2013年の御礼 筆者より 2013年12月31日

    2012年に始めた拙ブログですが、おかげさまで2年間続けることができました。これも、アクセスカウンターを増やしてくださる方々、そして貴重なコメントを下さる方々の御蔭であることは間違いありません。

    どうか、2014年もよろしくお願いいたします。

    皆様にとって2014年がよい年でありますように。
    そして、朝鮮人民にとってもよい年でありますように。

    「敬愛する金正恩同志が完工した馬息嶺スキー場を視察された」:スロープは多いが、リフトは1基だけ?、新しい言葉「雪(ゆき)砲」登場 (2013年12月31日 「労働新聞」)

    馬息嶺スキー場が完工した。何日なのかは明らかにされていないが、金正恩が完工した同スキー場を視察したと『労働新聞』が1面と2面で多くの写真と共に伝えている。今日の「朝鮮中央TV」でもおそらく、このニュースは伝えられるであろう。

    『労働新聞』の記事の内容にはあまり新しいことはないが、馬息嶺スキー場を「偉大な大元帥様たちの崇高な念願」であり、それを「献身と労苦で支えられる敬愛する元帥様の崇高な人民愛が生み出した高貴な結晶体」としている。また、「人民と世界を前に宣言したとおり、馬息嶺スキー場建設を年内に終えることが出来た」と「人民軍隊が本当に大きな仕事を成し遂げた」ことを称賛している。

    「元帥様」は自らリフトに乗り、その運用状態を確認した。スイスでスキーもやったのだろうから、スキーを履いて実際に滑ってみた方がカッコイイはずなのだが、そうしたパフォーマンスはなかったようだ。
    リフト金正恩
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공된 마식령스키장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    さて、そのリフトであるが、写真を見る限りでは1基しか設置されていないようだ。下の写真から分かるように、リフトは馬息嶺ホテルを背景に山に登っていく。ホテルの裏にはスロープはない。
    ホテル馬息嶺
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공된 마식령스키장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    すると下の全景写真の「赤線」(筆者加工)部分にリフトが設置されており、1つのスロープを使ってホテル前に滑り降りるということであろう。本来であれば山頂にある建物までリフトがあり、そこから滑り降りてこられるようにすれば、全てのスロープを使えるはずなのだが、機材が調達できなかったのか、時間がなかったのかは分からないが、現状では広大なスキー場のほんの一部しか事実上使えない状況である。山頂までゴンドラケーブルでも引けば、良いと思うのだが「元帥様」にそうした計画があるのかどうか。「世界級のスキー場」にするためには、それは必要だと思うのだが。
    馬息嶺全景2
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공된 마식령스키장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    ところで、「元帥様」がチェックした設備の中には「雪(ゆき)砲」も含まれている。過去記事でも「朝鮮中央TV」で紹介された人工雪を降らせるための送水管を設置する作業について書いたが、その時に既に使われたのかどうか確認する必要があるものの、スノーマシンを表すと思われる「雪(ゆき)砲」という言葉が登場している。例によって、ウリミンジョクキリが提供するweb「朝鮮語大辞典」で調べてみたら、「雪砲台」という言葉は出てくるものの「雪砲」は出てこない。新造語であろう。

    デモンストレーターがスキーをやっているが、スノボはいないように見える。右端にいる人がスノボをやっているようにも見えるが何とも言えない。
    スキーをする人民
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공된 마식령스키장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    「元帥様」は、早く竣工式をやって人民が使えるようにと指示をしたが、さて誰が来るのだろうか。

    <追記>
    1日朝、31日に行われたスキー場の「開場式」の様子を伝える「録画実況」番組があった。その中に1人ではあるが、スノボをやっている「スキー選手」か「青少年学生」が映っていた。スキーが主であるがスノボもあることはあるようだ。

    20140101kctvhsasf_003120878.jpg
    Source: KCTV, 2014/1/1放送、「<録画実況>馬息嶺スキー場開場式」

    <追記2>
    リフトが2基あるというコメントを頂いて、再び『労働新聞』に掲載された写真を眺めていた。よく見たら上記の「雪(ゆき)砲」が映っている写真があった。

    2013-12-31-02-05.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공된 마식령스키장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    「マシンリョンホテル」の右の方で雪煙が上がっているが、よく見るとスノーマシンが稼働している。リフトの周りの林を見ると地面が見えている部分もあるので、この時期はスノーマシンを稼働して雪量を確保しているのかもしれない。

    <追記3>
    予想以上の「馬息嶺スキー場」について追記にしようと思ったが、別記事にした。

    「自滅の道を進む日本-朝鮮中央通信論評-」:安倍靖国参拝を批判 (2013年12月29日 「朝鮮中央通信」)

    12月26日に安倍靖国参拝が行われた以後、北朝鮮は28日に「日本の執権者の無分別な靖国神社参拝行為」、「中国、日本の執権者の靖国神社参拝に抗議」、「ロシア外務省、日本の執権者の靖国神社参拝に憂慮」、そして29日に「中国外交部長、日本の執権者の靖国神社参拝に抗議」という記事を配信してきた。

    28日に配信された「日本執権者、無分別な靖国神社参拝行為」では、「日本の執権者が26日、軍国主義の象徴である靖国神社を参拝する無分別な行為を強行した。この日、安倍は執権後1年となることを契機に、電撃的に靖国神社を参拝するという盲動を行った。アジア国家と国際社会の反対にもかかわらず、強行された日本の執権者の神社参拝は、軍国主義亡霊を復活させようとする安倍政権の右傾化策動が一定のレベルに達したということを示している」と参拝した事実とそれに関するコメントを伝えている。

    29日に配信された「朝鮮中央通信論評」ではさらに詳細に以下のように伝えている。

    ++++++++++++
    去る26日、日本の執権者が国際社会の反対にもかかわらず、ついに靖国神社を参拝した。
    参拝後、記者の前で「犠牲となった日本人の悲しみ」云々しながら、戦犯のためのラッパまで吹いた。これは、アジア国家人民と世界に向けて投じた第2の侵略戦争宣言と同じである。
    特級戦犯者の位牌が保管されている靖国神社は、アジアを血で染めた日本軍国主義の精神的象徴である。日本の執権者の靖国神社参拝と妄言は、過去の「征韓論」と「大東亜新秩序」を彷彿させ、朝鮮とアジア侵略へと猛烈に疾走した特級戦犯者の行為と脈を同じくするものである。
    日本は今、思想精神的に完全に右傾化、ファッショ化した戦争国家と化した。
    新たな「防衛計画大綱」と中期防衛力整備計画、初めての国家安全保障戦略などを立て続けに採択し、侵略戦争のための法律的、制度的準備をさらに徹底して行った。
    天文学的数字に達する軍事費でも不足し、来年度軍事費を2.8%も増加させ、戦争実行の物的、技術的土台をより強化した。
    昨年12月26日、過去の犯罪を否定し軍国化の第一歩を踏み出した日本当局者が、今年のまさにこの日には靖国神社参拝により戦争国家日本の復活を国際社会を前に宣言した。
    日本当局者のこの宣言は、 第2の敗北宣言である。
    過去の世紀にアジア国家の人民の利益を無残にも踏みにじり、意気揚々とのさばったファッショ凶は、例外なく悲惨な運命を免れることが出来なかった。
    安倍をはじめとした日本極右勢力の神社参拝もやはり、アジア国家の人民はもちろん、ボス(米国)と自国内の支持勢力からまで非難・冷遇されている。
    日本は既に政治、外交、道徳的に完全に破綻に瀕している。
    日本反動共の無分別な盲動が、物理的な行動にまで移されるならば、日本の運命が政治、経済、軍事的に終局的破滅に直面するということは火を見るよりも明らかである。
    万が一、日本当局者に国際社会の警告と忠告に耳を傾けるという初歩的な理性すらないのならば、彼らの向かう道は明白に滅亡だけである。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    平素から日本を非難している北朝鮮なので、今回の安倍靖国参拝関連の「各国の反応」の数にも挙げられないが、「ボス(米国)に非難・冷遇されている」などと見るところはきちんと見ているようだ。米国務省がクリスマス休暇に入ってしまい、定例記者会見が行われないので、「ボス」の反応については駐日米大使館のプレスリリースでしか確認できない。既に報じられているように「Statement on Prime Minister Abe's December 26 Visit to Yasukuni Shrine」の中では「the United States is disappointed(米国は失望した)」という強い表現が使われており、これを北朝鮮はボスによる「非難・冷遇」と評しているのであろう。

    Embassy of the United States, Tokyo Japan, "Statement on Prime Minister Abe's December 26 Visit to Yasukuni Shrine", http://japan.usembassy.gov/e/p/tp-20131226-01.html

    ここでは、安倍靖国参拝については論じないことにするが、クリスマス休暇が明けた米国務省での定例記者会見を注目したい。

    『労働新聞』11月10日以前はHPより削除 (2013年12月30日)

    『労働新聞』HPを見ていて気付いたのだが、11月10日以前の記事は全て削除されている。張成沢関連の記事のみ削除と思ったが、彼の名前が出た記事が多すぎるので、一度全て削除したのであろう。いつこの作業を行ったのかは確認できていない。私の記憶では、過去記事にした日体大一行を迎える張成沢の写真を掲載した11月7日の記事が最後である。張成沢関連部分を削除し、過去記事を復活させるのかどうかは分からないが、記事を書く時のDBとして使っているので、復活させて欲しいものである。

    「敬愛する金正恩同志に中国共産党中央委員会総書記であり中華人民共和国主席である習近平同志が年賀状を送ってきた」:年賀状は来たが内容は紹介せず (2013年12月27日 「労働新聞」)

    習近平が金正恩に宛てた2014年の年賀状が在朝中国特命全権大使を経由して届いたと『労働新聞』が報じた。しかし、その内容については明らかにされていない。また、中国共産党中央委員会政治局委員である李源潮副主席(2013年7月27日の「戦勝節」に際し平壌を訪問し、金正恩と会談)、中国人民政治協商会議全国委員会副主席である王家瑞中国共産党中央委員会対外連絡部長からも年賀状が届いたと報じた。

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은동지께 중국공산당 중앙위원회 총서기이며 중화인민공화국 주석인 습근평동지가 년하장을 보내여왔다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-27-0005&chAction=S

    張成沢事件が中朝関係になんらかの影響を与えることが予想されるが、取りあえず形式的儀礼は続いているようだ。

    「敬愛する最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍水産部門の模範的幹部と船長、漁労工に党及び国家表彰を授与なさり、彼らと共に記念写真を撮られた」:数百人に一人一人表彰状を授与、イメージ転換に腐心 (2013年12月29日 「朝鮮中央TV」)

    張成沢事件後、初めて金正恩の最近の動静を紹介する「朝鮮記録映画」、「敬愛する最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍水産部門の模範的幹部と船長、漁労工に党及び国家表彰を授与なさり、彼らと共に記念写真を撮られた」が29日に放送された。この他にも「偉大な同志2 永生する生き様」という「朝鮮記録映画」が繰り返し放送されているが、こちらは張成沢事件以前の金正恩が登場する動画を集めたものである。内容としては、軍務遂行中に事故などで死亡した人民軍人を「元帥様」がねぎらい、遺族に「限りない恩情を施す」逸話をいくつも紹介するものである。

    墓石に刻む軍人の写真を「夜を徹して」選ぶ「元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送 「偉大な同志2 永生する生き様」

    いずれの「朝鮮記録映画」も国家に貢献した軍人などに「元帥様」が「限りない恩情」を施すという内容になっている。過去記事にも書いたように、張成沢事件で朝鮮人民の民心は混乱しているはずである。それは「恩情深い元帥様」としてデビューした金正恩が、いくら「万古逆賊」とはいえ、叔父を処刑したことで、「恩情深い元帥様」のイメージが傷ついてしまったからだ。これは「権力闘争を勝ち抜いた強い元帥様」と「恩情深い元帥様」とトレードオフの関係にある訳だが、張成沢の「罪状」もそれなりに重かったこともあり、前者を選択して彼を処刑した。これは幹部に対しては有効であったが、「恩情深い元帥様」に期待をする朝鮮人民の民心に反した行為となったはずである。「偉大な同志2 永生する生き様」がそれを取り戻すために準備されたのかどうかは分からないが、「朝鮮人民軍水産部門・・・」の方は明らかに「恩情深さ」を強調するために急遽行われた行事であろう。

    というのは、「朝鮮人民軍水産部門」一行の平壌招聘があまりにも急に出てきたからである。『労働新聞』で確認する限り12月22日の記事「朝鮮人民軍水産部門熱誠者会議参加者、平壌到着」の中で彼らの平壌招聘について初めて紹介している。「元帥様」が地方から「功労者」を平壌に招聘する場合、通常は「元帥様が招聘された」という宣伝から入り、出発前に招聘された「栄誉」について語る「功労者」などが紹介され、列車やバスで平壌に向かう様子といった手順で紹介される。このところ「20時報道」をきちんと見ていないが、今回はそれがなく、突然「到着」となっている。さらに同記事によると「(元帥様は)前例のない全軍水産部門熱誠者たちの会合も準備して下さるという大きな恩情を施して下さった」と書かれている。「記録映画」の中でも「建国以来初めての会議」と紹介しており、いかにも急遽準備された平壌招聘の感じがする。

    平壌の高麗ホテルに到着した「熱誠者」たち
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 수산부문열성자회의 참가자들 평양 도착」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-22-0019&chAction=S

    「表彰状授与式」は12月26日、党中央委員会会議室で開催されている。「科学者」などを招聘した際にもこの会議室が使用されているのかもしれないが、この会議室は12月8日にまさに張成沢の「罪状」を列挙した「党中央委員会政治局拡大会議」が開催された場所である(『労働新聞』では「革命の首都平壌で」とのみ紹介されていて、「会議室」名は出ていない)。

    「政治局拡大会議」の様子
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    Source: 『労働新聞』、「조선로동당 중앙위원회 정치국 확대회의에 관한 보도」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-09-0001&chAction=S

    そして、金正恩の顔つきであるが「拡大会議」の際の眼鏡を掛けた厳しい顔つき(下の写真)
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    Source: 『労働新聞』、「조선로동당 중앙위원회 정치국 확대회의에 관한 보도」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-09-0001&chAction=S

