「我々の尊厳と体制、並進路線に挑戦する者は絶対に容赦しない-祖国平和統一委員会スポークスマン声明-」:対南軍事行動に出るのか (2014年4月27日 「朝鮮中央通信」)

    北朝鮮がオバマ訪韓と関連し、朴槿恵を強く非難している。内容については、追って翻訳を試みるとし、本「声明」とセットで28日に出された国防委員会スポークスマン声明「オバマの南朝鮮行脚と関連する我々の原則的立場表明」を読むと、西海5島地域再びヨンピョン島砲撃のような軍事行動に出る可能性が高いような気がする。

    というのも、『労働新聞』に26日付けで「敬愛する最高司令官金正恩同士が朝鮮人民軍第681軍部隊下の砲兵区分隊の砲射撃訓練を指導された」、さらに27日には「敬愛する最高司令官金正恩同士が朝鮮人民軍創建82周年に際し、西南海上の主要敵対象物打撃任務を与えられている長距離砲兵区分隊の砲射撃訓練を指導された」という記事が掲載され、連続して「砲兵」に対する指導を行っていることを紹介している。

    こうした活動と上記2つの「声明」を結びつけて考えると、「元帥様の直接的指導で無礼千万な朴槿恵に懲罰を与えるために南朝鮮の島を攻撃し、大勝利した」というパターンはありそうな気がする。「太陽説」や「建軍説」が終わった北朝鮮では、しばらくお祭りはないので、何かをしそうな気がしてならない。

    本来であれば核実験と行きたいところなのだろうが、それは温存しておき、対南朝鮮攻撃、しかも先月だったか西海5島地域で北朝鮮軍の砲弾が韓国海域に着弾し、韓国側が報復をしたことに対する北朝鮮からの報復もまだ行われていない。やられたらやり返す北朝鮮なので、かなり危険な状態ではないだろうか。

    もしかすると、黃炳瑞そ次帥に昇格させたのも、それと関係するのかもしれない。

    核・ロケットの発射成功させ、政敵の粛正を完了した金正恩が未だにやっていないのは、「南朝鮮との戦闘での勝利」だけである。「砲術の天才」で何かしそうでならない。

    「黃炳瑞同志に朝鮮人民軍次帥称号授与」:崔龍海今度は本当に失脚? 体調悪化? (2014年4月28日 「朝鮮中央通信」)

    崔龍海が最近登場していないのは気になっていたのだが、黃炳瑞元上将を大将を飛ばして次帥に昇格させたことを受け、いよいよ崔龍海が失脚か健康悪化で引退した可能性が高まった。

    <追記>
    4月30日、「朝鮮中央TV」で放送された「<録画報道>敬愛する金正恩同志が新たに建設された金正淑紡織工場労働者宿舎を視察された」の中で金正恩が「新たに建設された金正淑紡織工場労働者宿舎で5.1節慶祝労働者宴会を盛大に開催しようと仰りながら、人民軍総政治局長が宴会に参加し、自分の心も合わせて労働者を祝ってやれ」と語ったと伝えている。

    金正恩の上記「言葉」の場面で出た写真。一番左が黃炳瑞(のはず)。まだ、星3つの「上将」の階級章を付けているので4月26日に次帥昇格「政令」が出される以前の写真かもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/04/30放送

    金正恩がこの場で「人民軍総政治局長」に「祝ってやれ」と命令していることと、そのタイミングに合わせて上の写真が出されていることからすると、黃炳瑞が崔龍海に代わり「人民軍総政治局長」に就任した可能性は高い。

    現時点で、『労働新聞』や「朝鮮中央通信」は、黃炳瑞が次帥に昇格した以上のことは伝えていない。

    「<録画実況>敬愛する金正恩元帥様をお迎えし開催された朝鮮人民軍第1回飛行士大会参加者のためのモランボン楽団祝賀公演」 (2014年4月21日 「朝鮮中央TV」)

    既に公演が放送されてから時間が経ってしまい、何人かの方から貴重なコメントも頂いた。私も、コメントに対するお返事の中で大体言いたいことは書いてしまったが、念のために写真と共に紹介しておくことにする。

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    Source: KCTV, 2014/04/21

