度伝えているが、「労働新聞」の記事の方が詳しいので、そちらで見ていくことにする。

    『労働新聞』:「도서 《선군혁명령도를 이어가시며》 제1권 출판」
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-11-13-0004&chAction=D

    この記事から分かるのは、どうやらこの本では、人の言葉を借りながら、金正恩さん自身が考える自分の理想像か、側近が考える彼の理想像を書き並べている点である。列記していくと次のようになる。

    1.主体の先軍革命偉業を忠実に継承している。(「주체의 선군혁명위업을 충직하게 계승하시며」)
    2.上の1との関係で、「偉大な首領様と父なる将軍様」そのままの秀でた天性を持つ偉人である。(「위대한 수령님과 어버이장군님 그대로 뛰여난 천품을 지니신 위인이시라는」)
    3.白頭の英雄男児である。その理由として、子供時代から銃も撃ち、乗用車を運転しただけではなく、世界政治や軍事など多方面の知識がある。(「어린시절에 총도 쏘시고 승용차도 운전하시여 사람들을 놀라게 하시였을뿐아니라 세계정치는 물론 군사를 비롯한 다방면적인 지식을 소유하시고 백두의 영웅남아다운 담력과 배짱을 보여주신」)
    4.孝行息子である。その理由として、いつどこでも「父なる将軍様」のご無事と健康のために尽力してきた。(「언제 어디서나 어버이장군님의 안녕과 건강을 위해 모든것을 다하시였으며」)
    5.軍に対する指導力を有する。その理由として、早くから銃隊(軍隊)と関係を持ち、「偉大な将軍様」の先軍革命を補佐した。(「일찌기 총대와 인연을 맺으시고 위대한 장군님의 선군혁명령도를 보좌해드리신」)
    6.全ての分野に通じた天才である。その理由として、政治と軍事、経済と文学・芸術、科学と技術、そして歴史と建築に至るまで全ての分野に対する博識を有する。(「정치와 군사,경제와 문학예술,과학과 기술 그리고 력사와 건축에 이르기까지 모든 분야에 대한 해박한 지식과 식견」)
    7.愛国者である。その理由として、崇高な祖国観、人民観、後代(未来世代)観を持つ。(「숭고한 조국관,인민관,후대관을 보여주는」)
    8.慈愛に満ち、限りなく謙虚で純朴な人である。(「크나큰 은덕에 대한」、「한없이 겸허하고 소탈하신 품성」)

    大体以上のようなことになるが、本当にそんな人が北朝鮮の指導者になったのであれば、北朝鮮は素晴らしい国になるであろう。一方で、そんなスーパーマンみたいな人がいるはずがないことはさておき、そんな人がいたとしたら空恐ろしい気もする。歴史が示すように、万能といわれる人が指導者になるとろくなことがない(北朝鮮は、その人の名前を挙げると激怒するので、その人の名前はご想像にお任せする)。

    その系で韓国大統領候補の安哲秀さんも各方面に秀でた才能を持つようであるが、もし当選して韓国大統領になったとき、そうした才能を総合して、一体何ができるのかという不安がある。日本のポピュリズムに便乗した政治家よりはましかもしれないが。

    いずれにせよ、朝鮮人民はこの本をしっかりと学習させられることになるのであろう。

    「20時報道」に話を戻すが、送電線を取り替えているという報道があった。

    送電線の取り替え作業をする羅先市送配電部の作業員
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    Sorce: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-21-16.flv

    北朝鮮では、発電設備の不足や稼働状態の悪化だけではなく、送電線の劣化による送電効率の悪さが電力不足の一因とされてきた。今回の取り替えに使われる送電線は「自体の力で開発した」送電線ということであるが、これで送電効率が改善すれば良いことである。ただ、羅先市ということなので、「自体の力」とはいうものの中国からの支援を受けてのことであろう。中国の投資企業も、電圧が不安定であったり、電力供給がしばしば中断しては、まともな操業状態を維持できないから、支援に乗り出したのかもしれない。

    <追記:2012.11.23>
    本記事とは直接関係はないが、安哲秀さんについても書いたので、続報を書き加えておく。聯合通信は「韓国大統領選 野党系候補は文氏=安氏が不出馬表明」というニュースを配信した。「候補一本化」ができなかったので「不出馬」ということであるが、これは文在寅さんにとって不利にこそなれ、有利になることはないであろう。というのは、安哲秀支持者と文在寅支持者は重複しておらず、今回の事態を受けて安さん支持者が文さんにそのまま流れることはないであろう。両支持者を合わせてやっと朴槿恵候補に勝てそうだという状況の中、今後、大きな事件でも起こらぬ限りは、朴槿恵さんの圧勝でこの選挙は終わるような気がする。

    「<録画実況>お母さんの日慶祝銀河水音楽会『お母さんたちに捧げる歌』」(2012年11月20日 「朝鮮中央TV」)

    昨夜、第4次お母さん大会参加者のために開催された銀河水楽団公演の様子が放映された。約1時間半の長い番組なので、曲目確認と背景映像確認をしながら飛ばして見た。背景映像の中に、高英姫さんと思われる女性が登場し、そうなのかどうか迷っていたのだが、登場する女性は「あの方」というコメントを頂き、やはりそうだったのかといことで記事にしておく。毎度のことながら、コメントを下さった方には深く感謝をする。

    「あの方」が背景スクリーンに登場する歌は女性独唱「愛の歌」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    この歌は「ありがたい党の懐よ、いつでも忘れずに歌う、愛の歌を」という多くある「党=母」という図式の歌である。しかし、この歌の背景には金日成、金正日さんが連続して登場する。

    分娩室のような所を視察する金日成さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    金日成視察に同行をしたのかは不明であるが、同じ場所にいると思われる金正日さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    そして、次のシーンで登場する「あの方」こと、高英姫さん(中央)。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    実は、私はこれまでこの女性が高英姫さんであるという確信はなかった。韓国メディアなどで「高英姫」として紹介された年を取って太った顔は、若い頃、つまり踊り子時代の彼女の顔とかなり違って見えたからである。

    しかし今回、この番組の中で金日成→金正日→この女性という順序で画面の中心に据えて登場させたということは、ただの病院関係者ではないということは明らかである。そう考えると、この女性は相当に重要な人物、さしあたり想像できるのは高英姫さんということになる。高英姫さんが登場した後は、平壌産院の前掲が映し出されているので、この場所は平壌産院であろう。

    平壌産院
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    お母さん大会をこれほど大々的に開催したのは、高英姫さんを紹介するステップにするためではないかと過去記事に書いたが、背景画面に大々的に登場させたことからしても、やはりその意図は十分にあるようだ。分からないのは、この高英姫さん画像が過去(恐らく80年代)に記録映画の一部として公開されたのかということである。もしそうだとすると、この時点で再度公開されたとしてもあまり大きな意味はないということになる。つまり、朝鮮人民はこの女性が誰かを既に知っており、この画像を見ても「元帥様のお母様が久しぶりに登場した」という程度にしか考えないであろう。

    いずれにせよ、近々、過去記事での予測が当たれば年内にはお母様紹介を正式にすることになるであろう。かつて、高英姫さんについては「平壌のオモニ」説があったが、どのように紹介するのであろうか。金正恩さんを除く三大霊将に含めて四大霊将とするのか、それともお母さんの側面を強調するのか。

    コメントを下さった方から、金正日さんが名を付けた子供の歌も今回の公演に含まれていることを教えていただいたので、その歌を聞いてみた。

    混声二重唱「デホンンとホンダン」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    歌詞では、ある朝鮮人民の家を訪れた(金正日)将軍様に妊娠した妻がいる夫が「礼儀もわきまえずに、名前を付けて下さいとお願い」したところ、将軍様は笑みを浮かべながら祝福して下さり、「息子ならデホン、娘ならホンダン」と名付けて下さったと歌っている。歌を聞いただけなので、細かいところは間違っているかもしれないが、大体こんな所だと思う。

    金正日さんと歌になった夫婦
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-17.flv

    さて、今後、「お母さん」問題はどのように展開していくのか。

    <追記: 2012.11.23>
    この記事ほど色々な方からコメントを頂いた記事はこれまでなかったと思う。コメントではそれぞれの方にお礼をしているが、本当に拙ブログのようなものをご覧頂き、内容についてのコメントを下さる方々にはどれだけ感謝をしてもしたりないぐらいである。