    とは対照的に「表彰状授与式」では終始笑みを浮かべている。もちろん、叔父に事実上の「死刑」を宣告する会議と「熱誠者」を祝賀する会議では全く性格が逆なので顔つきが変わることは当然であるが、今回の「熱誠者会議」では過去にこの種の会議に参席した時と比較しても彼の「笑顔」は明らかに強調されている。これも「恩情深い元帥様」のイメージを取り戻すための演出であろう。

    微笑む「元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    そして、演説をするが原稿を読むことなく、授与式参加者の顔を見ながら何かを話している。「記録映画」で「元帥様」の肉声を聞くことは出来ないが、ナレーションは「党の戦闘命令を輝かしく貫徹した人民軍隊の水産部門戦闘員に偉大な首領様と偉大な将軍様の心まで合わせて、心より祝賀し感謝する」と話したと述べている。

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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    そういえば、「拡大会議」に出席した際、金正恩が「眉を剃っていた」という報道をどこかで聞いたか読んだが、確かに眉は短くなっている。ただ、過去記事にも書いたと思うが、彼は「剃り」を入れるのが好きなようで、額の横に時々深く剃りを入れているのが見受けられる。記事では「冷酷さを強調するために入れた」と言っていたが、「剃り」は単なるファッションではないかと思う。

    さらに、「授与式」で特徴的なことは、「元帥様」の「お言葉」をメモする「熱誠者」が誰もいないことである。この種の会議では、通常、「元帥様」のお言葉を皆熱心にメモしているが、今回は机の上にノートさえ置かれていない。おそらく、「元帥様」のアドリブの演説をメモすることが禁止されたのであろう。
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    続いて、金正恩は数百名の参加者に一人ずつ表彰状を手渡す。伝達シーンに入るところで、ステージの袖から崔龍海が走って来て金正恩に何か言う。

    走ってくる崔龍海
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    そして金正恩に何かを言う
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    このシーンは急遽仕立て上げたことによる準備不足から来たハプニングであろう。しかし、ハプニングをカットせず敢えて放送した意図は、金正恩が崔龍海以下人民軍を統率していることを強調するためではないだろうか。

    「朝鮮民主主義人民共和国労力英雄」の表彰状
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    そして、表彰状伝達シーンは延々約9分間続く。これまでも金正恩が直接メダルや表彰状を手渡すシーンは紹介されてきたが、多くても十数名であった。しかし、数百名に一人一人手渡すというのは今回が初めてで、お父さんやお爺さんもやったことがないのではなかろうか。だとするとやはりこれも「恩情深い元帥様」を人民に見せるための演出だったのかもしれない。特に、この会議は「朝鮮人民軍水産部門」とはいえ、参加者の服装から分かるように軍人と民間人両方が参席しており、軍と民をまとめて「恩情を施す」という実に効率的な構成である。

    拍手をする参加者
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    それにしてもこれだけの参加者一人一人に表彰状を手渡すというのは、これまで「元帥様」がした仕事の中で最も疲れる仕事であったであろう。

    涙を流す参加者と笑顔で手を差し出す「元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    そして、労働党庁舎前で参加者と共に記念撮影。
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    Source: KCTV, 2013/12/29放送

    29日には金正恩最高司令官就任2周年の「中央報告大会」が開催された。この様子を伝える「録画実況」も放送されたので、追って記事にしたい。

    「<新しく出た歌>あなたなしでは生きられない」:「太陽像」に近い顔、金正恩連呼、張成沢事件再考、ジレンマ (2013年12月21日 「労働新聞」)

    21日付けの『労働新聞』で、また新しい歌が紹介された。昨日の「朝鮮中央TV」では、「我々はあなたしか知らない」や「革命武力は元帥様の領導だけを受ける」は繰り返し流されていたが、この新曲はまだ流されなかったようだ。まず、歌詞から紹介しておく。

    「あなたなしでは生きられない」作詞:チャ・ホングン、作曲:金ウンリョン

    1.
    親近なるその方の情、胸に流れ
    寝ても覚めても、温かい心
    点のような人徳と、信頼に引かれ
    我々は皆、従って生きる
    その方なしでは生きられない
    金正恩同志
    その方なしでは生きられない
    我々は生きられない
    我々の運命
    金正恩同志
    その方なしでは
    我々は生きられない

    2.
    我々の心、その方だけが最もよく抱き
    いつでも我々の幸福を守って下さる
    夢に見る希望も、胸に抱いた想像も
    その方の懐で、全て花咲く
    その方なしでは生きられない
    金正恩同志
    その方なしでは生きられない
    我々は生きられない
    我々の運命
    金正恩同志
    その方なしでは
    我々は生きられない

    3.
    共に歩んできた道を思い出しても、前途を考えても
    太陽のようなその微笑で溢れている
    その方だけを頂き、地の果てまで
    忠誠を尽くしてお仕えし、生きる
    その方なしでは生きられない
    金正恩同志
    その方なしでは生きられない
    我々は生きられない
    我々の運命
    金正恩同志
    その方なしでは
    我々は生きられない

    歌詞からも分かるように、金正日のテーマソングである「あなたがいなければ祖国はない」また一歩近づいたようだ。しかし、それ以上にパワーアップしているのは「金正恩同志」とさびの部分で繰り返していることだ。また、下の写真にもあるように、万寿台創作社の芸術家による「絵」にはなっていないが、限りなく「太陽像(金日成や金正日が微笑んでいる肖像画)」に近い写真を使っている。そう思いながら、歌詞を見ていたら、歌詞の中に「共に歩んできた道を思い出しても、前途を考えても、太陽のようなその微笑で溢れている」という一節があった。金正恩の笑顔を「微笑」と表現することはこれまでもあったが、「太陽像」のように丸い円の中で微笑む彼とこの歌詞をセットで出してきたということは、やはり金正恩を格上げして、一歩、お父さんとお爺さんに近づけたのではないかと思う。

    生きられない金
    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    しかし、金正恩忠誠系の歌がこれほど連続して出されるのは、張成沢事件が体制に対してだけではなく、朝鮮人民にもかなり大きな影響を与えているのであろう。彼らも張成沢が単なる権力者ということではなく、「将軍様の妹の夫」ということをよく知っていたはずなので、そのような人物を処刑した金正恩に対して、張成沢の「罪状」とは別に、「将軍様に対する思い」と「叔父を処刑した」という金正恩の「人徳」への疑念が生じているのかもしれない。朝鮮人民は、ある部分に関しては制度的に「考える」ことを禁止されているが、「将軍様への思い」を募らせるのは常日頃奨励され、かつそれが習慣化しているであろうし、朝鮮民族に深く根付いた「儒教的人徳」は北朝鮮社会で韓国以上に強く残っている。このようなどうしようもない朝鮮人民の心の揺れを鎮めるために、金正恩忠誠ソングを連発しているのかもしれない。

    また、金正恩とて、重要な、敢えていえば最も重要かつ信頼できる(間接的にではあるが、「白頭の血統」で繋がっている)アドバイザーを失ったわけだし、しかもそれが彼の「重大な背信」によるものであればあるほど、事態をどのように収拾すべきか悩んでいるはずである。今、その収集案を「締め付け」以外の方法で提示できるアドバイザーがいるのかどうか。

    しかし、金正恩は「叔父さん張成沢」を本当に処刑したかったのであろうか。「労働党政治局拡大会議」で彼は眼鏡を掛けていた。記憶が正しければ、金正恩がサングラス以外の眼鏡を掛けたのは、執務室でお爺さんの真似をしながら書類に目を通す写真だけだったはずである。しかし今回は、動画での公開はなかったものの、眼鏡を掛けて登壇している写真が公開されている。彼が平素コンタクトレンズを使っていれば分からないが、そうでなければ近眼ではないはずである。これまでも彼は諸会議で書類に目を通していたが、その時は眼鏡は掛けていなかった。ここからは随分乱暴なというか、金正恩に同情したような憶測となるが、彼があの時に眼鏡を掛けていたのは、「変装」して心の動揺を隠そうとしたからのような気がする。

    張成沢と金正恩の年齢差を考えれば、彼が幼少時代に「成沢叔父さん」にはかわいがってもらったはずである。その、「成沢叔父さん」がどれほどの「悪事」を働こうとしたのかは分からないが、処刑するのは金正恩としても忍びなかったのではないだろうか。また、叔父さんが「体制奪取」を仮に図ったとしても、かつてかわいがってやった「正恩ぼうや」を殺害しようとまで考えたであろうか。

    では、なぜ金正恩は処刑を決断したのか。やはり、張成沢の「罪状」がそれほど重かったのであろうし、そこで幹部たちに「示し」を付けておかなければ、第二、第三の張成沢事件が発生すると考えたのであろう。幹部たちに対してはこの「示し」は有効であったかもしれないが、上記のように一方で朝鮮人民に動揺を引き起こし、あるジレンマに陥っている可能性はある。

    もちろん、その時に有効な手段は、人民の目を外に向けさせることであるが、米国や韓国との対決ムードをこの時点で高めるのは難しいと思う。というのは、米国との「全面対決戦」では「戦勝記念日」を絶頂とし、「勝利宣言」を出したばかりであるし、韓国とは「開城工団問題」でさんざんもめたあげく、やっと解決の糸口を見いだし、数日前にも「三通問題」などを話し合う会議を正常に開催している。いずれまた「戦争フェーズ」に戻るにしても、今戻るのはタイミング的に早すぎるような気がする。さらに、政権が不安定な時に「対決」を引き起こすことが、「両刃の剣」であることも彼らはよく承知しているはずである。

    そうなると、金正恩は歌で民心を鎮めつつ、経済的成果を出して朝鮮人民に「万福」を感じさせる道を選択しなければならないということになろうが、それとて「羅先の土地50年貸与」という字句を「判決文」に入れるなど、中国を刺激した状況のなかで、決して容易ではないはずだ。

    八方塞がりになった北朝鮮の「大爆発」だけは避けて欲しいのだが。

    「敬愛する金正恩同志が偉大な領導者金正日同志の逝去2周年にあたり錦繍山太陽宮殿を訪問された」:金敬姫登場せず、李雪主スーツで登場、握手による敬意の差、参拝方法変更 (2013年12月17日 「朝鮮中央TV」)

    昨日は、午前11時から「追慕大会」の生中継を見ていた。「金国泰国葬委員会」序列6位の金敬姫が出席していなかった。出てこないと、直ぐに健康不安説がささやかれるが、出席しなかったのは健康以外の可能性も排除できない。思えば、彼女は昨年12月の錦繍山太陽宮殿参拝の映像から削除されていなかったり、上記のように名前は登場しているが、姿を確認するまではその安否を確定するのは早すぎるのかもしれない。

    <追記>
    『労働新聞』に「故金国泰同志の葬儀式開催」という記事が出ていたが、参加者名簿に金敬姫の名はなかった。

    『労働新聞』、「고 김국태동지의 장의식 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-18-0013&chAction=T

    「追慕大会」の生中継では、金正恩登場場面で、壇上を歩いている金正恩が一瞬だけ写るという、カメラを切り替えるスイッチャーのエラーがあった。「元帥様」登場場面でどのような映像を出すかというのは非常に重要なことなのできちんと脚本ができているはずである。それなのに、なぜこのようなエラーがあったのだろうか。張成沢事件で皆が緊張しており、スイッチャーの手が滑ったのかもしれない。ただし、世の中の関心が高かったのか、生放送中はサーバーにアクセスが集中しており、時々、転送速度が著しく低下していた。そのために、実際には放送されていたのだが、こちらでは中断しているように見えただけの可能性もある。

    「生放送」では見えなかったと思われる場面
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    「追悼大会」では、崔龍海などが演説をしたが、金正恩への「一心団結」が強調されているぐらいで、特記するほどのことはなかった。冒頭演説を行った金永南も相変わらず独特な咳払いをしながら演説を読み上げていたが、拍手が入るタイミングを読み落としたのか、拍手が入ってもしばらく演説を続けるなどのエラーが見られた。

    金正恩はといえば、憮然とした顔で座っていた。少し顔色が悪かったような気もするが、気のせいかもしれない。

    その後、金正恩他が「錦繍山太陽宮殿」を参拝する表題の「朝鮮記録映画」が放送された。この場にも金敬姫は登場しなかったが、久しぶりに李雪主夫人が登場した。昨年は妊娠中の腹部を目立たなくするために朝鮮服を着ていたが、今年はスリムなスーツを着ていた。

    「錦繍山太陽宮殿」前に幹部が整列して待っているところに金正恩夫妻がやってくる場面がなかなか興味深い。ここでは、待ち構えている幹部と金正恩夫妻が握手をするのだが、金正恩と李雪主に対する握手の仕方が人によって微妙に違っている点である。韓国でも北朝鮮でも握手の仕方というのは敬意を表す表現としてとても重要である。最大の敬意を表すには、両手で相手の手を握る、次の敬意レベルは片手握手をしながら反対の手を手首か腕に添える、その次の敬意レベルは反対の手でお腹の辺りを押さえるという感じである。逆に敬意を表さない握手は、いわゆる西欧型の片手だけでする握手である。

    下の写真は金正恩と握手をする金永南である。年齢からすれば逆の体制になるべきだが、「元帥様」なので金永南は両手で金正恩の手を握っている。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    次は、李雪主と握手をする金永南である。握手の仕方や姿勢は金正恩との時と同じである。李雪主は片手を差し出しているだけであるが、「元帥様夫人」とはいえ年齢的には無礼極まりないことである。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    次は、金正恩と握手をする崔龍海である。金永南同様に両手で「元帥様」の手を握っている。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    次が李雪主と握手をする崔龍海である。腰をほとんど曲げずに片手を差し出しているだけである。反対側の手は腕に当てていいる。つまり、彼は「元帥様」と「元帥様夫人」を分けて対応しているということである。この辺り、権力関係を象徴しているのか、長年トラブルを引き起こすことなく生き延びてきた金永南の処世術に一日の長があるのかは分からない。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    金永南の隣の朴奉珠は、金正恩と握手する際にも反対側の手を差し出すも片手だけ、しかも腰を曲げる角度が少ない。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    朴奉珠の李雪主との握手に至っては、手を添えることさえしていない。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    握手の仕方など、それぞれ人の癖だと言ってしまえばそれまでであるが、張成沢が判決文の中で「嫌々立ち上がって適当に拍手をした」と批判されていることなどからすれば、こういう場での握手の仕方はとても重要なのではないだろうか。