    まず、衣装だが歌手は空軍調の革ジャンにタイトスカート、ブーツを着用している。モランボンの軍服シリーズは過去にもあったが、空軍調のこのスタイルは初めてである。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    一方、演奏者の方はタイトスカートではなく、空軍女性飛行士が着用しているズボンを着用している。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    「寝ても覚めても首領様の思いです」では、モランボン楽団公演では初めて弦楽器の主要演奏者が歌を披露した。番組進行中は、これら演奏者の前にマイクが設置されていたので、一瞬、アコースティックの楽器を使用しているのかと思ったほどである。

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    Source: KCTV, 2014/04/21

    この展開にはかなり驚かされた。歌もなかなか上手い。消えていた期間は「粛清」ではなく、歌の訓練でも受けていたのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    「元帥様」の歌ではなく、「首領様」の歌を歌わせたのは、この歌が歌いやすいからなのか、それとも「思想的正統性」の原点回帰を狙ったのか。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    スタンドマイクなのに握っているのは、演出なのか。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    「白頭の馬蹄の音」は、両江道公演でも演奏されたが、その迫力が全く違う。手抜きをして、両江道公演に立ち返っての比較はしていないが、両江道ではベース、ドラム、エレキなどのソロはなかったような気がする。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    レーザーは、これまでのモランボン公演でも使用されていたが、観客席に向けて投射し、それを効果として使うのは今回が初めてではないだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    約1時間経過したところで、空軍関連の曲のメドレーが入る。この空軍歌メドレーはなかなかかっこよくて好きな部分である。「飛行士の歌」の曲調を変えた間奏部分ではソヌ・ヒャンヒが演奏における遊び心の表れか笑顔を見せている。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    「空の盾と我々がなる」の背景には、1969年4月に朝鮮人民軍空軍により撃墜された米海軍早期警戒機EC-121が映し出されている。この話は、「飛行士大会」でも披露されていた。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    この辺りまでは、お爺さんとお父さん中心の歌で責めてくるのだが、メドレー中の「私は永遠にあなたの息子」から時代をお爺さん、お父さん、そして金正恩へと進め始める。

    お爺さん
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    お父さん
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    お父さんと金正恩
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    そして金正恩単独
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    「白頭の血統」を予感させる演出である。

    続けて、「美しい飛行雲」という曲が入るが、ここで歌手が何とも幼いというかかわいらしい踊りを踊る。両手を水平に広げているのは飛行機を象徴しているのであろうが、大人の踊りとしては幼すぎる感じがする。北朝鮮らしくて微笑ましいとでも言うべきか。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    コメントにも書いたとおり、「新しく出た歌」として紹介されていなくても、金正恩の名前が入った歌が何曲か演奏されている。その1曲が次に歌われた「我々は出撃命令だけを待つ」では「金正恩飛行隊は、いつも出撃命令だけを待っている」と歌っている。また、この歌はマーチなのだがなかなか勇ましい内容で「飛んでいこう、南の地の空に」と歌っている。「南の地」はもちろん韓国である。そして、間奏部分に入ると、中央のスクリーンに金正恩の言葉が映し出される。ところが、アップされることなくカメラは会場へと切り替えられてしまう。

    金正恩の言葉が出てくる
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    しかし、会場に切り替えられ
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    そして最後の部分だけ再び出して「私の心はいつでも航空及び反航空軍の将兵と共にあります 金正恩」という部分が写る。「元帥様」の「お言葉」はもっと出しても良さそうなものだが、空軍向けの非公開の「お言葉」だったのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    そして、本公演で最も重要な部分と思われる「霊将の脈を流れてきた人民空軍の歴史 忘れられぬ日々」という回顧アルバムが出てくる。上で予想させた「白頭の血統」の始まりである。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    アルバムは白頭山の天池から始まり、若き頃のお爺さん、幼少時代の金正日などと進んでいく。その中で、特に注目すべき写真を何枚か紹介しておく。アルバムが大写しになる場面では、インストルメンタルが続くがピッコロのような音がしている。「パルコルム」のそれと同じような使い方をしているのだが、ピッコロはないのでキーボードで出しているのであろう。それとも、いずれかの奏者が楽器を持ち替えたのであろうか。