    それで、上に書いた「あの方」であるが、高英姫さんではなく、金慶喜さんではないかというコメントを何件か頂いた。記事中にも書いたとおり、私も自信がないのであるが、そう言われるとそのような気がしてきた。ブログ自体を書き直してしまおうとも思ったが、せっかくコメントも頂戴したので、そのまま残しておくことにする。

    かつて、高英姫さんに関する「産経新聞」の記事に関する反論を書いたことがあるが、今度は私がそのミスを犯してしまったような気がする。それを正当化するつもりはないが、それだけ「お母さん問題」が注目されているということだけは間違いないであろう。

    「20時報道」:ソフトウェア開発、子供健康の日 (2012年11月20日 「朝鮮中央TV」)

    昨夜の「20時報道」では、ピヒョン国土管理専門学校の様子が紹介されている。この学校では、住宅、河川、道路、橋梁管理などを学ぶための実習機材が備えられており、学生たちが実践的な学習をしていると紹介している。なので、この学校の学生は、過去記事でも紹介した、「全国教育部門プログラム展示会」などで優秀な成績を収めているとのことである。学生たちが勉強をする場面の映像の中で、ソフトウェア制作について教えているような場面が映し出された。

    「技術的特性」を説明する教員
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-16.flv

    何の「技術的特性」なのか分からないが、ウェブ・ブラウザ上で動作するアプリケーションのような気がする。そうだとしておもしろいのは、その動作環境である。

    装置(動作)環境:ペンティアムⅢ以上、操作体系(対応OSとブラウザ):「赤い星(プルグンピョル)」1.1,2.0、windows XP、開発ツール:eclipse 3.2、作成言語:Java

    とスライド(か動画)には書かれている。ペンティアムⅢは1999年から2003年まで生産されたCPUであるが、日本ではこのCPUが使用されたPCはほとんど姿を消したのではないだろうか。ヤフオクの出品状況を見ても、Pentium4搭載のPCこそ廉価で出品されているが、Pentium3のPCはほとんどない。日本でソフトウェア開発をする際に、何世代前のCPUで動作することを前提にするのが標準的なのかざっと調べたが、直ぐに答えは見つからなかった。そのため、北朝鮮と直接的な比較はできないが、忖度するに、北朝鮮の学校で使われているPCは中国から持ち込まれた比較的古いPCなので、動作を保証するためにはPentium3辺りを最低レベルに設定しておく必要があるのであろう。時々、「20時報道」でも地方の学校に寄贈される物品が紹介され、その中にPCもあるが、かなり古いもののように見える。

    対応OSとブラウザであるが、WindowsXPはよいとし(私も依然としてXPユーザーなので)、ブラウザがおもしろい。そもそもこれ、勝手にブラウザと決めつけたのだが、Javaを開発言語として用いていることなどからして、そうではないかという想像である(技術的な根拠は全くない)。ブラウザということを前提に話を進めれば、「赤い星」というのは北朝鮮が開発したブラウザなのであろうか。過去記事やコメントでも話題になった、「文化語(北朝鮮標準語)」と「韓国標準語」の違いから来る表記や入力方法の違いに対応したブラウザということ以外にどのような点が標準ブラウザと異なるのかを知りたい。

    開発ツールのEclipse 3.2は、Wikipediaで調べてみると、オープンソースと書かれている。ただし、最新バージョンは4.2のようで、3.2というのは2006年に公開されたときのバージョンのようだ。なぜ、最新バージョンを使わないのか分からないが、開発環境における動作環境(開発用PCの性能)と関連があるのかもしれない。

    北朝鮮のPC環境が垣間見える報道でおもしろかった。

    11月20日は「子供健康の日」ということで、「金正淑託児所」で外交関係者や国際機関関係者などを招いて子供たちにビタミンAと抗寄生虫薬の投与が行われた。

    ビタミンAなどを投与される子供たち
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-16.flv

    報道の中では、国家衛生検閲院院長の朴ミョンスさんが「我が国では1997年の民族免疫の日から小児麻痺根絶活動をはじめとした、子供に発症する天然病を予防するためのこの事業に国家的な関心を寄せ、毎年春と秋2回、全国的に子供に予防薬を投与する事業を展開してきた」と語っている。「検疫」と言わずに「衛生検閲」と言っているところが、北朝鮮らしい。

    国立衛生検閲院院長の朴ミョンスさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-16.flv

    UNICEF関係者も視察に招かれていたので、UNICEFのHPに何か情報がないか調べてみたらあった。それによると、確かに1997年から北朝鮮では「子供健康の日」が設けられ、6から59ヶ月までの子供たちの95%にこの事業による栄養供与が行き渡ったとのことである。また、朴院長が言うようにそもそもこの日は「民族免疫の日」であったのだが、1999年から6ヶ月から5才の子供たちにビタミンAを投与するようになり、全ての子供が2回の投与を受けられるようにするために、5月と秋(10月または11月)にビタミンA投与を実施しているという。そして、2001年からは事業内容が拡大され、2才から5才の子供に抗寄生虫薬の投与も始まったという。

    こちらでは白い粉薬をスプーンで飲ませているが、こちらが抗寄生虫薬であろうか。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-16.flv

    UNICEFのHPを読んで驚いたのは、北朝鮮が苦しい財政状態にもかかわらず、この事業を独自の予算で展開しているということである。UNICEFはリーフレットを提供する程度のことしかやっていないということである。ただし、これは人的資源についてだけのようで、下で紹介するUNICEF関係者の話からも分かるように、ビタミン剤などはUNICEFなどが提供している。無償動員が常態化している北朝鮮では、この部分のコストを無視することができるのはある意味当然である。

    UNICEFの協力で作られたパンフレット。パンフレットには「咳をしたり風邪を引いた子供は体を暖め、十分な食べ物と水分を摂取させなければ成りません」と書かれている。問題は、「体を暖める」ための暖房用燃料や衣料、「十分な食べ物」が供給されているのかということである。「べき」だけでは何の意味もない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-16.flv

    このパンフレットで「咳や風邪」への対策が強調されているのは、北朝鮮では肺炎による幼児死亡率が高いからであるとUNICEF関係者は説明をしている。報道では、この部分はUNICEF関係者の英語での話を字幕で紹介しているが、その食い違いがおもしろい。

    UNICEF副代表ベレリー・タロンさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-20-16.flv

    タロンさんの言葉
    「(pneumonia) is one of the biggest killer(ママ)in the children under 5 in the DPRK. It kills 17% of children under five.」(北朝鮮では、5才未満の子供の最も多い死亡原因の一つが肺炎です。肺炎は、5才未満の子供の死亡原因の17%に達しています。)

    「朝鮮中央TV」の字幕
    「今年の子供の日の主題は、5才未満の子供たちの中で死亡率が高い疾病である気管支炎と肺炎を予防しようということです。」

    上で示したように、タロンさんがいう17%という数字は朝鮮語に訳されていない。ちなみに日本の厚労省の資料(平成21年度)によると、肺炎は1~4才の子供の死亡原因の第5位で4.8%となっているので、やはり北朝鮮の17%という数字はかなり高いということになるのであろう。現状では、こうした人工的な栄養投与も必要であるが、何よりも食料供給を正常化させることが重要である。

    UNICEF関連ページ:National child health days
    http://www.unicef.org/dprk/nutrition_159.html

    厚労省ページ:「死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
    http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html

    この日の「20時報道」を見ていて気がついたのだが、番組冒頭の金正恩関連報道が終わり、別のアナウンサーに引き継がれる際に読み上げられるスローガンが1つになっている。かつては、指導者関連報道を読み上げたアナウンサーが1つ、引き継ぐアナウンサーが1つと2つのスローガンが読まれていたが、いつからかそれが1つになってしまった。10月20日まで遡ってみたが、この時点では既に1つだった。こんな話は過去記事に書いたのかもしれないが、スローガンよりもより多くの情報を人民に提供しようという試みなのであろうか。