    続いて一行は「宮殿」内の銅像に参拝をする。以前、金正恩夫妻が何かの公演を観覧する際にも登場していた髪の毛を一つ結びにした女性が左側の茶色い柱の横辺りにいる。この女性と体の大きな角刈りの男性が金正恩夫妻に陰のようにくっついているが、角刈り男性が金正恩、一つ結び女性が李雪主の警護要員であろう。金正恩の方は複数の警護要員がいるのかもしれないが、李雪主の方にはいつもこの女性が着いているのかもしれない(髪型だけでしか判断できないが)。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    両端にいるのが警護員と思われる男女。きょろきょろと周囲を警戒しながら歩いている。参拝後に展示室参観中。
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    入場の場面からそうであるが、2012年との大きな違いは、金正恩夫妻が幹部より一歩前を歩いている点である。これは、参拝場面でも同じである。この辺り、細かな話ではあるが、やはり金正恩の権威とその他幹部と区別することで高めようとしているのかもしれない。

    2013年12月17日(金正日2周期)の参拝場面
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    2012年12月17日(金正日1周期)の参拝場面
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    Source: KCTV, 2012/12/17放送

    さらに、2012年の参拝では軍人は軍帽を脱ぐことなく敬礼をしている。ところが、2013年は軍帽を脱いで民間人と同じように頭を下げている。軍帽を脱ぐことが打ち合わせの上の行動であったのかは分からないが、崔龍海などが軍帽を脱ぐと、波を打つように後方にいる軍人も軍帽を脱いだ。「朝鮮中央TV」は全国各地で朝鮮人民や軍人が銅像や壁画を参拝する様子を紹介していたが、人民が頭を下げている場面は映し出されたものの、軍人の方は花輪を持って歩く姿だけで、参拝部分は出てこなかった。もしかすると、地方では軍人がこれまでどおり敬礼をしていたので、中央との「乱れ」を隠すために映像を出さなかったのかもしれない。

    両江道で花輪を捧げる軍人
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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    <追記>
    韓国KBSニュースを見ていたら、金正恩夫妻が腕組みをしている場面を映していた。私は全く気付かなかったのだが、どうやら下の場面で腕組みをしているようだ。この解像度では、真っ黒く見えるだけでなかなか判別しにくい。

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    Source: KCTV, 2013/12/17放送

    私が見たKBSニュースでは腕組み部分を見やすくするように映像処理を施していたが、腕組みをしたこと自体については何も言っていなかった。一般的には、スイス留学の経験がある金正恩の夫人に対する「西欧風」コーテシーという解説になろう。しかし、金正恩が現地指導に行った先で人民や軍人が彼と腕組みをしていることからすると、「元帥様と腕組みをしながら」を強調したかったのかもしれない。その代表が李雪主夫人で、後ろから歩いてくる幹部たちは「元帥様についていく」「千万軍民」を象徴しているのかもしれない。特に、階段場面でこの演出(だったのかどうかは分からないが)をしているのは、金正恩が「先軍の道」「強盛国家への道」「経済強国への道」を先導しているという構図ではないだろうか。

    「金国泰同志の逝去に関する布告」:張成沢の無残な死と対比、金敬姫は国葬委員序列6位で健在 (2013年12月15日 「労働新聞」)

    過去記事にも書いたように、金国泰労働党中央委員会政治局員が13日18時20分に急性心不全のために89歳で死去した。張成沢事件と重複する時期であるが、彼の死は自然死で偶然の一致であろう。しかし、「万古逆賊」の無残な結末と生涯「党中央」に忠誠を尽くした英雄というコントラストを強調するために、彼の死去発表を調整した可能性はあり得る。

    15日の『労働新聞』は、彼の死去事実を伝えた後、「金国泰同志は、首領の領導を高く頂き、主体革命偉業の勝利的前進のために全てを捧げ、闘争してきた我が党の忠実な革命戦士である」と評価している。党幹部が死去した際、通常用いられる枕詞なのか、今回、特に用いられた枕詞なのかは比較していないが、何とも張成沢の死と対照的であることは間違いない。彼は、金日成の腹心である金策(「金策総合工業大学」と北朝鮮トップの工業大学の名称にも使われている)の息子ということもあるが、やはり金日成時代から「忠実な革命戦士」であったのだろう。

    しかし、それだけではなく、「布告」では「金国泰同志は、戦後、党に正面から挑戦してきた反党反革命宗派分子共の残った毒を清算するための原則的な闘争を展開し、党と首領の思想と権威を堅く擁護し」とも述べているので、やはり張成沢の死とのコントラストを意識しているのではないかと思われる。

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    Source: 『労働新聞』、「김국태동지의 서거에 대한 부고」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-15-0021&chAction=S

    金国泰の国葬委員会が組織され、委員長金永南(最高人民会議常任委員会委員長)、以下、朴奉珠(首相)、崔龍海(朝鮮人民軍総政治局長)、李永吉(朝鮮人民軍総参謀長)、張正男(人民武力部長)に続き金敬姫(労働党中央委員会政治局員)を国葬委員会序列6位で挙げている。金敬姫以下は、金己男(労働党宣伝扇動部長)、崔泰福(最高人民会議議長)、朴道春(国防委員会委員)と続いている。

    この報道で、金敬姫が完全に張成沢と切り離されて扱われていることが確認された。張成沢の「悪事」を列挙した記事の中でも、「白頭の血統」が強調されていたが、やはり彼女は「白頭の血統」で守られたということなのだろう。どうやら、過去記事に書いたうるさい叔母さんを切るという「横枝切り」までには至らなかったようだ。だとすると、金正恩は依然として金敬姫の「白頭の血統」に依拠したプロテクティング・パワーを使う必要があるということなのだろうか。

    『労働新聞』、「조선로동당 중앙위원회,조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회에서」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-15-0023&chAction=S

    「永遠の太陽の聖地として万代に輝かせようと」:張成沢の顔にぼかし?、張成沢をカット、金敬姫はカットされず、金国泰死去 (2013年11月14日 「朝鮮中央TV」)

    張成沢裁判の記事を書きながら横目で見ていた表題番組を14日、「朝鮮中央TV」が放送した。この記事を書いている今も同テレビが再放送をしている。番組自体は、金正恩が「錦繍山記念宮殿」を「錦繍山太陽宮殿」と改め、内部改装、さらには周囲を公園化したことを紹介・称賛するものである。画像としては、丁重に白い布で包まれた「将軍様列車」がクレーン車でつり上げられながら運び込まれる場面など、興味深いものがあるが、本記事では、張成沢事件関連の部分のみに注目することにする。

    まず、おもしろかったのは番組の初めの方で金正恩が何かを指導している場面である。よく見ると、右隅に立っている軍服姿の男性の顔にぼかしが掛けてある。この場面が過去に放送されていれば、誰なのか確認できるが、それを見つけ出すのは大変な作業となるので、見送った。金正恩との距離などからして、可能性が高いのはやはり張成沢であるが、もしかすると「一味」の方なのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2013/12/14放送

    なぜカットした場面を使わなかったのか分からないが、右端をカットすると金正恩が中心からずれてしまうということと、カット&拡大をすると金正恩の胴体が変な位置で切れてしまうという問題があったのだろう。まさか、「粛清懲罰」されたことを見ろとばかりにぼかしを掛けているということはないと思うのだが。

    次に、張成沢と金敬姫の登場シーンである。まず、2012年12月の金正日1周期に「錦繍山太陽宮殿」を訪問した一行の様子を紹介しておく。

    金正恩の右に軍服を着た人に挟まれて立っている張成沢。旗が置かれている左端から3番目が金敬姫。この2人、「公務」だからなのか、並んで座ることはなかったようだ。
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    Source: KCTV, 2012/12/17放送

    次が昨日放送された表題番組の中での様子である。整列ラインに到達する直前の映像であるが、崔龍海の横にいる張成沢は写っていない。しかし、金敬姫は同じポジションにいる。
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    Source: KCTV, 2013/12/14放送

    整列ラインに至ったシーンでは、崔龍海が半分だけ写るようギリギリのカットをしている。崔龍海全身を入れると「万古逆賊」が写ってしまうからであろうか。
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    Source: KCTV, 2013/12/14放送

    別件ではあるが、労働党中央委員会政治局委員である金国泰(金策の子)が13日18時20分に急性心不全で死亡したと14日「朝鮮中央通信」が報じた。タイミングが微妙だったので「まさか」と思ったが、89歳という高齢による自然死のようだ。先ほど「朝鮮中央TV」がその事実を報じ、国葬委員会の名簿を読み上げていた。その序列には関心があるのだが、これについては別記事に書くことにする。

    偶然とはいえ、13日の金曜日なのか・・・

    「<新しく出た歌>希望が満ち溢れる私の祖国よ」:ロシアの曲のような感じ、「何か」の節目か (2013年12月14日 「朝鮮中央TV」)

    またもや「新しく出た歌」がある。14日の『労働新聞』に掲載され、「朝鮮中央TV」が昨日放送した。

    「希望が満ち溢れる私の祖国よ」
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    Source: KCTV, 2013/12/14放送

    作詞:チャ・ホング、作曲:安ジョンホ、編曲:合同、歌:柳ジンハ、演奏:貢献国家合唱団

    1.
    我々は誰でも喜びに満ち溢れ
    眩しい朝を楽しく迎える
    願ってる夢が目の前で花咲き
    明日も楽しく迎える
    明るく明るくあれ、我々が生きているところ
    元帥様のその懐よ
    人民の希望、万福の希望
    満ち溢れる私の祖国よ

    2.
    雪や雨が降っても暴風が吹いても
    我々は誰も恐れがない
    迎える勝利、明るく見え
    笑いながら試練を乗り越える
    歓喜に溢れよ、我々が生きているところ
    元帥様のその懐よ
    人民の希望、強国の希望
    花咲く私の祖国よ

    間奏、何かの曲がアレンジされているようにも聞こえるが、「羨むものはない」であろうか。

    3.
    恩恵深い太陽の光、燦爛とした星の輝き
    万年代々、眩しい野山
    世の中にない誇りを抱き
    蒼々とした未来へ向かう
    偉大であれ、我々が生きているところ
    元帥様のその懐よ
    人民の希望、繁栄の希望
    限りない私の祖国よ
    限りない私の祖国よ

    曲調は、ロシア曲のように聞こえる。その理由は音楽的に説明できるのだろうが、私の能力では無理なので、どなたかがコメントで教えていただければ幸いである。基本的には「元帥様」称賛ソングであるが、「元帥様しかしらない」といった「締め付け型」の歌詞ではなく、「希望型」あるいは「感謝型」の歌詞になっている。

    「恩恵深い太陽の光、燦爛とした星の輝き」、背景にはお爺さんとお父さんの遺体が安置されている錦繍山太陽宮殿
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    Source: KCTV, 2013/12/14放送

    「偉大であれ、我々が生きているところ」
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    Source: KCTV, 2013/12/14放送

    それにしても、「新しい歌」がたくさん出てくるものだ。張成沢事件も含めて、金正日2回忌を何かの節目にしようと考えているのかもしれない。ただ、その「何か」が未だに見えてこない。

    「<論説>朝鮮労働党は一心団結の威力で前進する不敗の革命的党である」:政治局拡大会議と張成沢粛清と事後処理に関する論説 (2013年12月13日 「労働新聞」)

    昨日の『労働新聞』に張成沢判決に関する記事が出て、それを拙ブログ上に全訳した。全訳した理由は、張成沢が死刑になったという事実以上のメッセージが同記事には込められているのではないかと考えたからだ。張成沢死刑判決に関する拙ブログの記事に対して、貴重なコメントを頂いている。実は、コメントいただいたような内容について、当該記事に書き込みたかったのであるが、予想外に翻訳に時間がかかってしまったので、中断してしまった。そうしたら、私が書きたかったようなコメントを先に頂くことになり、拙ブログをご覧頂いている方の北朝鮮に関する知見と知的好奇心の高さに感銘を受けた。コメントを頂いた方々には、敬意を表し、感謝申し上げる。

    同日の『労働新聞』に表題のような「論説」記事が掲載された。内容的には、張成沢事件を総括し、その事後処理に関する指針を提示しているように思われる。ここでは、張成沢死刑判決文とこの「論説」を合わせて、北朝鮮が何を考えているのかについて一考してみたい。

    『労働新聞』、「조선로동당은 일심단결의 위력으로 전진하는 불패의 혁명적당이다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-13-0001&chAction=T

    「論説」では冒頭で「張成沢一味の反党反革命的宗派行為において最も危険なことは、我々の軍隊と人民の生命であり血液である党の唯一的領導体系を去勢し、我々の一心団結を破壊しようとしたことである」と「張成沢一味」の犯罪行為を総括している。やはり、体制内部、しかも「革命の首脳部」の「一心団結」を乱すような者が出たことに対して強い警戒心を示し、さらに、後でも見るように、そうした動きに対する追従者が出ないような締め付けを図っているのであろう。

    論説は「1」と「2」の二つのセクションに分けられている。「1」は冒頭で「革命はすなわち団結であり、一心団結は我々の党の革命哲学である」とした上で、「宗派」についての解説をしている。

    「宗派とは、特別なものではない。首領の思想と党の方針を擁護貫徹せず、それに反する行動をしながら、仲間同士で結託し、漸次地盤を固め、堡塁が築けたら、党に露骨に挑戦するのが、まさに宗派である。首領の唯一的領導を拒否し、党と革命隊伍を分裂破壊しようと奔走する宗派分子共は、歴史の反動であり革命の敵であり、人民の敵である。」

    「宗派とは、特別のものではない」と述べているように、それが決して今回のような大物から出てくるだけではなく、誰もがなり得るとしている。そして「仲間同士で結託」することがその第一歩だとしていることから、朝鮮人民が集まることにより厳しい監視と統制が課されることが予想される。

    次に「宗派」との過去の闘争を次のように紹介している。

    「我が党の歴史には、党中央委員会第5回全員会議と1956年8月全員会議、1958年3月にあった朝鮮労働党第1回代表者会をはじめとした党の統一団結強化における重要な意義を持つ会議が記録されている。偉大な首領様は、戦火の日々、スパイ宗派一味を見つけ出し決定的な打撃を加えられ、戦後には反党的、反国家的な陰謀を巡らした宗派連合集団を清算され、宗派汚物を完全に掃討された。偉大な将軍様は、我が党を金日成主義を指導的指針とする首領の党へ強化発展させ、党内の思想と領導の唯一性を確固たるものにされ、先軍の道で一心団結の威力を非常に高めた。」

    また、「将軍様」については、

    「首領様の思想体系と領導体系を揺るがそうとする些少な反動反革命的行為を、決して許さなかった方が我々の将軍様である。」としている。

    これは、過去記事にも書いたとおり、お爺さんとお父さんがやった権力闘争をついに金正恩も行い、見事に撃破したと主張し、一方で「宗派」を発生させた「党中央(=金正恩)」に対する責任は不問とし、むしろそれを「粛清懲罰」したことを評価しているのではないだろうか。

    その背景として「領導者に対する忠実性は、党の統一団結の基本核である。如何なる強要や義務感によって盲目的に、実務的に成される団合は、決して長続きしない。首領の偉大さに魅了され、首領を中心として頂くきれいな忠実性こそが、党を支える力強い精神的柱である」とし、「盲目的」ではなく「偉大さに魅了され」た「忠実性」がいつ必要であるという難しい課題を提示している。朝鮮人民の多くは「盲目的」「忠実性」を求められ、それにしたがっているのであろうが、「偉大さに魅了され」るというのは、お爺さんの世代であれば「2回の戦争を勝ち抜いた」という実績から可能であったとしても、「人民愛の記念碑的建造物」以外にはこれといった実績のない金正恩に対しては相当に厳しい話であろう(過去記事にも書いているとおり、彼の記念碑的建造物が金正日時代のそれよりも「人民愛」を具現しているとしてもである)。12月12日の『労働新聞』には、「銀河3-2号ロケット」発射成功を記念する記事が掲載されており、これを金正恩による「将軍様」の遺訓貫徹であると称賛していた。そうだとしても、ロケット発射と核実験だけではまだ「偉大さに魅了され」るには至らないのではないだろうか。

    興味深かったことは、過去記事で張成沢事件を前後して発表された「新しい歌3曲」がこの事件と関連することを臭わせる記述があったことだ。

    「『党旗よ永遠にあなたと共に』、『我々はあなたしか知らない』、『革命武力は元帥様の領導だけ受ける』、これが敬愛する金正恩同志の周囲に鉄桶のごとく団結した我々軍隊と人民の信念の声である。」

    これらの曲がどの段階から準備されていたのか、張成沢が「国家体育指導委員会委員長」として最後に公式の場に現れた日体大関係者との会見の時に既に作曲が命じられていたのかどうか。いわゆる「音楽政治」との関連で知りたいところである。

    「2」は、張成沢事件を金正恩の業績とする記述から始まる。

    「今回、我が党が宗派分子の策動を見抜き、断固として粛清したことは、党の唯一的領導体系を確立するための闘争における一大事変となる。」

    そして、言葉を換え金正恩への忠誠のあり方を

    「敬愛する元帥様の領導に従い進む我々の前途には、回り道もなく、後退する場所もない。例え、その道に険しい泥沼が広がり、地雷原が妨げても、我々はひたすら百戦百勝の先軍霊将であられる金正恩元帥様の領導だけを頂き力強く戦っていく。」

    と強調している。この中で「険しい泥沼が広がり、地雷原が妨げても」というような表現を使っているが、これが単に忠誠心の強調なのか、実際に経済や食料供給において「泥沼・地雷原」が予想されているのかは分からない。しかし、「張成沢一味」が「経済事業と人民生活向上に莫大な支障をもたらした」とこの「論説」でも繰り返していることから、今後そうした事態が予想されているのか、あるいは現在既にそのような事態が発生しており、人民の不満を「張成沢一味」の「せい」にしようとしているのではないだろうか。もちろん、それを排除したわけだから「元帥様」のお手柄にもなる。

    このことは、張成沢の言葉として判決文記事で引用された「「私は、軍隊と人民が、現在国の経済実態と人民生活が破局的(状態)になっているのに、現政権が何の対策も立てることができないという不満を抱かせるよう企てた」という言葉とも無関係ではない。実に分からないのは、この部分が続く「政変の対象がまさに『最高領導者同志だ』」という前段としては、具体的かつ強すぎるということだ。もちろん、文脈的には張成沢が自分の悪事を「最高領導者同志」になすりつけたということになるが、もし本当に「国の経済実態と人民生活が破局的」になっているのであれば、これを読んで朝鮮人民は文脈どおりに受け取るであろうか。それとも、「経済状態と人民生活が破局的」どころか向上しているのに、「愚かな張成沢め、何を戯言を」と朝鮮人民が考えるという自信があるのだろうか。

    「2」の終わりの部分では、事後処理に向けた記述がある。

    「今回粛清された反党反革命宗派共は、職権を乱用しながら権力拡大主義と官僚主義を用いて、不道徳・堕落、不正腐敗を常とし、徘徊した。人民大衆中心の社会主義の花園に生えてきた毒草のような権力拡大主義や官僚主義を刈り取るだけではなく、根こそぎ抜き取らなければならないというのが我が党の革命的原則である。」

    「まとめ」の部分に続く事後処理としては、とにかく「権力拡大主義や官僚主義」を徹底的に排除しようということを訴える。問題は、こうした「権力拡大主義や官僚主義」が党組織や単位(企業)の中に形成されただけではなく「人脈関係にある郡代幹部を利用したり、側近たちを集めて手中に掌握された武力で行おうとした。最近任命された軍隊幹部たちはよく分からなくても、以前に任命された軍隊幹部たちとは顔見知りだ。そして、これから人民と軍隊の生活がさらに悪化すれば、軍隊も政変に同調するのではないかと考えた。そして、私がいた部署の李リョンハ、張スギル(張秀吉)をはじめとした手下たちは、いくらでも私に従うと考え、人民保安機関を担当した人も私の側近として政変に利用しようとした。その他の何人かも私が利用できると思った」という張成沢の「自白」にもあるように、軍部にまで蔓延していることを隠さず出していることだ。これは、今後行われるであろう軍部も含む全ての部門に対する引き締めを予想されるものであると同時に、金正恩体制の脆弱性も示すものであろう。もちろん、上述の経済的「破局」と同様にそれを克服した自信から軍部における「不純勢力」の存在を公にしたのかもしれない。

    「まとめ」の部分では、

    「歴史的経験は、党と首領の信任と配慮を多く受けた人でも、自身をたゆまなく修養し鍛錬するための事業を行わなければ、自分も分からない間に変質して、挙げ句の果てには背信の道に転落させられてしまうということを物語っている。」

    と党幹部から末端の党員に至るまで、背信の可能性があるという警鐘を鳴らしている。

    そして、背信者と見なされないためには、

    「幹部たちは、たとえ10のことをしたくても、党が1だけやれというならば、ひたすら一つだけやることを心得ている実直な幹部、如何なる問題であれ、領導者の意図に合うか合わないかを適宜判別し、党の思想に反する時には、刃の上にも登り立つという原則的な闘争を展開することを心得ている堅決な革命家にならなければならない。」

    と「盲目的」ともいえるほど「実直」になることを幹部に求めている。

    続けて、これから行われる背信者摘出作業の基準ともなりそうな

    「反動反革命の道に陥る者であれば、党の上に自分を置こうとしない者はなく、党員大衆を尊重する者もいない。全ての党組織は、背信の一歩が党生活をするのを嫌がり、党員大衆を馬鹿にする小さな行いから始まるということを肝に銘じ、党生活組織と指導をさらに深めなければならない。」

    行動パターンの例を示している。「背信の一歩が党生活をするのを嫌がる」という辺りは、そうではないということを証明しなければならない朝鮮人民にとって辛い時間となろう。

    「千万軍民の煮え立つ憤怒の爆発。万古逆賊処断-天下の万古逆賊張成沢に対する朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部特別軍事裁判開催」:刑法60条により死刑、全文翻訳、北朝鮮の内情をよくぞ公表 (2013年12月13日 「労働新聞」)

    12月13日付けの「労働新聞」が張成沢の軍事裁判に関する記事を掲載し、「憲法第60条により死刑に処すという判決が下され」、「判決は即時執行された」と報じた。これまで、北朝鮮要人が粛正される際、軍事裁判の模様を写真付きで公開されてきたのかは分からないが、今回は非常に速い速度で「政治局拡大会議」→「特別軍事裁判」→「死刑判決」→「死刑執行」というプロセスを公表した。司法制度やその運用が民主的か否かという議論はさておき、一応、「特別軍事裁判」という「通常裁判」とは別枠での裁判ではあったものの、一連のプロセスを公開し形式的には「民主的に」行ったということになろう。「特別軍事裁判」という形を取ったのは、張成沢が「国防委員会副委員長」という職責にあったからであろうか。ただし、彼は「軍法」では裁かれておらず、一般の「刑法第60条」に依拠する判決が下されている点も興味深い。北朝鮮の「刑法第60条」は以下の通り。

    第3章 反国家および反民族犯罪
    第1節 反国家犯罪
    第60条(テロ罪)
    反国家目的で幹部や人民を殺人、拉致したり、彼らに傷害を加えたテロ行為を行った者は、5年以上の労働教化刑に処す。情状が特に重い場合は、無期労働教化刑あるいは死刑および財産没収刑に処す。

    北朝鮮刑法第59条は「国家転覆陰謀罪」で「反国家目的で政変、暴動、示威、襲撃に参加したり、陰謀に荷担した者は」という条項があり、どちらかというと「判決文」で糾弾された彼の罪状はこちらに近いような気がする。しかし、敢えて第60条を適用したのは、「張成沢ごとき」に「国家転覆」などできるはずもなく、せいぜい「テロリスト」程度だということを示したかったのであろうか。しかし、「判決文」で並べ立てられた罪状には「殺人、拉致、傷害」は含まれていなかった。参照している北朝鮮刑法は韓国・北韓情報センターが提供している2005年7月26日に改定されたものであるが、もしかするとこれ以降にさらなる改定が行われ、「国家転覆陰謀罪」が59条から60条に移動したのかもしれない。59条であれ60条であれ、最高刑は死刑である。また、財産も没収されることになっているが、張成沢と金敬姫が同世帯で暮らしていたとすると、その没収される財産の認定がどのように行われるのかも気になる。これについては、北朝鮮民法を確認する必要があろうが、現実的にはそれが厳密に適用されることはないだろうし、それ以上に金敬姫の今後の扱い次第で決まってくることであろう。

    判決文は長文であるが、非常に興味深い記述が多く含まれているので、全文訳出しておくことにする。なお、13日の「朝鮮中央TV」放送開始直後、この裁判に関する報道があったが、内容は「労働新聞」の記事と全く同一で、写真は提示されなかった。これまでも重要報道の第一報では写真を提示せず、準備が整った段階で写真を提示することをしてきたので、今日、複数回放送すると予告しているいずれかのタイミングで「労働新聞」に掲載された以外の写真を見せるかもしれない。その場合は、こちらで紹介することにする。
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    朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議に関する報道に接し、反党反革命宗派分子共に革命の峻厳な審判を下さなければならないという我々軍隊と人民の憤怒の叫びが国中を震撼させている中、天下の万古逆賊・張成沢に対する朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部特別軍事裁判が12月12日に行われた。

    特別軍事裁判は、現代版宗派の頭目として長期間にわたり不純勢力を糾合して分派を形成し、我々の党と国家の最高権力を簒奪する野望のもと、あらゆる謀略と卑劣な手法で国家転覆陰謀の極悪な犯罪を犯した被告張成沢の犯罪行為に対する審理が行われた。

    特別軍事裁判に起訴された張成沢の一切の犯行は、審理過程で100%立証され、被告はこれを全て認めた。

    公判では、朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部特別軍事裁判所判決文が読み上げられた。

    判決文の一文一文は、反党反革命宗派分子であり、凶悪な政治的野心家、陰謀家である張成沢の頭の上に下された憎悪と激憤に満ちた我々軍隊と人民の峻厳な鉄槌でもある。

    被告張成沢は、我々の党と国家の指導部と社会主義制度を転覆する目的の下、反党反革命宗派行為を行い、祖国に反逆した天下の万古逆賊である。

    張成沢は、早い時期から、偉大な首領金日成同志と偉大な領導者金正日同志の高い政治的信任により、党と国家の責任的な職位に登用され、偉大な大元帥様たちの恩恵を誰よりも多く受けていた。

    張成沢は、敬愛する金正恩同志から以前よりもさらに高い職務と大きな信任を受けた。

    張成沢が白頭山絶世偉人たちから受けた政治的信任と恩恵は、あまりにも過分なものであった。

    信用には義理で応じ、恩恵には忠誠で返すのが人間の初歩的な道理だ。

    しかし、犬にも満たない醜悪な人間のクズ張成沢は、党と首領から受けた天のような信任と熱い肉親的愛に配信し、天人共に怒る反逆行為を行った。

    奴は、久しい前から汚い政治的野心を持っていたが、偉大な首領様と将軍様が生存しておられるときは、頭を上げることもできず、目の色を伺いながら同床異夢、外では指示するふりをしながら内では反対のことを考え、革命の代が変わる歴史的転換の時期に来て、とうとう時が来たと考え、本性を現しだした。

    張成沢は、全党、全軍、全民の一致した念願と意思により、敬愛する金正恩同志を偉大な将軍様の唯一の後継者として高く推戴することに関する重大な問題が討議される時期に、内心反対をし、領導の継承問題を陰に陽に妨害するという永遠に許されない大逆罪を行った。

    奴は、自分の巧妙な策動が通じなくなると、歴史的な朝鮮労働党第3回代表者会で全党員と人民軍将兵、人民の総意により敬愛する金正恩同志を朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長に高く頂いたという決定が宣布され、場内全体が熱狂的な歓喜で煮えたぎっているとき、嫌々席から立ちあがり、適当に拍手をしながら傲慢不遜に行動し、我が軍隊と人民に激しく憤怒させた。

    奴はその時、自分も気づかぬままそのように行動したことが、敬愛する金正恩同志の軍領導地盤と領軍体制が強固になると、その後、奴が党と国家の権力を奪取することにおいて大きな障害となると考えたからだと自ら認めた。