    「<録画報道>朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が第534軍部隊直属騎馬中隊訓練場を視察された」(2012年11月19日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんの騎馬姿は、4月ぐらいの銀河水楽団公演の背景スクリーンに映し出されただけであったが、今回は「録画報道」で多数の静止画が公開された。いずれ、「記録映画」が出てくれば彼の乗馬の腕前を判断する材料となろう。

    実際に馬に乗り馬場を走り、馬場の状態を確認する金正恩さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-19-11-y.flv

    金正恩さんは、騎馬中隊員の騎馬訓練を見ながら「首領様と将軍様は馬に本当に上手に乗られた」と回顧したそうであるが、少なくとも金正日さんについては乗馬中に落馬して大怪我をしたという噂がある。私には乗馬術を評する能力はないが、上の写真を見る限りは上手に乗っているような感じはする。

    また、今回の視察ではサングラスを着用している静止画も公開された。記憶が正しければ、サングラスを着用した金正恩さんの公開は今回が初めてのはずである。サングラスのつるも何となく金正日さん愛用のものと似ているが、彼のようにずっと掛けているのではなく、直ぐに外してしまったようである。金正恩イメージ戦略で着用したのかどうかは不明であるが、どうも気に入らなかったようである。

    サングラスを掛ける金正恩さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-19-11-y.flv

    今回の報道でおもしろいのは、随行員の乗馬姿を紹介している点である。特に、金正恩さんの妹の金汝貞さんらしき女性も映し出されている。特に、その紹介順がおもしろい。随行者の序列紹介では、崔龍海、金敬姫、張成沢、玄永哲の順で紹介されており、静止画では金正恩さんの乗馬姿が複数紹介された後、彼を取り囲む崔龍海、張成沢、玄永哲の集合写真が紹介されている。

    崔龍海、玄永哲、金正恩、張成沢
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-19-11-y.flv

    その直後に、金敬姫、金汝貞さんらしき女性の乗馬姿が紹介され、続いて、同女性単独の写真が紹介されている。

    金汝貞、金敬姫
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-19-11-y.flv

    金汝貞単独写真
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-19-11-y.flv

    また、馬の顔に注目すると、金ファミリーが乗る馬には何かバッジのようなものが付けられている。ロイヤルファミリーを示すバッジなのであろう。血が繋がっていない張成沢さんの馬にはこのバッジが付けられていない。やはり、いくら実力者とはいえ、張さんはロイヤルファミリーのメンバーとは見なされていないということが伺える。その一方で、随行者として紹介されていない妹の金汝貞さんの馬には、バッジが付いている。紹介はせずとも、金汝貞を2回も静止画で登場させているといるのは、いずれ朝鮮人民に妹として正式な紹介があるという前触れかもしれない。これ、李雪主夫人をさりげなく同伴させ、後に夫人として紹介した手法を再度用いようとしている可能性がある。ただ、妹をただの妹として紹介するのか、職責を付与して紹介するのかは現時点では分からないが、単に家族のメンバーとして紹介し、母親紹介に向けて金ファミリーの血の正統性を固めていこうとしているのかもしれない。

    金正恩さんは、ローラースケートのように乗馬も人民が楽しめるスポーツにする構想を抱いているようであるが、ローラースケート以上に維持管理費がかかる乗馬をスポーツとして定着させるのは、なかなか困難であろう。

    <追記>
    コメントを頂き、上に書いた「張成沢さんの馬にはバッジがない」というのは、誤りらしいということが分かった。頂いたコメントでは、朝鮮中央通信が配信した静止画には同様の装飾が見えるというご指摘があり、早速、同通信の写真を確認したところバッジらしきものが見えた。

    馬の額部分にバッジらしきものがある。
    張の馬
    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=photoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1105383

    「20時報道」:携帯基地アンテナ、無秩序、幼稚園の星取り、Jボード(2012年11月16日 「朝鮮中央TV」)

    11月16日の「20時報道」でも母の日関連のニュースが多いが、その他のニュースも含めて順を追って紹介していく。

    龍川郡に作られた金日成・金正日モザイク壁画除幕式
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    北朝鮮は、あちこちに金日成・金正日モザイク壁画を建てており、その理由は銅像よりもコストがかからないかもしれないという話は、過去記事に書いたような記憶がある。今回は、モザイク壁画の話ではなく、その背景に見えるアンテナの話である。平安北道龍川郡は2004年4月に龍川駅で列車爆発事故が起こった場所である。「郡」というので人口規模はそれほど多くないのかもしれないが、新義州にも隣接する中国との国境地帯である。それで、アンテナというのは、背景のビルの上に立てられているアンテナである。北朝鮮で使われている携帯電話の基地局や中継局でどのようなアンテナが使われているのかは分からないが、背景に見えるアンテナは日本で使われている中継局のアンテナに類似している。もし、中継局がここにあるとすると、平壌以外の「郡」レベルの地域でも携帯電話が普及しているということなのであろうか。2010年に北朝鮮訪問をした際に私を案内してくれたドンムは、地方に出張に行ったという奥さんと携帯で話をしていた。「地方」がどこだったかは忘れてしまったが、携帯電話ネットワークがどれほど拡がっているのかに関心がある。

    踊る母の日大会代表の女性たち
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    北朝鮮の「秩序だった」フォークダンスは過去記事でも紹介したが、「無秩序」に踊る様子はなかなかおもしろい。というのは、このオバサンたちの踊り、当然と言えば当然かもしれないが、韓国のオバサンたちがお祭りなどで踊る踊りとそっくりだからである(より正確には、私が80年代半ばに目撃した踊りであるが)。この様子を見たとき、やはり同じ民族なのだと思った。

    遊園地で記念写真を撮る母の日大会代表
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    静止画では分からないが、後ろに見える椅子付きの遊具に順番待ちをしていたお母さんたちが駆け寄って席を取り合っている。だからなんだということはないが、「秩序だった」様子ばかり映し出される「20時報道」映像の片隅にこうした「無秩序」が映り込むと、不思議と人間味を感じてしまう。

    キョンサン幼稚園を訪問した母の日代表
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    その系でもう一つ映像を紹介しておく。このお母さんたちは改築されたキョンサン幼稚園を訪問して、プールの見学をしているのだが、ボールを投げて遊んでいるオバサンがいる。これも実に「無秩序」で微笑ましい。こういう「無秩序」な行動を平気でするのは、田舎の「アジュモニ(オバサン)」だからなのか、それとも社会全体の雰囲気が緩んできているからなのか。いずれにせよ、何よりも皆嬉しそうな顔をしており、良いことだと思う。

    インタビューに答える朝鮮総連を代表して母の日大会に参加した李ジョンエさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    朝鮮総連からも代表団が派遣されたようだ。李さんは、キョンサン幼稚園が素晴らしく自分の子供たちもこの幼稚園に通えたらどんなによかったかというようなことを朝鮮語で語っているが、李さんのお子さんは総連系の幼稚園に通っていたのであろうか(総連系の幼稚園があるのかどうか分からないが)。

    過去記事で、中学で各個人の成績を掲示するということを書いたが、成績ではないにせよ幼稚園でも「掲示」は行われているようだ。下の写真を見ると、背景に「誰が良い子かな」と書かれており、その下に赤い星らしきものが貼ってある。過去記事に何と書いたか忘れてしまったが、このように張り出すのは競争(忠誠競争であれ純粋な学習競争であれ)と公正を維持する目的があるのかもしれない。とはいえ、幼稚園の子供たちは、そんなことに関係なく、星のステッカーをもらえれば単純に嬉しいであろう。

    背景の壁に「誰が良い子かな」と書かれており、その下に赤い星のようなものが貼ってある。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    母の日大会関連のニュースではないが、ローラースケート場も紹介されている。それ自体は新しい話ではないのだが、その中でJボードで遊ぶ少年の姿も映っていた。近所の男の子たちがこれで遊んでいるのはよく見るのだが、実は、私はこのボードの名前を知らなかった。子供に写真を見せて教えてもらったのだが、比較的新しい遊具が既に北朝鮮に入り込んでいるのには驚いた。貸し出されたものなのか遊びに来た人が持ち込んだのかは不明である。まだ珍しいのか、注目されている。

    Jボードに乗る少年
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    「[総合編集]『お母さんの幸せは何ですか?』」(2012年11月16日 「朝鮮中央TV」)

    母の日にはたくさんの母の日特集が放送されたようだ。「第4次全国お母さん大会」の様子を伝える動画も配信されている。この大会には、金永南、崔龍海さんなど、重鎮は出席しているが、金正恩さんは出席しなかった。また、労働党を代表して金己南さんが長い演説を行った。この演説に何か金正恩さんからのメッセージが込められているかもしれないが、まだ聞いていない。

    「20時報道」でも、母の日関連の特集が組まれており、各地で行われた行事が紹介された。では、順を追って紹介していくことにする。

    まず、表題の番組であるが、朝鮮人民の生活を垣間見ることができてなかなかおもしろい。

    「私のお母さんのキッスが一番いい」と歌う金スンボクさんの子供
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    歌自体は、全く政治性や思想性がない子供の歌である。おもしろいのは、「一番いい」という部分で金正恩さんがモランボン公演でやったように親指を立てていることである。このジェスチャーは、金正恩さんがやって北朝鮮で流行しだしたのか、それとも彼がやるまえから北朝鮮で一般的に行われていたのであろうか。日本では、数を数えるときに人差し指から1、2、3と数える(鮮魚市場などでは、そうしていないという話を聞いたことがある)。韓国ではどうしていたか忘れてしまったが、親指が1だったような気もする。だとすると、金正恩さんの「スイス留学」の経験から言われるようなNo.1ということではなく、ただの一番なのかもしれない。ちなみに「キッス」と訳したが、母親が子供の顔などに口づけをする行為で、こちらも最近西洋から来たものではない(その昔、キリスト教宣教師が持ち込んだかどうかは分からない)。

    この少年の家には、おもしろいものがあった。

    背景の白い箱(冷蔵庫)のシールか絵柄に紙をかぶせて何かを隠している
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    冷蔵庫だと思うが、家庭用というよりは、ジュースやアイスクリームを入れて商店に置いてある冷蔵庫のようだ。そこに描かれている絵は、清涼飲料水のように見えるが、なぜ紙を買って商品名と思われる部分を隠してしまったのであろうか。朝鮮語で何か書かれているのであれば、隠す必要もないと思うが、紙の上にぼやけているがはみ出している青い文字は漢字のように見える。もしかすると、中国から持ち込んだ中古品なので、大きく書かれている漢字を紙で隠してしまったのかもしれない。かつて国際商品展示会で中国製の家庭用冷蔵庫に関心を示す朝鮮人民の姿を紹介したことがあるが、北朝鮮では冷蔵庫は生産していないのであろうか。平壌で訪れた楽園百貨店には冷蔵庫も置いてあったような記憶があるが、どこ製なのか確認はしなかった。冷蔵庫自体、冷やすだけであればそんなに高い技術を要するものではないので、北朝鮮でも技術的にはできそうな気はするのだが。朝鮮人民は、一部の階層を除いて、日々食するものを購入してその日に消費してしまうので、冷蔵庫などいらないのかもしれない。日本とて、60年代に白物家電である「三種の神器」が普及するまでは、そういう生活を送っていたのだから(アイスボックスはあったにせよである)。

    万景台地区に住む金タンシルさん(90才)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    上の写真の金タンシルさんは、子宝に恵まれたおばあさんである。北朝鮮では母の日と関連させ「子供をたくさん産んで育てたお母さん」を評価している。一般的にもたくさんの子供を産み育てる母親のその苦労は並大抵のものではないが、北朝鮮のように食料事情が良くない国でたくさんの子供を育てるということは大変なことであろう。

    金タンシルさんには「息子・娘12名(息子10名、娘2名)、孫61名」がいる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    日本でも日中戦争から太平洋戦争に至る過程で戦争のための人的資源を確保するために「産めよ殖やせよ」という政策をとった。北朝鮮が戦争のために「産めよ殖やせよ」を奨励しているとまでは言わないにせよ、やはり人口は国力を示す一つの指標となるので、韓国の半分の人口しか擁しない北朝鮮としては、もっと人口を増やしたいのであろう。だとしても、人は空気だけでは育たない。そのためにも、人民にきちんと食料を供給できる体制を整えていくことが重要である。

    子供が4人おり、うち3人が三つ子というベク・キョンオクさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    それとの関連で、上の写真のベク・キョンオクさんの話がおもしろい。ベクさんには子供が4人おり、うち3人が三つ子ということである。

    ベクさんの三つ子の子供たち
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    この子供たちは「苦難の行軍」の時期に生まれたということで、ベクさんはこの子たちのためにミルクや米を贈ってくれた金正日さんに捧げる感謝の詩を朗読している。この子たちは、無事成長して立派な人民軍人になったとのことである。この子たちが無事成長したことは良いことであるが、金正日さんの恩恵を被ることができず、というかむしろ彼の失政(異常気象への対応ができなかったことも含めて)のために栄養失調で死んでしまった子供たち、そして今もたくさんいる慢性的栄養失調の子供たちを救う努力を直ちに始めなければならないということは、何回強調しても強調しすぎることはない(北朝鮮に対してだけではなく、国際社会に対してでもある)。

    栄養失調の子供たちのための援助団体が協力を求める吊り広告が電車の中にぶら下がっている。そこには目をぎょろぎょろさせた子供たちの写真が大きく掲載されているが、南アジアやアフリカの子供たちのようである。確かに、一般的な認識も、そして現実も南アジアやアフリカでは貧困が大きな問題となっている。その系からすれば、こうした子供たちの写真を載せることで国民に協力を求めることは良いことだと思う。しかし忘れてはならないのは、私たちの隣国に、そうした栄養支援が必要な子供たちがいるということである。北朝鮮が「悪い」国であろうが、「核・ミサイル開発」国であろうが、「今」栄養を必要としている子供たちとは何の関係ないと思うのだがどうだろうか。厳しい経済制裁で政権を締め上げ、政策転換を求めたり、政権の転覆を企図するのも良いが、それがうまくいかない間に多くの子供の命が失われている現実も忘れてはならない。

    デソン区域に住む上下水道管理所労働者、オ・チョオクさん(左の女性)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    上の写真のオ・チョンオクさんには、40人の子供がいる。しかし、自分の子供は1人だけで、残りの39人は孤児だという。

    他の子供が書いた日記を朗読する自分の息子と孤児の女の子
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    オさんが育てた孤児たちとその家族
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    この話を聞いたときは、この人は孤児院でもやっているのかと思ったのだが、どうやらそうではなく、少数の孤児を預かって順次育ててきたようだ。上の写真の背景に映っているのが、オさんが育てた孤児とその家族だと思う。

    オさんが育てた孤児たちの写真
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    上下水道管理所の労働者が多くの孤児を育てたというのは立派なことである。オさんによれば「国が全部面倒を見てくれので、父母がいない子供がいても心配はない。しかし、父母がいない子供のことを考えると心が痛み39人を育てた」とのことである。「国が全部面倒を見てくれ」るというのは誇張であろうが、この話、北朝鮮の配給システムとの関連で興味深い部分はある。

    オさんの部屋には、金日成さんと金正日さんの乗馬している様子を書いた絵が掛けられていた。この絵は、初めて見たような気がする。

    金日成・金正日さんが乗馬する絵
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-16-28.flv

    「20時報道」の話もこちらに書こうと思ったが、長くなったので別記事とする。

    「20時報道」:母の日関連報道、アイススケート場(2012年11月14日 「朝鮮中央TV」)

    別記事にしたアントニオ猪木訪朝関連以外の報道では、母の日関連のものが非常に多くなっている。第4次お母さん大会代表は既に平壌入りしているが、昨夜の「20時報道」では万寿台の金日成・金正日銅像に花束を捧げる様子が伝えられた。

    花束を捧げるお母さん大会代表
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    母の日関連ニュースを集めた特集、「母の日おめでとう」と書いてある。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    また、母の日カードも15種類作られたようである
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    母の日カードを買う子供たち
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    カード売店でインタビューに答える金策工業総合大学情報科学技術学部の学生・金イクチョルさんは、母の日カードを「次世代育成に尽力されてきた尊敬する中学校の先生と大学の先生に差し上げようと思います」と語っている。さすがに儒教的社会主義国の大学生である。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    また、母の日に際してプレゼント用の花束(生花)の準備も進められている。