    張成沢は、その後、偉大な将軍様があまりにも突然、あまりにも早く、あまりにも悲しく我々の元を去られると、すぐに前から抱いていた政権野望を実現するために本格的に策動し始めた。

    張成沢は、敬愛する元帥様の近くでお仕えし、現地指導にもしばしば随行するようになったことを悪用し、奴がいつも元帥様の近くにおり、革命の首脳部と肩を並べているという特別な存在であることを対内外に見せつけ、奴に対する幻想を作ろうと画策した。

    張成沢は、奴が党と国家指導部を転覆させることに協力する反動共を糾合するために、偉大な将軍様のお言葉に逆らい、奴に懐柔する追従し、手痛い打撃を受けて職位を失い、解任された者をはじめとした不純異色分子共を巧妙な方法で党中央委員会の部署と傘下機関に引き込んだ。

    張成沢は、青年事業部門において、敵に買収され変節した者たち、配信者たちと仲間になり、我が国の青年運動に重大な害毒をもたらしただけではなく、彼らが党の断固たる措置により摘発粛正された以後も、その残党共を継続して引き連れながら党と国家の重要職責に押し込んだ。

    奴は、1980年代からゴマスリ軍人李リョンハ(李竜河)野郎を奴が他の職務に移動するたびに引き連れていき、党の唯一領導を拒否するという宗派的行動を行い追い出された者を体系的に党中央委員会第1副部長の席に引き上げ、奴の手下にした。

    *李竜河については、「朝鮮日報」の次の記事が参考になる。拙ブログでも紹介した「ハマナス食堂」も事件に関わっている点が興味深い。
    『朝鮮日報』、「北序列2位失脚:軍部物資握る「54局」が粛清の導火線?」、http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/12/2013121200727.html

    張成沢は、党の唯一領導を拒否する重大事件を発生させ追い出された側近共とゴマスリ共を巧妙な方法で数年間に奴がいる部署と傘下単位に引き入れ、前科者、経歴に問題がある者、不平不満を持った者を体系的に自分の周囲に糾合した上で、その上に神聖不可侵な存在として君臨した。

    奴は、部署と傘下段位の機構を大々的に利用しながら、国家の全般事業を奪い取り、省、中央機関に深く手を伸ばそうと策動し、奴がいた部署を誰も手を付けることができない「小大国」にした。

    奴は、恐れ多くも大同江タイル工場に偉大な大元帥様のモザイク映像作品と現地指導史跡碑を建設する事業を妨害しただけではなく、敬愛する元帥様が朝鮮人民軍内務軍軍部隊に送ってくださった親筆書簡を天然花崗岩に刻み、部隊の指揮部庁舎の前に丁重にお供えしようという招聘の一致した意見を黙殺しただけにとどまらず、日が当たらない片隅に建てさせるという妄動を行った。

    張成沢がこれまで、我が党の組織的意思である党の路線と政策に体系的に反対する反動的行為を行ったのは、奴が党で決定した問題も、党の方針もひっくり返すことができる特殊な存在のように見られるようにし、奴に対する極度の幻像と偶像化を作り出そうという故意的で不純な企ての発露であった。

    張成沢は、奴に対する幻像を作り出すために、党と首領に対する我々軍隊と人民の清らかな忠誠と熱い至誠が刻み込まれている物資までも、中途で盗み出して手下共に分けてやり、奴の手柄とする恐れ多い悪事も働いた。

    張成沢が、奴に対する幻像と偶像化を作り出そうとひたすら策動した結果、奴がいた部署と傘下機関のゴマスリ分子、追従分子共は、張成沢を「1番同志」と持ち上げ、なんとかしてよく見てもらうために党の指示に反することをするにまで至った。

    張成沢は、部署と対象機関に党の方針よりも奴の言葉をもっと重視し受け入れるという異質な事業体系を打ち立てることで、手下共と追従者共が朝鮮人民軍最高司令官命令に服従しないという反革命的な行為を躊躇することなく行った。

    最高司令官の命令に服従しないのは、それが誰であれ革命の銃隊は絶対に容赦せず、そうした者共は死んでもこの地に埋める場所がない。

    張成沢は、党と国家の最高権力を奪い取るための第一段階として、内閣総理の席に座る浅はかな夢を見ながら、奴がいた部署が国家の重要経済部門を全てまとめ上げ、内閣を無力化されることで国家の経済と人民生活を収拾できない破局へと追いやろうと画策した。

    奴は、偉大な将軍様が最高人民会議第10期第1回会議で打ち立ててくださった新たな国家機構体系を無視し、内閣所属検閲監督機関を奴に所属させ、委員会、省、中央機関と道、市、郡級機関を組織したりなくしたりする問題、貿易及び外貨獲得単位と在外機構を組織する問題、生活費適用問題をはじめとした内閣が担っていた一切の機構事業と関連した全ての問題を手中に収め、思うままに牛耳ることで内閣が経済司令部としての機能と役割をすることを全然できなくした。

    奴は、国家建設監督機構と関連した問題を内閣と該当省と合意もせず、党に嘘の報告をしようとし、当該幹部が偉大な大元帥様が作成してくださった建設法に反するという正当な意見を提起すると、「それなら、建設法を直せばいいではないか」と妄言を吐いた。

    張成沢は、職権を悪用し、偉大な大元帥様が打ち立ててくださった首都建設と関連した事業体系をメチャクチャにし、数年間に建設建材基地を廃墟のようにし、狡猾な手段で首都建設単位の技術者、技能工隊列を弱め、重要建設単位を手下共に引き渡し、金儲けができるようにすることで平壌建設を故意的に妨害した。

    張成沢は、石炭を初めとした貴重な地下資源を片っ端から売り飛ばさせ、手下共が仲介人に騙されることで多くの借金を作らせ、去る5月、その借金を返すと言いながら羅先経済貿易地帯の土地を50年期限で外国に売り渡すという売国行為も躊躇なく行った。

    2009年、万古逆賊朴南基野郎を煽り、数千億ウォンの朝鮮通貨を乱発しながら、とてつもない経済的混乱を引き起こさせ、民心を揺るがそうと背後で操縦した張本人もまさに張成沢である。

    *朴南基については、以下が参考になる。『聯合ニュース』、「北・朴南基氏がデノミ失敗問責で銃殺、情報筋伝える」、http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2010/03/18/0300000000AJP20100318001500882.HTML

    張成沢は、政治的野望実現に必要な資金を確保するために、各種の名目で金儲けを奨励し、不正腐敗行為を日常的に行いながら、我々の社会を堕落させ、無規律的な毒素をまき散らすことの先頭に立った。

    1980年代、光復通り建設の時から貴金属をかき集めてきた張成沢は、手中に秘密機関を作るという、国家の法は眼中にもなく、銀行から高額の資金を引き出し、貴金属を買い集めることで国家の財政管理体系に大きな混乱を引き起こした反国家犯罪行為を行った。

    張成沢は、2009年から醜く汚い写真資料を手下共に流布され、資本主義の腐った風が我々内部に入り込むように先導し、行く場所毎に金をばらまきながら堕落した生活を送った。

    張成沢が2009年、1年間に奴の秘密資金倉庫から4600万ユーロを引き出し飲み潰した事実と、外国賭博場への出入りまでした事実一つだけとっても、奴がどれほど堕落、変質していたかがよく分かる。

    張成沢は、政権欲望に全く節操なく奔走しすぎたので、軍隊を動員して政変を成就させることができるという愚かな考えを持ち、人民軍隊にまで魔手を伸ばそうと執拗に策動した。

    張成沢は、審理過程で「私は、軍隊と人民が、現在国の経済実態と人民生活が破局的(状態)になっているのに、現政権が何の対策も立てることができないという不満を抱かせるよう企てた」と述べ、政変の対象がまさに「最高領導者同志だ」と万古逆賊の醜悪な腐心をそのまま吐いた。

    奴は、政変の手段と方法について「人脈関係にある郡代幹部を利用したり、側近たちを集めて手中に掌握された武力で行おうとした。最近任命された軍隊幹部たちはよく分からなくても、以前に任命された軍隊幹部たちとは顔見知りだ。そして、これから人民と軍隊の生活がさらに悪化すれば、軍隊も政変に同調するのではないかと考えた。そして、私がいた部署の李リョンハ、張スギル(張秀吉)をはじめとした手下たちは、いくらでも私に従うと考え、人民保安機関を担当した人も私の側近として政変に利用しようとした。その他の何人かも私が利用できると思った」と隠し立てすることなく話した。

    張秀吉については、以下。『毎日新聞』、「北朝鮮:張成沢氏、失脚か…金正恩氏の叔父 韓国発表」、http://mainichi.jp/select/news/20131204k0000m030040000c.html

    張成沢野郎は、政変を起こす時点と政変以後にはどのようにしようとしたのかについて「政変時期はきっちりと決まったものではない。しかし、一定の時期になり、経済が完全に低迷し、国家が崩壊直前に至れば、私がいた部署と全ての経済機関を内閣に集中させ、私が総理をしようとした。私が総理になった後は、今まで様々な名目で確保した莫大な資金で生活問題をある程度解決してやれば、人民と軍隊は私の万歳を叫び、政変は順調に成就するであろうと計算した」と吐いた。

    張成沢は、卑劣な方法で権力を奪取した後、外部世界に「改革家」として認識された奴の醜悪な為体を利用し、短い期間に「新政権」が外国の「認定」を受けることができると愚かに妄想した。

    全ての事実は、張成沢が米国と傀儡逆賊一味の「戦略忍耐」政策と「待つ戦略」に便乗し、我が共和国を内部から瓦解崩壊させ、党と軍隊の最高権力を掌握しようとし、以前から最も狡猾で陰湿で凶悪な手段と方法を全て動員し、悪辣に策動してきた天下に二人といない万古逆賊、売国奴ということをはっきりと見せている。

    張成沢の反動的、反国家的、反人的な罪悪は、共和国国家安全保衛部特別軍事裁判所の審理過程で、その憎むべきで醜悪な全貌が明らかにされた。

    時代と歴史は、党と革命の敵、人民の敵であり極悪な祖国反逆者である張成沢の歯ぎしりをしたくなるような罪状を永遠に記録し、絶対に忘れないであろう。

    年月が流れ、時代が何百回変わっても、変わることも変えることもできないのは、白頭の血統である。

    我が党と国家、郡代と人民は、ただ金日成、金正日、金正恩同志の他には誰も知らない。

    この空の下で、金正恩同志の唯一領導を拒否し、元帥様の絶対的権威に挑戦し、白頭の血統と一個人を対峙させる者は、我が軍隊と人民は絶対に容赦しないし、それが誰であれ、どこに隠れていても、殲滅して歴史の峻厳な審判台の上に立たせて、党と革命、祖国と人民の名で無慈悲に懲罰する。

    朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部特別軍事裁判所は、被告人張成沢が敵と思想的に同調し、我が共和国の人民主権転覆を目的に行った反国家転覆陰謀行為が共和国刑法第60条に該当する犯罪を構成することを確証し、凶悪な政治的野心家、陰謀家であり万古逆賊である張成沢を革命の名で、人民の名で、峻烈に断罪糾弾しつつ、共和国刑法第60条にしたがい、死刑に処すと判決した。

    判決は、即時執行された。

    特別軍事裁判所における裁判の様子
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    Source: 『労働新聞』

    裁判所に引き出される張成沢。軍人が頭を押さえている。
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    Source: 『労働新聞』

    『労働新聞』、「천만군민의 치솟는 분노의 폭발.만고역적 단호히 처단 천하의 만고역적 장성택에 대한 조선민주주의인민공화국 국가안전보위부 특별군사재판 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-13-0002&chAction=T

    全訳はかなり時間がかかった。記事ついてもっとコメントを書きたいが、一度ここで投稿しておく。

    翻訳しながら横目で「朝鮮中央TV」を見ているのだが、「錦繍山太陽宮殿」を建設した金正恩の功績を賞賛する新たな「記録映画」を流している。金日成・金正日銅像を参拝する場面もあるので、金敬姫が出てくるか確認できるかもしれない。追って、こちらの記事も書こうと思う。

    「<社説>敬愛する金正恩同志の周りに強固に団結し、主体革命の一途に力強く進んでいこう」:張成沢一味断罪、一心団結強調、連行と「死」、思想的引き締め (2013年12月11日 「労働新聞」)

    『労働新聞』に表題のような「社説」が掲載された。「社説」では「張成沢一味」の悪行を断罪し、「唯一的領導体制」を強調し、思想の緩みを正すことを求めている。関連部分を訳出しておく。

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은동지의 두리에 철통같이 뭉쳐 주체혁명의 한길로 억세게 나아가자」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-10-0001&chAction=T

    「張成沢一味」の悪行については、「今、米帝とその追従勢力、南朝鮮傀儡逆賊一味は、我々の一心団結を目に刺さった棘のように感じながら、それを破壊するたの手段と方法を選ばない。今回、摘発・粛清された反動・反革命宗派分子である張成沢一味は、敵対勢力の反共和国策動に便乗した万古の逆賊共である」と断罪しながら、彼らが「敵対勢力の反共和国策動に便乗した」と結果的に「敵対勢力」と共謀・協力した行為であったことを強調している。

    「唯一的領導体制」、一心団結については「革命偉業継承の重大な歴史的時期である今こそ、1956年8月の全員会議で半島・反革命宗派分子共を断固として粛清し、我々の党に偉大な首領様の唯一思想体系を打ち立てたその気風、1970年代に全党と全社会に偉大な将軍様の唯一的指導体制を徹底して確立した精神が、そのまま脈打たなければならない時だ」と1956年のいわゆる「8月宗派事件」と1970年代の金正日後継者決定の時期と重ね合わせながら、金正恩を中心とする「唯一的領導体制」が「そのまま脈打たなければならない時だ」としている。

    過去記事にも書いたように、これほどまでに「唯一的領導体制」を強調しているのは、金正恩の権力闘争における勝利を印象づけることと、「張成沢一味」の勢力拡大が「唯一的領導体制」を揺るがすほどの水準に至ったことにたいする警戒心からではないだろうか。