    平壌花草研究所 卸売り所にて
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    母の日に際してワンジェサン芸術団の音楽舞踊総合公演も人民文化宮殿で行われている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    このように、初めての母の日を祝う準備や行事が進行しているが、いよいよ母の日当日の明日16日に第4次お母さん大会が開催される。この大会には金正恩さんも出席するのであろうか。母の日を制定してこれほど大々的に祝賀行事をやるのは、金正恩さんの人気取りのため、李雪主夫人が懐妊したためなどが理由に挙げられているが、私は早ければ明日16日に、そうでなければ年内に金正恩さんの母親についての何らかの発表をするための準備作業ではないかとみている。金正恩体制が成立して後1ヶ月ほどで1年となるが、そろそろ金正恩さんのお母さんについても何らかの説明をしなければならない時が来たのではないだろうか。特に、李夫人が来年前半に出産をするということになると、金正恩さんの母系の血筋も示しておかないと、生まれてくる子供まで「怪しげな血筋」の子供ということになってしまう。とりあえずは、明日の大会に金正恩さん、あるいは同夫妻が出席するのか、そこで何らかの演説が行われるのかに注目する必要がある。

    「20時報道」では、新たに建造された「人民野外アイススケート場」の様子も紹介している。

    北朝鮮歌謡が流れる中スケートをする平壌市民
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    ブレードの状態を確認してからスケートシューズを選ぶ女性。スケート場では研磨機でブレードを磨いてからシューズを貸し出しているようである。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    家族連れか
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    スケート場には、日本同様に安全監視員もいて、一緒に滑っているようである。

    「国家体育指導委員会委員長が日本の猪木ゲノム連合株式会社会長一行と日本体育大学代表団の主要メンバーと会見した」(2012年11月15日 「朝鮮中央通信」)

    猪木さん一行の動向について、北朝鮮メディアは実に詳細に伝えている。やはり北朝鮮は、単純なスポーツ交流以上の何かを猪木さんに期待しているようだ。昨夜の「20時報道」では、まず、万寿台の金日成・金正日銅像に花輪を捧げる猪木さん一行が紹介された。

    金日成・金正日銅像に花輪を捧げる猪木さん一行
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    銅像に花輪を捧げて頭を下げることに抵抗を感じる向きもあるが、北朝鮮とつきあうための通過儀礼としてはあってしかりだと思う。猪木さん一行の訪問は、詳細は後述するが、米国流に言えばTrack1.5に位置づけられる。つまり、非公式と公式の中間である。政治家であれば、その政治的信念と「拉致を指示した当人に頭を下げるとは」という(主として日本の国内政治に利用するための)非難を恐れて通過儀礼を避けようとすることもあろうが、現在は民間人である猪木さんは、この点について実にフレキシブルなのであろう。日朝間に横たわる日朝平壌宣言にも記された「懸案事項」を解決するという目的を達成するためには、このようなフレキシブルな姿勢も必要だと考える。

    続いて「20時報道」では、続いて「国家体育指導委員会」の委員長である張成沢さんが猪木さん一行と会見したということを映像なしで伝えている。この模様は、表題にしたように「朝鮮中央通信」が配信している。

    国家体育指導委員会委員長の張成沢さんと会談する猪木さんと松浪日体大理事
    猪木と張
    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/

    実は、「国家体育指導委員会」の重要性は、コメントを頂くまで見過ごしていた。11月4日に朝鮮労働党中央委員会拡大会議が開催され「国家体育指導委員会」が組織されたというところまでは認識していたのであるが、9月の最高人民会議で出てきたのが「12年生義務教育実施」だけであったということもあり、なぜ拡大会議まで開催して「体育指導委員会」「ごとき」を組織するのかという点は完全に見過ごしていた。特に、その構成メンバーについてはスルー状態で、拙ブログの記事にすらしていない。この委員会についてのコメントを下さった方には、その洞察力の鋭さに対する敬意とご指摘への謝意を表す。

    『労働新聞』:「朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議に関する報道」
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-11-05-0001&chAction=D

    上にTrack1.5に相当すると書いたが、「体育」と謳いながらも金正恩さんの後見人といわれる張成沢さんと猪木さんが会談をしたということは、張さんから猪木さんに日本政府に対するメッセージが託された可能性は大いにある。儀礼的な挨拶を行うのであれば、金永南委員長で十分である。ところが、金委員長をぶつけずに張さんをぶつけてきたということには、北朝鮮に「体育」交流以上の意図があると考えて良いであろう。ただ、北朝鮮もこれほど早いタイミングで日本の政局が動くとは計算していなかったようだ。北朝鮮が猪木さんにメッセージを託したとしても、さすがに1ヶ月そこそこで「北風」を吹かせることはできないであろう。この際、猪木さんは託されたメッセージを次期政権が誕生し落ち着くまで暖めておき、日本の選挙で乱用される事態を避けるようにしていただきたい。

    「20時報道」に話を戻すと、続いて日朝のサッカー試合を紹介している。

    猪木さんと並んで日朝サッカー試合を観戦する張成沢さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    試合の様子を見ると、朝鮮人民でスタンドが埋め尽くされている。北朝鮮にどれほどの大衆動員力があるかは計り知れないが、これだけの人民が観戦していることからすると、この試合は突然決まったものではないであろう。

    試合結果は0-0の引き分け
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    「20時報道」では、松浪さん一行が大同江果樹総合農場や大同江果物総合加工工場を視察した様子も伝えている。この視察には猪木さんは同行していない。猪木さんはこの間、張成沢さん、あるいは金正恩さんと秘密会談でもしていたのであろうか。

    果樹農場を視察する松浪さん一行
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-14-16.flv

    それにしても、過去記事にも書いたように、日本のメディアでは猪木訪朝を全くといってほど取り扱っていない。くまなく調べることはしていないが、Yahoo!ニュースから「海外→北朝鮮」と進み、各項目をクリックしても猪木訪朝のニュースは見当たらない。料理人・藤本さんが訪朝(1度目も2度目に入国拒否されたときも)したときは、空港まで追いかけていき、総力取材を行ったのとは実に対照的である。やはり、日本では北朝鮮関連のニュースというのは、ワイドショーのネタにならないと取り上げられないのかもしれない。

    過去記事にも書いたとおり、日朝局長級会議が近々予定されているタイミングでの、猪木訪朝、そして猪木さんと事実上北朝鮮のナンバー2の実力者張成沢との会談に意味を見いだせないのであろうか。嘆かわしい限りである。

    米中国交回復がピンポン外交からだっということを忘れてしまったのであろうか。

    「20時報道」:日・朝体育大学学生柔道試合(2012年11月13日 「朝鮮中央TV」)

    昨日書いたアントニオ猪木一行の北朝鮮訪問の続報である。猪木さん一行訪問については、「朝鮮中央通信」での報道のみならず、国内向けにも一昨日の「20時報道」でも紹介された。そして昨日の「20時報道」は、一行の万景台金日成生家訪問のニュースと共に日体大と朝鮮体育大学の学生間で行われた柔道の試合の様子も伝えた。

    試合を観戦する猪木さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-13-15.flv

    結局、1対0で朝鮮体育大学が勝った
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-13-15.flv

    この報道でおもしろかったのは、朝鮮側の応援風景である。朝鮮にも応援団員らしき人はいるようで、応援をする学生の前に立って手を振り上げている。

    白い服を着た応援団員?
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-13-15.flv

    それとの関連で、この「20時報道」の動画ではないが、先に書いた「人民体育大会」の話がある。静止画では分からないかもしれないが、応援をする人民が波を打つように立ち上がって拍手をしている。これ、元帥様のための演出なのか、朝鮮人民は普段からそうするのか分からないが、おもしろかった。

    きれいな波を描いて拍手をする朝鮮人民(「人民体育大会」にて。大学生柔道試合ではないことに注意)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    「<記録映画>敬愛する金正恩元帥様が諸部門の事業を現地で指導(2012.9.21 - 10.29)」(2012年11月12日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんの9月21日から10月29日の現地指導の様子を伝える「記録映画」が放映された。この映画では特に大きな発見はなかったが、細かいことをいくつか書いておく。

    金正恩さんが改装された万景台遊技場を訪れた様子を映画ではかなりの時間を取って紹介している。この映画を見ていて気になったのは、金正恩さんの警護官たちが軍服ではなく人民服で警護している。また、手には細長い鞄のような物を持っている警護官もいる。この中には武器が入っていて、いざというときに使用するのであろうか。過去記事にも書いたが、警護官を除いて、側近も含めて金正恩さんの周囲に行くときは武器になるようなものの携行は許されていないのであろうか。軍服を着ている警護官は、腰のベルトに拳銃用のホルダーがあるので、その中に実弾が装填された拳銃が入っているのかもしれない。また、映画では労働党創設記念日のモランボン楽団のコンサートに金正恩さんが訪れた様子も紹介しているが、こうした多数の人が集まる場所では、入場に際して相当厳しいボディーチェックを実施しているのであろう。だとすると、こうした会場に入るためには、早朝から列を作らないと入れないということになろう。北朝鮮のことなので、成分に応じて列を作らせているのであろうが、良い成分の人でも並ぶのは大変であろう。

    万景台遊技場にて細長い鞄を持って歩く警護官(画面左上と右端)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    万景台革命学院などの子供と記念撮影をする金正恩さん。(右端が警護官)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    万景台遊技場のゲーム類を見ていたら、おもしろいことに気がついた。まず、過去記事でも話題にした動物を的にした射的ゲームであるが、ゲーム機に書かれている文字は朝鮮語である。

    射的ゲーム(点数を表示するLEDの下には朝鮮語が表記されている)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    一方、「娯楽館」に設置されている電子ゲーム類の表記は、画面に映し出された限りは全て英語である。ビデオゲーム系であれば、例えば日本製と思われるゲーム機(あるいはそのソフト)が中国経由で北朝鮮に持ち込まれたとしても、ソフトで使われている言語は英語なので、それを朝鮮語に修正することなく英語のままで使うには、本体の表記も英語の方が良いという判断もあり得る。しかし、北朝鮮で作られても不思議はない簡単な構造の機械式ゲーム機についても英語の表記がされている。

    サッカーゲーム、FIGHTINGと書かれている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    バスケットボールゲーム、BASKETBALL MOVE ????(読み取れず) GAMEと書かれている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    ビデオのシューティングゲーム。「PLAYEY 1」というのがこのゲーム機の固有名詞でなければ、PLAYER 1の誤りである。金正恩さんは、銃を撃つ女性の背後でこのゲーム機を視察しているが、このエラーに気付かなかったのであろうか。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    英語表記のエラーも含めて、英語をふんだんに使うのは、人民に「目は世界を見」てもらうための金正恩スタイルなのであろうか。

    過去記事に「金正恩禁煙説」を書いたが、外れていたようだ。下の写真は、金正恩さんが李雪主夫人と共に「人民体育大会」のサッカー競技を観戦したという部分である。見てのとおり、金正恩さんの左手はタバコを持っている。私は非喫煙者なので実体験はないが、ネットで喫煙している人の写真を見るとタバコを右手、つまり利き手で持っているようである(ライターを利き手でつけるから、左手でタバコを持つという意見もあるが)。それで、「金正恩さんは、妊娠した夫人を配慮し、夫人がいない方の手でタバコを持っている」と決めつけようと思ったのだが、どうやら彼は左手でタバコを持つ癖があるようだ(過去記事、http://dprknow.blog.fc2.com/blog-entry-315.htmlの写真をご参照あれ)。執務風景の写真を見るとペンは右手に持っているので、右利きなのか、そうでなければ両手が使えるのであろう。

    「人民体育大会」を観戦する金正恩さん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    モランボン楽団公演で映し出された執務風景
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-17-y.flv

    「20時報道」:女性の厚底シューズ(2012年11月12日 「朝鮮中央TV」)

    過去記事にも書いたが、女性の厚底シューズが「20時報道」に映し出された。ただし、その時にも書いたとおり、私はファッションに至極疎いので、これを厚底シューズと呼ぶべきかどうかは定かではない。もしかすると、ソール全体が厚い靴をそう呼ぶのかもしれないが、左の女性が履いている靴もソール全体ではないにしろ、靴底は厚い。

    ルンラ・イルカ館にて水質検査をする女性(左側の女性の靴に注目)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-12-16.flv

    「猪木寛至一行と日本体育大学代表団到着」(2012年11月12日 「朝鮮中央通信」)

    アントニオ猪木さんが、日本体育大学一行と平壌に到着したというニュースを「朝鮮中央通信」が伝えた。日朝局長級会議を今月末に控えた今、猪木さんが訪朝するのは、日本政府からのメッセージを託されているかいないかにかかわらず、意義はあると思う。特に、日体大の訪問団を連れて行ったとことからすると、日朝スポーツ交流の道に繋がっていくのかもしれない。猪木さんが北朝鮮についてどのような認識を持っているのかは分からないが、地道に訪朝を続けているということは評価できると思う。料理人さんのように金正恩さんに会わずとも(そしてその後、ビザ発給を拒否されなくとも)、北朝鮮側としては、パイプ役の一人として猪木さんを評価しているのであろう。バレーボールコート、バスケットボールコート、ローラースケート場をあちこちに造っている金正恩さんも、スポーツ好きとして猪木さんに会ってみてはどうだろうか。猪木さんなら、堅いこと抜きで気さくな話ができそうな気がする。

    それにしても、今回の猪木訪朝は、あまり日本のマスコミは伝えていないようであるが、なぜだろうか。

    中国国際航空機のタラップを降りる猪木さん
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1103099

    朝鮮体育大学副学長と握手をする猪木さん
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1103099

    「体育を通して朝鮮人と仲良くし、友達もたくさんつくりたい」と語る、日本体育大学理事長松浪さん
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1103099

    日本体育大学の学生たち
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1103099

    「朝日政府間会談が開催される」(2012年11月9日 「朝鮮中央通信」)

    「2012年8月の朝日2国間の外務省課長級接触に続き、双方の合意に基づき11月15日と16日、モンゴルのウランバートルで朝日政府間会談が開催することになった」という短い記事が配信された。この報道は、日本政府の発表とほぼ同時に配信されている。北朝鮮が記事を配信するタイミングとしては実に早く、「朝米2.29合意」の時と様相が似ている。今回は「合意」ではなく会議の開催が決まっただけであるが、北朝鮮のこの会議に向けた意気込みの表示であろう。

    日本政府は「双方が関心を有する事項を議題として、幅広く協議することとな」るとし、藤村官房長官は記者の質問に対し「拉致問題についての考え方は従来から述べている通りだ。そうした日本政府の基本的立場に基づいて協議を行う」と述べている。

    首相官邸内閣官房長官記者会見「平成24年11月9日(金)午後」:
    http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201211/09_p.html

    一方、北朝鮮側は、今回の会談では「両国間の関係改善のための問題(複数)を協議する」としている。そもそもこの協議が始まったきっかけは、日本人遺骨収集問題なので、この点については、日朝双方とも議題とすることに難色は示さないであろう。問題となるのは、日本側が提示するであろう「拉致問題」、北朝鮮側が提示するであろう「過去清算問題」であるが、日本側は前に書いたとおり官房長官の認識を示している一方、北朝鮮側は、巧妙に別の記事の中「過去の清算こそが日朝関係改善の鍵である」ことを主張している。

    その記事とは、ウランバートル会談の記事とほぼ同時に同通信で配信された「朝日友好親善のための大学生の集い開催」という記事である。この集いは、10月31日に朝鮮大学校で開催されたとのことであるが、このタイミングで報道したのは、やはり「今年は朝日平壌宣言発表10年となる年なので、宣言に盛り込まれた精神を再び深く刻まなければならない」とし、日朝平壌宣言に盛り込まれた精神の半分、つまり北朝鮮側の主張である「日本の過去清算こそが、朝日関係改善の前提条件であるということ」を学生の言葉を借りて主張したかったからであろう。

    過去記事にも書いたとおり、日朝平壌宣言には最も重要な問題である「核・ミサイル」問題も書かれているのであるが、北朝鮮側はともかくも、日本側も余り触れる気はないようである。確かに、「核・ミサイル」など日朝間で解決できる問題ではないので、今回の会談では確認程度におさえ、日朝交渉を足がかり米朝交渉に繋がるような道筋が付けられれば御の字である。