    また、「戦火の日々と戦後、宗派分子共が悪辣に策動したとき、我々は首領様だけを絶対的に信じて従うと首領様に切実にお話し申し上げた楽園の女党員とテソンお婆さん、偉大な将軍様だけに従えば必ずや良い暮らしができる日が来ると鉄石の信念を抱いて苦難の行軍、強行軍の試練を先頭に立って打ち破っていった慈江道の人民たちの崇高な精神世界が今、千万軍民の胸に溢れています」といった過去の逸話も紹介し、金正恩への忠誠を求めている。いずれも「苦しい時期」の逸話であるが、北朝鮮の現状況が朝鮮戦争中・戦後や「苦難の行軍」の時期のように厳しく、人民からの不満の声が高まっているからこうした逸話を使ったのかどうかは分からない。

    これらを前提に今回の中央委員会政治局拡大会議における金正恩の業績を「主体革命偉業に対する崇高な責任感と人民に対する熱火のような愛、鋼鉄の意志と精神力で重大措置を取られ、党と革命隊伍の組織思想的純潔性を徹底して保障し、我々の思想と偉業を輝かしく実現していけるような確固たる担保を築いてくださったことは、敬愛する元帥様だけがなされる巨大な業績となる」と称賛している。

    「張成沢一味」の「唯一的領導体制」に対して「挑戦」するなど、思想的な緩みが生じた者の末路について、「革命的信念が強い革命家は、私心がなく、功名を知らず、難関の前で動揺せず、大勢と趨勢に身を委ねることをしない。歴史的教訓は、信念が透徹していなければ、尊厳なる革命の道を最後まで歩むことができず、途中で宗派と反逆の道にであれ躊躇なく踏み込んでしまうということを示している。革命家において、革命的信念を失うということは、すなわち死である」であると、「革命家」のあるべき姿と、過去にも「宗派」が出現したこと、そして革命の道を踏み外すことは「死である」ことも強調している。文脈上は「革命家」としての精神・思想的な「死」を意味しているが、「張成沢一味」の肉体的な「死」にも繋がる表現である。「朝鮮中央TV」は、昨日、党・政府機関関係者に対して「中央委員会政治局拡大会議決定書」に関するインタビューを行った番組を放送したが、陸海運省副処長が「奴を連行する場面を見て下さい。同床異夢をする者、裏切り行為をする者の終末は、ああなるしかないということが分かりますし、あんな奴らはこの地に、この地球上に生きる場所もないし、息をする場所もありません」と述べている。彼は、机の上に置かれたノートに書かれた発言原稿に時々視線を落としながら話をしているが、あの連行場面は朝鮮人民にとって「死」を象徴するものなのであろう。

    インタビューに答える陸海運省副処長
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    Source: KCTV, 2013/12/10放送

    思想の引き締めについては、「思想事業では、絶対に満足や譲歩があってはならない。思想事業に空白が生じれば、人々の頭が空になり、頭に空白が生じれば、全ての異色的な思想に浸透され、思想的に変質させられてしまう」、「責任的な地位で仕事をしているとしても、革命年月が長いとしても、思想が透徹して不変ということはない」と警告した上で、「党組織では、幹部に対する思想教養事業を緻密に展開し、党員が全ての面で大衆の鏡になり、先鋒闘士とならなければならない」と党幹部に対する思想引き締めを求めている。

    新しく出た歌3曲「私の祖国の野山に溢れる歌」、「我々はあなたしか知らない」、「革命武力は元帥様の領導だけを受ける」 (2013年12月9日、「朝鮮中央TV」)

    張成沢解職関連の記事にも書いた通り、解職報道があった9日の『労働新聞』には、「我々はあなたしか知らない」という歌が掲載されていた。このところ「朝鮮中央TV」をきちんと見ていないのだが、昨日『労働新聞』に掲載された歌の他に、10日(今日)掲載された「革命武力は元帥様の領導だけを受ける」、そして『労働新聞』には未だに掲載されていないようだが、12月4日に『労働新聞』に掲載された表題の歌、「私の祖国の野山に溢れる歌」を皮切りに3曲が相次いで出されたようだ。では、9日に「朝鮮中央TV」で放送された順に曲を紹介していく。

    「私の祖国の野山に溢れる歌」作詞:金ヒョンチャン、作曲:李ミョンナム、歌:声楽組、演奏:モランボン楽団
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    1.
    希望に満ちた私の国、祖国の野山に
    響き渡る元帥様の歌
    人民のために捧げられる愛がありがたくて
    心臓から歌う敬慕の歌
    歌、歌、敬慕の歌
    野山に満ちあふれる歌
    ああ、私たちの金正恩元帥様の歌

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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    2.
    家々の庭からこの地のはてまで
    限りない、元帥様の歌
    軍部隊を訪問され、職場を訪問されて行かれる道に
    その方のご無事を願う祝願の歌
    歌、歌、祝願の歌
    野山に満ちあふれる歌
    ああ、私たちの金正恩元帥様の歌

    「軍部隊を慰問され」の部分で映し出される映像であるが、四角い箱状のものは爆薬が仕掛けられた戦車止めかもしれない。韓国でも板門店に通じる道に形状は違うが爆薬が仕掛けられた戦車止めが何カ所も設置されている。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    3.
    天下の一番強国を建設してくださる
    元帥様を支えるただそれだけの思い
    私の国の千万福がその懐にあり
    一片丹心、忠誠を尽くす誓いの歌
    歌、歌、誓いの歌
    野山に満ちあふれる歌
    ああ、私たちの金正恩元帥様の歌
    金正恩元帥様の歌
    ああ・・・

    「天下の一番強国を建設してくださる」では、「銀河3-2号ロケット」を打ち上げた管制センターの様子が出る。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    エンディングは、指導者(金正恩)を象徴するやはり太陽で終わる。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    例によって、音楽的評価はコメントにお願いするとし、曲調は優しい感じである。歌詞からしても「元帥様」の「愛」や「温情」を表す歌なので、このような強調にしているのであろう。背景で使われる「元帥様」が出てくる映像もほとんど微笑みながら人民と接する映像である。今も傍らで放送中の「朝鮮中央TV」を見ているが、この曲からは「新しく出た曲」という紹介は外された。

    「我々はあなたしか知らない」作詞:チャ・ホングン、李チソン、作曲:金ウンリョン、ファン・ジンヨン、編曲:合同、合唱:功勲国家合唱団、指揮:チャン・ドンシク
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    1.
    この朝鮮を導いていく力(は)強力だ
    人民の運命を体一つに抱き
    我々が願う夢と理想
    全て花咲かせてくださる方
    偉大な金正恩同志
    我々はあなたしか知らない
    偉大な金正恩同志
    あなたに忠実であれ

    労働党舎
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    2.
    まぶしいその理想が我々の目標だ
    霊将の決心は人民の勝利
    その方が指し示すただ一途へ
    千万が暴風を打ち砕いて進む
    偉大な金正恩同志
    我々はあなたしか知らない
    偉大な金正恩同志
    あなたに忠実であれ

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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    間奏で「党中央を体で死守しよう」のアレンジが使われている。(「人民軍歌」に聞こえたが、複数の方からコメントを頂き、聞き直した。思い込みとは怖いもので、コメントでご指摘いただいたとおり、「党中央を体で死守しよう」の方であった。コメントを頂いた方々には、敬意を示し、感謝申し上げる。)

    3.
    天地がひっくり返っても逆風が吹いても
    我々の心臓にはあなただけある
    最後まで生死を共にして
    その領導だけを支えていこう
    偉大な金正恩同志
    我々はあなたしか知らない
    偉大な金正恩同志
    あなたに忠実であれ

    偉大な金正恩同志
    我々はあなたしか知らない(この部分は、曲から外して叫ぶように歌っている)
    偉大な金正恩同志
    あなたに忠実であれ
    ああ・・

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    Source: KCTV, 2013/12/09放送

    こちらは、功勲国家合唱団の歌であるが、冒頭で紹介した「私の祖国の野山に溢れる歌」と全く異なる元気のいい行進曲である。歌詞はひたすら金正恩に忠実であれという内容であるが、「我々はあなたしか知らない」というタイトルからして、金正日賞賛歌である「あなたがいなければ祖国はない」に繋がる。曲調や音階もそう思って聞くと何となく関連づけられているように聞こえるが、この辺りについてはコメントに任せたい。「全て咲かせてくださる方」、「千万が暴風を打ち砕いて進む」、「天地がひっくり返っても逆風が吹いても」なども「あなたがいなければ・・・」と意味的に類似している。

    今日の『労働新聞』に掲載された「革命武力は元帥様の領導だけを受ける」は、昨日流れなかったので、今日の放送から追って紹介することにする。

    それにしても、このタイミングで金正恩賞賛ソング3曲を連続で出してきたのはなぜだろうか(過去記事で紹介した12月4日の「私たちの元帥様」も含めれば4曲)。金正恩の温情(「私の祖国の野山に溢れる歌」)、人民大衆の金正恩支持(「我々はあなたしか知らない」)、そしてまだ紹介していないが朝鮮人民軍の金正恩擁護(「革命武力は元帥様の領導だけ受ける」)をセットで出してきたのは、「張成沢一味」も動きが金正恩体制にとって相当に危ういものであったので、3曲セットの歌を流布することで金正恩に対する忠誠心を高めようとしているのかもしれない。「銀河水楽団」がどうなったのかは依然として不明であるが、張成沢事件と無理矢理関連づけるなら、張成沢勢力が同楽団に浸透したということなのかもしれない。

    <追記>
    3曲目の「革命武力は元帥様の領導だけを受ける」を紹介しておく。
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    Source: KCTV, 2013/12/10放送

    作詞:チャ・ホング、李チソン、作曲:雪テソン、ハム・ヒョク、編曲:合同、合唱:功勲国家合唱団

    1.
    誰だ、白頭の大業を達成される方は
    その方は金正恩同志
    我々の最高司令官
    その方の愛は我々の愛
    その方の憎悪は我々の憎悪
    白頭の革命武力は元帥様だけに従う
    白頭の革命武力はその領導だけ受ける

    「その方は金正恩同志」
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    Source: KCTV, 2013/12/10放送

    「白頭の革命武力はその領導だけを受ける」
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    Source: KCTV, 2013/12/10放送

    2.
    信じる、死んでも離れることができない永世の懐を
    我々は金正恩同志
    その方と一つの心臓だ
    その方の情は我々の血と肉
    その方の信用は我々の命
    白頭の革命武力は元帥様だけに従う
    白頭の革命武力はその領導だけ受ける

    間奏。ここで金正日称賛ソングである「あなたがいなければ祖国もない」のアレンジが流れる。昨日紹介した「我々はあなたしか知らない」もそうであるが、相当に金正日を意識している。時期的に金正日の命日が近いから父親に対する忠誠心を強調し、彼とイメージを重複させようとしているのか、時期とは関係なくお爺さん(金日成)のイメージ踏襲路線からお父さん(金正日)のイメージ踏襲路線に切り替えたのか、もう少し様子を見なければ分からない。

    「信じる、死んでも離れることができない永世の懐を」という歌詞の背景で使われている映像も「あなたがいなければ祖国はない」の冒頭で使われた海と太陽という非常に類似した映像を意識的に使っているようである。「永世の懐」が金日成なのか金正日なのか、「誰だ、白頭の大業を達成する方は」に合わせて映し出される冒頭の映像では両名の「太陽旗(金日成、金正日の肖像画が描かれた赤旗)」が出てくるので、形式的には両名であるが、やはり金正日をより強く意識しているのではないだろうか。
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    Source: KCTV, 2013/12/10放送

    3.
    叫ぶ、変心を知らない革命の銃隊
    偉大な金正恩同志
    死守する赤い剣だ
    その方の決心は我々の目標
    その方の命令は我々の勝利
    白頭の革命武力は元帥様だけに従う
    白頭の革命武力はその領導だけ受ける
    その方の領導だけ受ける

    「白頭の革命武力は元帥様だけに従う」この軍人、なかなかのスターである。小型の人民軍海軍(多分)ボートから魚雷発射命令をするシーンであるが、北朝鮮が制作する勇ましい歌の背景や軍事関連の番組の映像としてしばしば使われる。劇映画の一シーンなのか軍事訓練の記録映画なのがのシーンなのかは不明であるが。
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    Source: KCTV, 2013/12/10放送

    この曲は、上記のとおり勇ましい曲であるはあるが、軍歌ではない。モランボンは演奏に参加していないが、ドラムやベースの使い方などはモランボン的で、特に3番の冒頭でベースを「ビョーン」という感じで挿入する部分などは功勲国家合唱団が今までに使わなかった手法ではないだろうか。「銀河水楽団」ならばできたのかもしれないが、「銀河水楽団」の一部メンバーを「モランボン楽団」にその奏法と共に合流させた可能性もありそうだ。

    歌詞であるが1番の「その方の憎悪は我々の憎悪」辺りも意味深そうだ。通常であれば「憎悪」の対象は「米帝」あるいは「南朝鮮傀儡一味」であるわけだが、この時期の「憎悪」は「張成沢一味」に集中しているはずである。また、3番の「叫ぶ、変心を知らない革命の銃隊」も「変心」を「張成沢一味」にかぶせ、彼らの反革命行為から革命の司令部(金正恩)を「決死擁護」することを謳わせているのであろう。ま、「張成沢一味」は「偶然分子」なので、「変心」したのではなく元々悪人であったという説明ではあるのだが。

    ともかく、12月上旬に連続して出されたこれらの曲は、決して今回の張成沢事件と無関係ではないことは明らかなようだ。

    「朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議に関する報道」:張成沢を激しく糾弾、政治的不正から女性問題、麻薬使用まで (2013年12月9日 「労働新聞」)

    今朝、「聯合通信」の誤報について記事を書いて出勤した。通勤途中の車中で、「張成沢が解任されたと朝鮮中央通信が報じた」というFMラジオのニュースを聞いた。職場に着き、若干時間があったので「朝鮮中央通信」を見たら、確かに「朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議に関する報道発表」という記事が掲載されていた。見て驚いたのは、かなり長文の記事であったからである。昨日書いた記事のように、張成沢は「記録映画」から削除されていたので何らかの異変があるものとは思っていたが、「解職」されたとしても昨年7月に解職された李英浩のように「健康問題」を理由に解職するものとばかり思っていたからである。ところが、記事は長文で、読んでみると張成沢の悪事が書き連ねてある。それも、政治思想問題や経済的不正という公職における問題だけではなく、女性問題や麻薬使用という個人的な問題に至るまで書き立てられている。これら詳細については後述するが、結果的に「張成沢を全ての職務から解任し、一切の称号を剥奪して我が党から出党(追放)、除名することについて党中央委員会政治局決定書が採択された」とのことである。では、以下で詳細を記しておく。