    北朝鮮側も選挙日程の話をしているような政権をどれほどまともに相手にする気があるのかは分からないが、この時点で会談を飲んだのは、野田政権が日朝交渉で結果を出し、選挙を有利にしたいという「焦り」を利用しようとしているのかもしれない。もちろん、野田政権を選挙で有利にしたところで北朝鮮に何もメリットはないので、その見返りを要求するつもりであろう。そうだとすると、野田政権にとっては日本人遺骨返還問題を解決し拉致問題は「継続協議」、北朝鮮にとっては日本人遺骨返還の手数料収入獲得というところが良いところではないだろうか。

    政治や外交というものは、そういう駆け引きの連続なので、別にそれは構わないと思う。重要なことは、話し合いを続けることで「日朝間の懸案」と「国際的な懸案」の解決に向けたステップを踏むことだと思う。

    「20時報道」照明用LED生産、ハッカー、外来語(2012年11月9日 「朝鮮中央TV」)

    昨日、中国・広州で開催された学会から帰ってきた。学会期間中、ある朝鮮族研究者と北朝鮮で使われる外来語について話をした。彼は、北朝鮮ではロシア語に由来する外来語が多いと言っていたが、私の感覚では、相対的にロシア語に由来する外来語が多いとしても、比較的最近使われる技術、特に電子産業やIT関連技術の外来語は圧倒的に英語に由来するものが多いと感じている。

    そんな話をした後で、昨夜放映された「20時報道」を見ていたら、北朝鮮で照明用LEDの生産を始めたという報道があった。

    電子工業省で照明用LED生産
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=12260

    報道は、電子工業省で照明用LEDの生産を始めたというものである。報道を見る限りでは、比較的小さな部屋に生産ラインを1セットだけ設置して生産しているように見えるので、恐らく、電子工業省が中国から1セットのみ導入して実験的に生産しているだけなのかもしれない。

    できあがった製品を前に
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=12260

    LED照明は街路灯などに使われるとのことであるが、電力生産が「緊迫した」北朝鮮で省エネ技術を導入して消費電力を減らしていくのであれば、長期的にも理にかなっている。

    さて、本題の外来語であるが、1枚目の写真の字幕にもあるように、LEDを「레드(レドゥ)」と表記している。恐らく、この報道を映像なしで聞いていたら、それがLEDであることを私はなかなか理解できなかったと思う。日本語では、LED(Light Emitting Diode)は英語の頭文字をそのまま読んで「エル・イー・ディー」と言っている。韓国語ではどうなのかと思い、「NAVERウェブ国語辞典」を調べてみたら、やはり英語の頭文字をそのまま読んで「엘이디」と言っている(http://krdic.naver.com/search.nhn?kind=all&scBtn=true&query=led)。一方、北朝鮮が使っている「레드(レドゥ)」という読み方は、実に微妙である。というのは、英語ではLEDをどう発音するのかというと、どうやら日本語や韓国語と同じように頭文字を読ませている(Dictionary.com: http://dictionary.reference.com/browse/LED, merriam-webster: http://www.merriam-webster.com/dictionary/led)。しかし、アメリカ人と話をするときに彼らはLEDをlead(鉛)と同じように発音していた。どうやら、頭文字読みが正しいにもかかわらず、「鉛」式の発音も一定の市民権を得ているようである(YAHOO! EDUCATION: http://education.yahoo.com/reference/dictionary/entry/LED)。

    そう考えると、北朝鮮で使っている「레드(レドゥ)」はどこから来たのであろうか。英語でないとすれば、中国語かロシア語であろう。ロシア語については、文字からして私の能力範囲外なので、いずれ、職場にいるロシア語が堪能な同僚に尋ねるとして、中国語ではLEDと表記しているところまでは分かった(中国語版Wikipedia: http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BC%E5%85%89%E4%BA%8C%E6%A5%B5%E7%AE%A1)。それをどう読んでいるのかは分からないので、これまた同僚に尋ねてみることにするが、もし中国語で「レドゥ」と発音しているのであれば、北朝鮮で「レドゥ」と言う由来は中国語ということになろう。

    外来語関連でもう一つ報道を紹介しておく。

    アラブ首長国連邦で開催された情報通信技術展示会
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=12260

    報道ではこの展示会の内容を紹介しながら、「ハッカー(해커)の攻撃からの安全保障」などが主題となったと言っている。ここでまた英語に由来する外来語「해커(hacker)」を使っているが、問題は朝鮮人民はこの報道を聞いてハッカーの意味が分かるのだろうかということである。「関係部門のイルクン(担当者)」であれば、韓国などからのハッカー攻撃や北朝鮮が仕掛けるハッカー攻撃について熟知しいているであろうが、そうではない朝鮮人民にとっては謎の単語ではないのだろうか。ちなみに中国語では「黑客(hēi kè)」と言うようだ。

    この日の「20時報道」ではないが、「テレビ」という言葉の使われ方もなかなかおもしろい。韓国語では、「テレビ」のことを「텔레비전(テルレビジョン)」あるいは「티브이(TV)」と言っている。私が韓国にいた80年代には「 텔레비(テルレビ), 테레비(テレビ)」という人も高齢者を中心にかなりいたが、その時に聞いた説明では「テレビ」は日本語なので使うのをやめたということであった(公式説明ではない)。最近では、「テレビジョン」や「TV」が定着しているのではないだろうか。ところが、北朝鮮では「텔레비전(テルレビジョン)」が公式朝鮮語のようであるが、「 텔레비(テルレビ)」も健在なようだ。何日か前の「20時報道」のなかで、朝鮮中央TVの記者が朝鮮人民に「テルレビジョン」についてインタビューをする場面が出てくるが、この中で朝鮮人民は「テレビ」という言葉を何回も使っている。

    北朝鮮では、文化語政策(言語民族主義政策)を韓国以上に強力に推し進めている。なので、「気に入らない」外来語は排除していく方向にあるはずなのだが、上に書いたような現象を観察していると、何か北朝鮮社会の様子が垣間見える気がする。

    そういえば、元ソウル中央地検長の李健介大統領候補が「警察・検察の“察”という字は国民を監視・統制するという意味の査察に由来する日帝の残滓」とし「国民を保護するという意味の護民部に改めるべき」と国家捜査制度改革案を提示したそうだ。「日帝の残滓」排除は良いが、漢字の本家本元である中国で「警察」という言葉を使っているのを李さんはどう考えるのであろうか。お節介な提案をしておけば、「護民部」などというややこしい言葉を創造せずに、「(人民という言葉は嫌だろうから)国民保安部」(国民の安らかな生活を保つ)とでも改称してはどうだろうか。

    『中央日報日本語版』:「「検察・警察の“察”は日帝の残滓、捜査機関を3つの護民部に改編」…韓国大統領候補が公約」
    http://japanese.joins.com/article/355/162355.html

    「<常識>朝鮮植物図鑑-グラジオラス-」(2012年11月2日 「朝鮮中央TV」)

    以前、<常識>シリーズの鳥に関する記事を書いたが、今回は花、グラジオラスである。

    「朝鮮植物図鑑」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-02-14.flv

    グラジオラス
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-02-14.flv

    グラジオラスは、日本でも普通に見られる植物であり、それ自体は我々にとっても特に珍しくはない。しかし、<常識>番組では、「最近、グラジオラスの若い芽はナムルの材料として食用にもされている」と言っている。ざっと、ネット検索をしてみたが、芽を食べるという話は見当たらなかった。しかし、球根を食べることはあったようだ。

    「若い芽は食用に使われる」と書いてある。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-02-14.flv

    「最近」というのは、食料不足の時期からという意味なのか、もっと長いスパンでの最近なのかは分からないが、ナムルの材料としてはいけるかもしれない。もっとも、グラジオラスは食用にしても成分の点で問題がないのかどうかは定かではない。

    それはさておき、番組ではグラジオラスにまつわる逸話を紹介している。この話についても、ネットでざっと検索してみたが、出てこなかった。その逸話とは、

    「古代ローマに心の優しい美しい王女が住んでいました。王女は、体が弱かったので若くしてこの世を去ってしまいました。王女は自分が死ぬ前に、いつも持っていた香水の瓶を自分の墓に埋めてくれと頼み、その瓶は絶対に開くことがないようにという遺言を残しました。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-02-14.flv

    ところが、好奇心旺盛な一人の使いの女がその香水の瓶をこっそりと開けてみたら、不思議にも香りが溢れ出てきました。使いの女はとても驚いて、その瓶を墓に慌てて埋めました。次の年の春、香水瓶を埋めた場所に美しい花が咲いたのですが、香りがありませんでした。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-02-14.flv

    その事実を知った王は、刀でその使いの女を殺してしまいました。すると、不思議にも花の形がきれいな刀の形に変わりました。それが、グラジオラスだったということです。伝説ですが、とても残念です。この花に香りまであれば、どれほど良かったでしょうか」

    という話である。古代ローマの話なので、その根源はどこかにあるのだろうが、なかなかおもしろい話である。

    「20時報道」:自留地(庭)(2012年11月1日 「朝鮮中央TV」)

    北朝鮮農村で自留地における耕作を認めているという話は以前からあり、また今年5月に北朝鮮を訪問した研究者も10月に福井で開かれたある学会で自留地(その研究者によると、北朝鮮では「庭」と呼んでいるらしい)を北朝鮮で実際に見せてもらったと報告した。

    その研究者は多数の写真を撮影してきたので、大体自留地の様子は分かったのだが、自留地らしき映像が昨夜の「20時報道」で映し出された。

    報道の内容は、アブラナ栽培についてであるが、インタビューを受ける農民の背景には農家(それにしては、きれいすぎる家だが)らしき建物が映っており、その軒先には野菜を栽培する畑が見られる。

    「菜種油はコーン油に劣らず美味しい」と話す農場員のソン・ビョングムさん。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=12171

    菜種畑。看板には「2班5分組 アブラナ300株 管理者 金チュンヨン」と書かれている。 
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=12171

    「私たちの農場では秋収穫のアブラナを栽培している」と語る部員のハム・インナムさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=12171

    ハムさんによると、今年も菜種を10トン余り生産し、各世帯の農業労働者の数に応じて菜種を配分したという。多く配分された世帯には50kg配分されたそうである。上の写真でインタービューに答えているソン・ビョングムさんは、「私たちの農場では、アブラナをたくさん植えて、その恩恵を被っている」と嬉しそうに話している。

    菜種がたくさん収穫できたというのは良い話だし、それを報道するのも良いであろう。しかし、その裏では自留地での栽培の様子や共同農場でもその実績に応じて農場員に配分をしているということを伝えようとしているのかもしれないと考えてしまうのだが、どうなのだろうか。

    「20時報道」:地球物理学的要因による不利な日と時間(2012年11月31日 「朝鮮中央TV」)

    頂いたコメントに対する返事を書いていたのだが、おもしろい話なのでブログに掲載しておく。

    「20時報道」では、毎月月初めに「地球物理学的要因による不利な日と時間」というのを番組の最後で伝えている。

    「11月中の地球物理学的要因により不利な日と時間 平壌地方 2日(1~3時)」などと書いている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-10-31-15.flv

    この日の「20時報道」では、平壌と清津における「不利な日と時間」だけが伝えられたが、記憶曖昧ながらも他地域の情報を提供するケースもあったかもしれない。

    コメントを下さった方もそうであるのだが、私も「地球物理学的要因」とは何なのかとずっと思っていた。初めて「地球物理学的要因」報道を見たときは、朝鮮人民だけが分かる何かの「暗号司令」ではないかと思ったほどだった。想像していたのは月の引力か地磁気だったのだが、どうやら後者のようだ。

    いつもは不利な日にちと時間だけを伝えてこの報道は終わるのだが、昨夜の「20時報道」では「地球物理学的要因」について平壌市救急病院の医師が説明をしている。

    平壌市救急病院副院長ソ・チョル医師
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-10-31-15.flv

    ソ・チョルさんによると、地磁気が変わると「心臓・血管系統に影響があり、健康に悪い影響を与」え、「血中の血球が無秩序に流れ、血液が流れる速度に影響を与え」るので「臓器への血液供給に障害が発生し、血圧が変動」し脳や心臓の病気を引き起こすということである。その証拠として、「これまでの統計分析によると、心筋梗塞や心臓発作による総死亡の84%が、太陽面の爆発で太陽面に発生した黒点が最も多い面が、地球の中央子午線と一致する時」に発生しているという。そして、地磁気の影響を減らすためには、「自然環境の中で体を鍛えること」や「情緒的な生活をして、摂生のある生活をすることが非常に重要であ」り、「脳や心臓に疾患のある人は、地磁気予報がある日には医療関係者と連絡を密にし、身体に異常が発生した場合は、即時に対応してもらうことが重要である」と述べている。

    北朝鮮でなぜ「地磁気」と疾患についてこれほど注目するようになったのかはよく分からないが、もしかすると、過去の指導者の言質の中にそういう話があったからなのかもしれない。

    地磁気と健康については、下記のページが参考になる。

    TDKテクノマガジン:「磁気と生体」
    http://www.tdk.co.jp/techmag/magnetism/index.htm

    「偉大な金日成大元帥様と金正日大元帥様の銅像を金日成軍事総合大学に高く頂いた」(2012年10月30日 「労働新聞」)

    昨日書いた記事に追記しても良いのだが、今日(11月1日)に至るも金日成軍事総合大学の銅像除幕式で行われた金正恩演説の全文が「労働新聞」に掲載されない。記録映画での「要約」も異例であると昨日書いたが、演説全文が掲載されないのも少なくとも金正恩政権になってからは異例である。金正日さんの公開演説はなかったはずだが、金日成時代はどうだったのであろうか。私にはインスタントに確認するすべもないので分からない。

    そもそもなぜ「要約」されたのであろうか。「労働新聞」に掲載された「偉大な金日成大元帥様と金正日大元帥様の銅像を金日成軍事総合大学に高く頂いた」という記事にも演説内容のごく短い要約しか書かれていない。分量を示すために、その部分を切り出すと、

    「경애하는 김 정 은원수님께서는 연설에서 김 일 성군사종합대학은 명실공히 대원수님들의 정력적인 령도와 보살피심속에서 창립되고 강화발전되여온 김 일 성대원수님의 대학,김 정 일대원수님의 대학이라고 하시면서 대학이 걸어온 지난 60년의 력사를 긍지높이 총화하시였다.

    경애하는 원수님께서는 오늘 김 일 성군사종합대학이 우리 나라 군사교육의 최고전당으로,력사가 있고 권위가 있는 세계적인 대학으로 자라나 자기 발전의 최전성기를 맞이하게 된것은 전적으로 대원수님들의 현명한 령도가 낳은 빛나는 결실이라고 하시면서 대학의 성스러운 사명과 임무,대학앞에 나서는 영예로운 과업들을 제시하시였다.

    위대한 대원수님들의 영원한 축복속에 힘차게 전진하는 김 일 성군사종합대학에 승리와 영광이 있으리라는 확신을 표명하신 경애하는 최고사령관동지의 연설은 참가자들을 무한한 격정과 환희에 휩싸이게 하였다.」
    (『로동신문』、「위대한 김 일 성대원수님과 김 정 일대원수님의 동상을 김 일 성군사종합대학에 높이 모시였다」、2012年10月30日、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-10-30-0001)

    だけである。

    また、これまで金正恩演説が行われた後には、その全文が掲載された「労働新聞」を見ながら、労働党幹部や朝鮮人民が「学習」している様子がかなり長時間にわたり「20時報道」でも紹介されたのだが、昨夜の「20時報道」に至るも「学習」の様子は一切伝えられていない。そもそも「労働新聞」に掲載されないのだから学習できないという事情もあろうが、これも異常事態である。

    可能性としては、金正恩さんが演説原稿を読み誤り、その後処理に苦慮している可能性はある。指導者が読み誤った一字一句をどう処理するのかということは、金正恩さんの権威にも関わる重大事であることは間違いない。特に、同演説は少数の人間ではなく、数多くの金日成軍事総合大学の関係者が直接聞いている。

    指導者崇拝のマグニチュードを下げようという試みという可能性もあるが、それはきわめて低い。

    この問題、今後どのようになるのか注目する必要がある。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「副部長同志」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

          dprknow

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