    開催日時:2103年12月8日
    参加者:金正恩、政治局委員、候補委員
    傍聴者:党中央委員会、道党委員会、武力機関の当該部門責任者

    事件概要:「党に潜んでいた偶然分子、異色分子が主体革命偉業継承の重大な歴史的時期に、党の唯一的領導を虚勢しようと、分派策動を自分の勢力を拡大し、大胆にも党に挑戦しようという危険千万な反動・反革命的宗派事件が発生」

    ・偶然分子:思想状態や階級的立場から見て、革命隊列の中に入ることができないにもかかわらず、偶然の機会を利用して正体を巧妙に隠して革命隊列の中に入り込んだ不純な分子(web「朝鮮語大辞典」)
    ・異色分子:(ある集団や組織、隊列の中で)政治思想的に反対の見解や立場を持つ不純分子(web「朝鮮語大辞典」)
    ・宗派:個人や分派の利益だけを目的とし、首領の唯一的領導を拒否して党と革命運動を分裂破壊する反動的で反革命的な集団や分派(web「朝鮮語大辞典」)

    対応:「党中央委員会政治局は、これと関連し、拡大会議を招集して張成沢の反党・反革命的宗派行為と関連した問題を討議し」、「張成沢が行った反動・反革命的宗派行為とその外毒性、反動性を一つ一つ暴露した」。

    張成沢の罪状:
    1.「党の統一団結を妨害し、党の唯一領導体系を打ち立てる事業を阻害」し、「強盛国家建設と人民生活向上のための闘争に莫大な害毒を浴びせた」。
    2.「上っ面では党と首領の頂くふりをしながら、裏では同床異夢、全く逆の宗派的行為を繰り返した」
    3.「党と国家の責任ある地位に登用されたが、人間の初歩的な道徳義理と良心さえ捨てて、偉大な首領様と将軍様を永遠に高く頂くための事業に反対し、様々な方面で妨害する背信行為を行った」。
    4.「自分に対する幻像作り出し、自分の周りに信念が希薄な者、ゴマスリ分子をかき集め、党内に分派を形成するために悪辣に策動した」。
    5.「政治的野心から過去に厳重な間違いを犯して処罰を受けた者を党中央委員会の部署と傘下単位の幹部隊列に押し込み、勢力を拡大し地盤固めをしようと画策した」。
    6.張成沢一味は「党の組織的意思である党の路線と政策を心より受け入れず、その執行を意識的にサボタージュし、歪曲して執行しながら、党の方針を公然とひっくり返したので、朝鮮人民軍最高司令官命令に服従しないという反革命的な行為を躊躇なく行った」。
    7.張成沢一味は「司法・検察、人民保安機関に対する党の指導を弱めることで、制度保衛、政策保衛、人民保衛事業に厳重な害毒的影響を与えた」。
    8.「敵対勢力の反共和国圧殺攻勢に投降し、階級闘争を放棄して人民民主主義独裁機能を麻痺させることを狙った反革命的、反人民的犯罪行為である」。
    9.「党が提示した内閣中心制、内閣責任制原則に違反し、国家の経済事業と人民生活向上に莫大な支障をもたらした」。
    10.張成沢一味は「巧妙な方法で国家の経済発展と人民生活向上において重要な役割を担う部門と単位を奪い取り、内閣をはじめとした経済指導機関が自らの役割をできなくさせた」。
    11.「国家財政管理体系を混乱に陥れ、国家の貴重な資源をただ同然で売り渡すという売国行為を行い、主体鉄と主体肥料、主体ビナロン工業を発展させることに対する偉大な首領様と父なる将軍様の偉勲を貫徹できなくさせた」。
    12.「資本主義生活様式が体に染みつき、不正腐敗行為を行い、浮華堕落した生活をした」。

    ・浮華:「男女間に非道徳的な肉体関係を持つこと」を遠回しに言う言葉(web「朝鮮語大辞典」)

    13.「権力を利用して不正腐敗行為を日常的に行い、多くの女性と不当な関係を持ち、高級食堂の裏部屋で酒を飲んで遊び、金を山分けにする行為を行った」。

    ・酒遊び(酒を飲んで遊ぶ):例文として「地主や資本家野郎が~」(web「朝鮮語大辞典」)
    ・食べよう騒ぎ(金を山分けにする行為):集まって山分けにする会(web「朝鮮語大辞典」)
    *「朝鮮中央通信」の日本語訳では「飲食三昧におぼれた」と訳されているが、もっと深い意味がありそうなので、敢えて訳を変えておいた。「党や政府の金を使って、飲み食いをした」ということなのかもしれない。

    14.「思想的に病んで、安逸になりだらけたので麻薬を使い、党の配慮で外国に病気治療に行っている間には、外貨をばらまきながら賭博場にまで足を運んだ」。

    15.彼らが「犯した犯罪行為は、想像を超越しており、我が党と革命に与えた害毒的後遺症は非常に大きい」。

    経緯:
    「党は、張成沢一味の反党・反革命的宗派行為について相当前から察知しており、注視しながら何回も警告や打撃を与えたが、(彼らが)応じることなく度数を超えたので、これ以上傍観できなくなり、張成沢を除去し、彼の一味を粛正することで、党内に新たに芽を出す危険千万な分派的行動に決定的な打撃を与えた」。

    結論:
    「張成沢を全ての職務から解職し、一切の称号を剥奪し、党から追放、除名する」
    「現代版宗派であり、我が党隊列に偶然に入り込んだ不純分子である張成沢一味が摘発、粛正されることで、我が党と革命隊伍はさらに純潔になり、我々の一心団結はさらに百倍にもなり、主体革命偉業は勝利の一途をさらに活力に満ちあふれ前進することとのなった」。

    『労働新聞』、「조선로동당 중앙위원회 정치국 확대회의에 관한 보도」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-12-09-0001&chAction=T

    今(17時頃)、「朝鮮中央TV」でこれに関する報道をしていた。読み上げられる原稿は同じであるが、同会議には張成沢も参席しており、決定が出された直後に軍人に連行される静止画を見せている。また、決定に反対をするのか1人で挙手をする人間も映し出されていたが、もしかすると張成沢なのかもしれない。(追って、録画で確認する<追記>挙手しているのは、別人であった)

    今朝「朝鮮中央通信」で報道された時点から、この報道は同時に日本語などの複数言語で配信されていた。拙記事では、敢えて朝鮮文参照し、かつ北朝鮮的用語・表現については「web朝鮮語大辞典」を参照した。上記のように、張成沢の「罪状」について、政治・思想、経済、生活態度に至るまで事細かに書き立てられているが、何点か興味深い点がある。

    まず、「事件概要」のところに書いたように、張成沢を「偶然分子」と呼んでいる点である。金正日、金正恩政権を通じて、彼に行為の職位を与えてきたわけなので、「偶然分子」とでも呼ばなければ事実上の指名権者である金正日、金正恩の責任が問われるからであろう。

    また、冒頭で「宗派」という言葉を使い、記事を締めくくる部分でも「現代版宗派」と張成沢事件をキャラクタライズしている。「宗派」について書棚にある本をざっと調べたら、「1952年12月、第5次党中央委員会全員会議で、金日成は党内の『宗派分子』を激しく批判した」(小此木政夫編著、『北朝鮮ハンドブック』、講談社、1997、p.149)という記述があった。「現代版宗派」とまで言い切っているのは、明らかに金日成のこの発言を意識したものであろう。また、和田春樹『北朝鮮現代史』(岩波文庫、2012)の関連部分にもざっと目を通してみたが、興味深いことに当時使われた用語が今回の事件の中でも多用されている。特に、「ソ連系の金烈前黄海道党委員長について権力を濫用して、女性30余名の『貞操を蹂躙した』」(p.81)などは、張成沢が「多くの女性と不当な関係を持ち」に繋がる点がある。

    ここから見えてくるのは、権力闘争をすることなく権力を継承した金正恩が、祖父世代の権力闘争を再現することで、自らの権威の正統性を確立しようとしているのではないかということである。

    問題となるのは、金敬姫の扱いである。張成沢の女性問題を非難しているので、それを問題視した金敬姫は「離婚していた」と無罪放免にするのかもしれない。しかし、北朝鮮では一族郎党粛正されるのが常だし、離婚したとしてもそれ以前の夫の不正行為を止めさせることができなかった労働党員としての妻の責任は重いであろう。そうでなくても、「家庭不和」を引き起こすのは一方で夫の責任でもあり、一方で妻の責任でもあるという考え方が、かつて紹介した北朝鮮映画の中にも盛り込まれていたはずである。

    では金敬姫はどうなるのか。もし、今回の張成沢解任を金正恩の権力正統化の一環と考えるのであれば、彼女の失脚もあり得る。気になるのは「海外に病気治療に行き、外貨をカジノでばらまいた」というようなことが書かれていることである。張成沢が海外に病気治療に行ったのかは確認できていないが、金敬姫はしばしば行っている。最近は、シンガポールで病気の治療を受けたことが確認されている。もし「海外に病気治療」が彼女のことであるならば、金敬姫も大罪人ということになる。このような点からすると、金正恩もお父さん(金正日)が行った「横枝(キョッカジ)切り」に出たのかもしれない。金ヨジョンを除けば、金敬姫は金正恩の保護者であるのと同時に、金正恩に口うるさいことを言える立場にある唯一の「白頭の血統」者である。このような状況下で、ある程度権力基盤を固めた金正恩が、この口うるさい叔母さんを切ろうとしたという推論は成り立つのではないだろうか。

    政治局員である金敬姫がこの会議に出席していたのかは、上に書いた「朝鮮中央TV」報道の写真をよく見れば分かるかもしれない。連行場面は張成沢だけだったので、金敬姫はその場にいなかったのか、いても無罪放免だったのか、この辺りは分からない。連行された張成沢がどういう運命をたどるのかは分からない。彼は血縁者ではないので、これだけの大罪を並び立てられているからには、死刑は免れないであろう。一方、金敬姫は罪人と認定されても、「死刑」にはされないであろう。どこかで隠遁生活を強いられるか、海外追放という形になるのではないだろうか。金正日も自分の兄弟たちを海外追放にしてきたわけだから、これだけ「悪事を重ねたのだから、金正日の妹でも」海外追放はやむを得ないと説得できるのかもしれない。もちろん、「追放」などという言葉は使うはずもなく、「病気療養」とでもして、北朝鮮が監視しやすい国の病院にでも「軟禁」することになるのであろう。

    今朝のweb『労働新聞』では、張成沢解任の記事と新しく出た金正恩賞賛歌がflashで入れ替わり立ち替わり表示されている。対国内的にwebのこうした効果を意識してそうしたのかどうかはさておき、同じタイミングで出してきたというのは明らかに意図的であろう。金正日の命日を前にこうした発表をしたのも、妹(金敬姫)が参拝する前に切っておこうという意図があったのかもしれない。

    「政治局拡大会議」に参席した金正恩。眼鏡を掛けている。彼が眼鏡を掛けている写真は、以前、執務室で書類に何か書き込んでいる写真だけである。今回、眼鏡を掛けて会議に出席しているのは、何を示しているのだろうか。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送(午後3時9分より)

    連行される張成沢。軍服を着た2名に立たされる。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送(午後3時9分より)

    両脇を抱えられて連行される張成沢。彼はこの会議で解職されるまでは政治局委員ということになるわけだが、事実上の被告人として連れてこられ、人民裁判に掛けられた形だ。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送(午後3時9分より)

    今後の動向を注視する必要がある。

    韓国「聯合通信」、張成沢関連記事で誤報 (2013年12月8日 「聯合通信」)

    いつもコメントを下さる方から貴重な情報を頂いた。コメントで返信する以上に興味深い内容なので、記事にしておくことにした。頂いたのは、韓国の「聯合通信」が「北、朝鮮中央通信ウェブサイト『張成沢記事』削除」という記事が「誤報である」というコメントであるが、確認してみたが、やはり誤報であった。

    『聯合通信』、「北 조선중앙통신 웹사이트도 '장성택 기사' 삭제」、http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2013/12/08/0200000000AKR20131208070400014.HTML?from=search

    過去記事「張成沢失脚考」を書いたときにも、そして昨日「記録映画から削除」を書いたときにも確認したのだが、「朝鮮中央通信」から削除された事実はない。実は、私もこれらの記事を書くときに誤認をしそうになったのだが、「張成沢」での検索では確かに記事は出てこない。しかし、彼の職責の一つである「国家体育指導委員会委員長」の「国家体育」をキーワードに検索すると彼が登場する写真や動画付きの記事がそのまま出てくる(準備されている全ての言語で)。

    「記録映画」からの張成沢削除は昨日の記事でも確認したとおりなので、何かが起きていることは間違いないが、韓国最大のしかも80年代には社会主義圏の記事を独占的に配信していた通信社としては情けない誤報である。

    情報を頂いた方に改めて感謝する。

    「国家体育」の朝鮮語「국가체육」での検索結果。4件の記事が出てくる。
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    「<朝鮮記録映画>偉大な同志(1)-先軍の道一途-」:削除された張成沢 (2013年12月7日 「朝鮮中央TV」)

    時事通信が「張氏、記録映画から削除=失脚を裏付けか―北朝鮮」という記事を配信した。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131207-00000102-jij-kr

    記事に書かれている10月8日(初回放送は10月7日)に放送された「<朝鮮記録映画>偉大な同志(1)-先軍の道一途-」と12月7日に放送された同名の「朝鮮記録映画」を見比べてみた。10月8日の放送分では張成沢が私が確認できただけで金正恩の背景で4カ所に写り込んでいた。しかし、昨日放送された同名の番組ではそれらの箇所に映っていた彼の姿が削除されている。以下では、最も分かりやすい「老兵のためにモランボン楽団を招いて開催した宴会」の場面を紹介しておく。

    ナレーションで「我々の首領様と将軍様を高く頂き戦った老兵たちの生き様を栄光の絶頂で輝かして下さる・・・」といっている部分の映像から張成沢が消えている。

    10月8日放送分
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    Source: KCTV, 2013/10/08放送

    12月7日放送分
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    Source: KCTV, 2013/12/07放送

    別のカメラで撮影した映像を使っているのか、タイミングをずらしただけなのかは分からないが、10月8日の放送分では、中央にモランボン楽団の舞台が、金正恩の右肩辺りに微笑む張成沢の膝から上が映っている。しかし、12月7日放送分では、モランボン楽団の舞台は左端にあり張成沢は消えている。この写真では崔龍海も見えないが、下の写真のように崔龍海はこのキャプションの少し前まで金正恩の右側に見られる。

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    Source: KCTV, 2013/12/07放送

    他のカットは比較しにくいので紹介しないが、張成沢が削除されたのは明らかである。海外向けの『労働新聞』サイトでは、相変わらず張成沢関連の多くの記事が写真入りで掲載されている(国内向けに別のurlがあるのかは不明)。

    いずれにせよ、このような面倒な作業を敢えて行った「朝鮮記録映画」を7日の「朝鮮中央TV」最初の番組として放送しているのは、何か含意があるのであろう。この日の放送は15時から始まっているが、朝鮮人民の視聴率がどの時間に高まるのかは分からない。「朝鮮記録映画」は最優先的に見るということになっているのであれば、放送開始直後に流す意味はある。

    この削除により張成沢に異変が起こった可能性は高まったが、彼のように要職をかねている人間であれば、必ずや「最高人民会議政令」などで解職報道があるはずである。

    「新しく出た歌、私たちの元帥様」:平凡な感じの曲、太陽を強調 (2013年12月4日 「朝鮮中央TV」)

    12月4日の「朝鮮中央TV」の開始直後、「新しい歌」が紹介された。曲はバイオリンの重奏から入るが、あまり新鮮味はないような気がする。例によって、音楽的評価は私にはできないので、どなたかにコメントでフォローしていただきたい。

    「私たちの元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「作詞:チャ・ホング、作曲:金ウンリョン、歌:チョン・スヒャン、リュ・ジンア、演奏:モランボン楽団」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「朝の扉を開かれ、お出かけになったその道」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「今は、どこにおられるのか」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「国中を守る足音(パルコルム・ソリ)」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「夢でも聞こえてきます」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「元帥様、私たちの元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「むせびながら呼び」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「いらっしゃる千万里の道」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「人民はついていきます」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    間奏、太陽を眺める人民。上の数枚の写真を見ても分かるように、この曲では徹底して「太陽」を見せている。「朝の扉を開かれて」などというのは実に名句で「早朝から現地指導に出かける元帥様」と「祖国の朝暘である元帥様」を上手く掛け合わせている。過去記事でも書いたとおり、北朝鮮の「太陽」はお爺さんの金日成であるが、金正恩さんを「太陽」に持ち上げることで、お爺さんに近づけることで格上げを狙っているのであろう。これまでの金正恩称賛ソングは、「勇敢な元帥様」と「慈悲深い元帥様」がテーマであったが、今回は本来はお爺さんを指す「人民の太陽」のようだ。
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「人民に喜びを抱かせて下さろうと」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「服を乾かすひまもなく」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「万福の星の世界を作って下さろうと」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「今夜も徹夜なさります」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「元帥様、私たちの元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「むせびながら呼び」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「いらっしゃる千万里の道」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「人民はついていきます」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    間奏。2番では「元帥様」がいかに人民に幸福をもたらそうと苦労しているかが強調されている。上のツツジの映像は「朝鮮中央TV」のインターミッション(番組間の繋ぎ)の部分でしばしば利用される。場所は何とか嶺(失念)というとても険しい峠ということなのだが、この峠を越えて軍部隊の現地視察に行くお父さんとお母さん(金正日と高英姫)も紹介されている。その中でお母さんとツツジの花にまつわる逸話が紹介されるのだが、ここで「服を乾かす暇もなく」という歌詞と共にツツジを大きく映しているのは、何か意味があるのかもしれない。まもなくお父さんの2回目の命日となるわけだが、そろそろお母さんを紹介してもよいのではないだろうか。

    家族が集まって何か書いているが、これは「元帥様」へのお礼の手紙である。間奏部分では、送られてきた手紙に対して金正恩さんが返信した「愛の親筆」が紹介される。
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    緑色の紙を持って喜ぶ朝鮮人民。この紙が何かは不明であるが、確か、「科学者住宅」への入居許可証がこの色であったので、それをもらって喜んでいる科学者なのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    そして、再び太陽
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「人民行き列車の汽笛の音を」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「限りなく鳴らしていかれ」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「今日も険しい道を歩まれる方」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「ご無事をお祈り申し上げます」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「元帥様、私たちの元帥様」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「むせびながら呼び」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「いらっしゃる千万里の道」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「人民はついていきます」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「いらっしゃる千万里の道」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    「人民はついていきます」
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    そして太陽で曲は終わる。
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    Source: KCTV, 2013/12/04放送

    張成沢失脚説考 (2013年12月5日)

    「新しく出た歌」の記事の中に書き込んでいたのだが、書いていたら長くなってしまったので、別記事として立てておくことにする。書き出しは、「新しく出た歌」番組の背景に「ツツジ」が映ったという話の続きとなっている。以下が切り出した部分である。

    まもなくお父さんの2回目の命日となるわけだが、そろそろお母さんを紹介してもよいのではないだろうか。

    張成沢失脚説が伝えられているが、もし本当に彼が失脚したのであれば、金正恩、金敬姫、張成沢間でお母さん紹介を巡り意見対立があったのではなかろうか。ファミリー・マターなので、話し合うとすればこの3人であろう。書いたついでにもう少し張成沢失脚説について述べれば、現時点で私は懐疑的である。まず、崔龍海との権力闘争説については、2人はしっかりと棲み分けをしていたと私は見ている。一部報道では崔龍海をあたかも「軍部」であるかのごとく報じているが、彼は「軍部」どころか軍の経験がほとんどない「労働党」の人である。金正恩は「先軍政治」から「先党政治」へとシフトさせようとしているというのが私の見解であるが、党人・崔龍海を人民軍の「総政治局長」として送り込んだのはそれを象徴する動きではないだろうか。もちろん、この点については、ある著名な米国の北朝鮮研究者とのディスカッションで「軍部も労働党に人を送り、影響力を維持・拡大しようとしている」と指摘されたので、一筋縄ではいかないということなのかもしれない。

    話がそれたが、張成沢・崔龍海関係では、張成沢が「経済・外交(特に中国との関係)」を担当、崔龍海が「軍事」を担当と棲み分けしているはずである。もちろん、「経済」については「軍部」と軋轢が生じる部分が少なからずあり、崔龍海が軍部の権益を代表するように「変貌」したのであれば、対立が生じる可能性はある。この辺りが、金正恩の軍部掌握度と関係してくるところであろうが、「中隊政治指導員会議」を開催していることなどからして、依然として崔龍海は「労働党の人」であり、その系で「党中央(金正恩)」が彼を通じて軍部をしっかりと掌握しているのだと思う。だとすると、「経済」を巡り張成沢と対立する理由はあまりないことになる。

    また、張成沢は実に上手く自らのポジショニングをしている。失脚説報道では「北朝鮮のナンバー2」と書かれているが、特に今年に入ってから公開された情報を見ている限りでは、「ナンバー2」は張成沢ではなく崔龍海という「印象」がある。しかし、この「印象」こそが張成沢のポジショニングの結果であり、金敬姫の夫という揺るぎない立場を利用し、彼は「一歩引き下がる」ポジショニングをしているのではないだろうか。

    張成沢は、金正日時代に「韓国で爆弾酒を飲み過ぎた」ことを理由に失脚させられたことがある。本当の理由がそれかどうかは別とし、金敬姫の夫を失脚させることができたのは、金正日が彼女の兄であったからだ。しかし、金正恩はというと、公式の場では金正恩に拍手を送っている金敬姫であれ、ファミリーでの話となると怖い叔母さんなのであろう。その叔母さんを制したとなると、これは金正恩の権力強化と判断されることこそあれ、「体制崩壊」にはとても結びつかない。その叔母さんも納得するほどの失態を張成沢が演じたのかどうか、11月上旬に日体大関係者らを「こんにちは」と日本語で出迎えて「国家の尊厳を傷つけた」くらいのことしか思い当たらない(ま、彼は朴槿恵さんのように「国家元首」ではないわけなので、このカテゴリーには当てはまらないはずではあるが)。

    北朝鮮はこのところ、韓国内の反朴槿恵勢力の動きに対して積極的にエールを送っている。朴槿恵非難から反朴槿恵勢力支持に戦略をシフトしたわけであるが、確かに朴槿恵政権は政権発足1年目を前に苦境に立たされているのは事実である。このタイミングで韓国民の関心を外にそらすには「日本」を使うか「北朝鮮」を使うかということになるが、日本カードは現在出し切っている状況なので、「北朝鮮不安定」カードを出して国民の関心を外に向けるのと同時に、「不安感」を醸し出して「従北勢力」からの攻勢を弱めようとしているのかもしれない。張成沢失脚説に関して韓国政府関係者の発言にブレがあるのもこうしたことを示しているのではないだろうか。もう一つ興味深いことは、李英浩失脚の際には韓国政府が北朝鮮が明らかにするまでその前兆を全く予告しなかった(できなかった)にもかかわらず、今回はそれをしていることである。金敬姫が何回も「殺されている(危篤だの死亡説が流される)」ことからすれば、その夫もカードとしては相当に有効なのであろう。

    最終的に張成沢が失脚したか否かは、北朝鮮の公式報道を待たなければならない。少なくとも昨日の時点では、彼の名前や写真は「労働新聞」や「朝鮮中央通信」の過去記事としてそのまま残されている(現時点では「労働新聞」接続不可)。

    「さらに大衆化する海苔巻き」:全国トウモロコシうどん、海苔巻き競技 (2013年11月2日 「朝鮮中央通信」)

    拙ブログでもしばしば引用していた「Yahoo! ニュース」がとても使いづらくなった。過去記事はタイトルだけでどんどんリンクは削除されてしまうし、記事のリスティングも見にくくてかなわない。かつては、「北朝鮮」という項目をクリックしていくと、大対重要な記事を確認することができたのだが、スタイル変更でそれもできなくなった。できることなら、元に戻してもらいたいものである。

    そんなことを思いつつ、同ニュースサイトを見ていたら、韓国聯合ニュース発の「韓国風のり巻き 北朝鮮の有名店でも人気メニューへ」という記事があった。この記事、基本的には「朝鮮中央通信」の11月2日付け記事「さらに大衆化する海苔巻き」を引用しながら解説を付け加えたものである。韓国聯合ニュースは韓国語版で国内向けにもこの報道はしているはずだが、そちらは確認していない。しかし、日本語版では「韓国風のり巻き」としている。

    『韓国聯合ニュース』、「韓国風のり巻き 北朝鮮の有名店でも人気メニューへ」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131202-00000039-yonh-kr

    なぜ、この記事にこだわるのかというと、少し前に「朝鮮中央TV」の「20時報道」で、「全国トウモロコシうどん、海苔巻き決勝競技」という報道をしていたからである。「トウモロコシうどん」というのがおもしろくて記事にしようかとも思ったのであるが、それ以上書くこともないと思い記事にはしなかった。

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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    もちろん、「海苔巻き」についても「北朝鮮にもあるんだなぁ」という程度には思ったが、金正日さんや金正恩さんが「朝食も食べずに険しい道を越えて現地指導」に行く時に、「海苔巻き」ではないものの「おにぎり」を食べるという逸話がしばしば紹介されているので、「おにぎり」があるのならば「海苔巻き」もあるだろうという程度に思っていた。案の定というか、この報道では、「キム・パプ(海苔・ご飯=海苔巻き)を専門に奉仕(提供)する給養単位(食事提供施設)が」が参加している「決勝競技」の様子を紹介している。

    「全国トウモロコシうどん、海苔巻き決勝競技」競技は、「平壌麺屋」で開催された。
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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    海苔巻きの材料
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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    番組では、海苔巻きを中心に紹介しており、「トウモロコシうどん」については、下のような完成作品しか見せていない。「トウモロコシうどん」というものは、日本でも韓国でも食べたことがない。色はラーメンのような色をしているが、原料がトウモロコシなので普通のラーメンよりかなり黄色っぽい。朝鮮古来の食べ物というよりも、食糧難でカロリー供給源をトウモロコシに多く依存している北朝鮮ならではの「うどん」ではないかと思う。
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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    完成した海苔巻き
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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    味見をする審査員
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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    審査は「料理部門、科学、教育、研究機関の専門家が参加する専門家審査と平壌市内の給養奉仕単位の優秀な料理士が参加する群衆審査に分けて行う」という。

    海苔巻きの味見をする審査員
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    Source: KCTV, 2013/11/25放送

    上記の「おにぎり」も「海苔巻き」もその起源は全く調べていない。乱暴な推測だけでものを言うなら、両者とも日本の植民地時代に朝鮮半島に持ち込まれたものであろう。80年代半ばに韓国にいた頃、おにぎりはほとんど見なかったが、海苔巻きは露天商(だいたいは、お婆さん)が3本セット500ウォンぐらいで売っていた。見た目は日本の太巻きと似ているが、まず海苔がパリパリの海苔ではなく紙のような海苔であったし(しかしながら、ごま油が塗られていておいしかった)、ソーセージ(おそらく魚肉)がキュウリやタクワンと共に普通のご飯で(酢飯ではない)巻かれていた。おにぎりについては、80年代半ばにはほとんど見なかった。上に書いたように「将軍様」がその頃からおにぎりを食べていたとすると、植民地時代に朝鮮半島に持ち込まれたものの、韓国(南朝鮮)では消滅し、北朝鮮でのみ残ったのかもしれない。今年の夏に釜山で目撃したのだが、日本語の「おにぎり」をハングルに音訳しただけの看板を立てた「おにぎり屋」があった。こちらは、2000年以降に韓国に入り込んだ「おにぎり」だと思う。

    標記の「朝鮮中央通信」の記事では、「三面を海に囲まれている朝鮮で、海苔巻きは豊富な海洋資源を利用してきた歴史と共に大昔から人民に愛されてきた」と朝鮮古来の食べ物のように紹介している。

    『労働新聞』、「우리 식의 음식문화발전을 추동한 의의깊은 계기 전국강냉이국수,김밥경기과정을 놓고」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-11-24-0029&chAction=S
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「副部長同志」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

          dprknow

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