    戦闘機の操縦席をのぞき込む若き金日成(お爺さん)
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    幼少時代の金正日(お父さん)。お爺さんと一緒にいる大人のお父さんも出しているので順序が逆のような気もするのだが。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    青年になったお父さん。軍帽の着用の仕方がよろしくない。規律に欠け、腐敗した「帝国主義・資本主義」軍人のように見える。お茶目なだけなのかもしれないが。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    金正恩と金正日のツーショットや金正日の写真が何枚か続いた後で出てくるのが下の写真である。流れからして、金正恩の幼少時代の写真であろう。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    2枚目の金正恩と思われる写真であるが、合成写真のように見えてならない。というのは、軍服や軍帽の画質と顔面の画質が異なって見えるし、手の大きさや肩幅に比べて顔が大きすぎる。この場に相応しい幼少時代の写真がなかったのであろうか。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    次が操縦桿を握る後ろ姿である。少し年齢が上がったからかもしれないが、上の2枚と比べると、やせている。しかも頭の形も少し長細くなっており、天然パーマがかかっているように見える。操縦桿を握るという設定なので正面からの撮影は難しいかもしれないが、少なくとも横顔ぐらいはいけるのではないだろうか。この写真もそれらしい写真がなかったのでお兄さんの正哲で代用している気がしないでもない。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    一番右が金正哲。彼が後ろを向いたら上の写真に当てはまりそうだ。
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    Source: 『朝鮮日報』、김정철 3대세습 결정한「노동당 내부문서」、http://nk.chosun.com/news/articleView.html?idxno=78657

    軍服姿や操縦桿を握る金正恩の写真がなかったとすると、初めは当初言われていたように長男である金正哲を後継者として育成しており、金正恩は対象外だったのであろう。そのため、将来使うべき写真も撮影されなかったのではないだろうか。

    しかし、「白頭の血統」の正統性に対する揺らぎを打ち消すかのように、お爺さんと全く同じアングルの写真を登場させる。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    公演はクライマックスへと向かい金正恩称賛ソングが続く。「最高司令官同志の健康を願う」では、8名の歌手全員が登場する。例によって、歌手の顔と名前の確認はしていないが、過去記事で紹介した7名+1の構成となっているはずである。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    さらに、歌手は飛行編隊のようにV字型にステージの上に立ち並ぶ。当然、先頭が隊長なのだろうが、この辺りの立ち位置を確認していくと、歌手の序列が分かるはずである。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    曲が終わり、金正恩が観客と握手しながら立ち去る場面が出る。しかし、「飛行士大会」の「記録映画」とはことなり、李雪主が握手している様子はほとんど出ない。

    約1時間37分の長時間の公演であった。韓国・統一部のDBで調べると、本公演は4月21日と22日、20時半頃から2回だけ放映されたようである。

    「敬愛する最高司令官金正恩同志が呉仲洽7連隊称号を授与された朝鮮人民軍空軍及び反航空軍第188軍部隊の飛行訓練を指導された」:サングラスを掛けて金正恩と記念写真 (2014年2月22日 「朝鮮中央TV」)

    報道自体には目新しい点がないが、なぜか一人(英雄飛行士キル・ヨンジョの息子)の飛行士だけがサングラスを掛けて金正恩と話したり記念写真を撮っている。もしかすると、金正恩が持参したサングラスをその場でプレゼントされ、特別に着用が許されたのかもしれない。

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    Source: KCTV, 2014/4/22放送

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 최고사령관 김정은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 항공 및 반항공군 제188군부대의 비행훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-04-22-0005&chAction=L

    「敬愛する最高司令官金正恩同志の指導の下、朝鮮人民軍第1回飛行士大会盛大に開催」:初めての飛行士大会、無人機カラー、乱暴なシナリオ2つ、「光明星2号」打ち上げ警備で殉職? (2014年4月22日 「朝鮮中央TV」)

    22日夜はモランボン楽団の盛大な公演が開催された。過去記事に「追記」する形で見ながら気付いた点を少し書き込んでおいた。同公演の記事を書くために昨日の「朝鮮中央TV」を見直していたら、表題のような「朝鮮記録映画」が冒頭で放送された。韓国・統一部のサイトで確認すると21日に放送された同映画の再放送となっている。

    「第1回飛行士大会」ということなので、お爺さんやお父さんの時代には、こうした大会は開かれなかったということになる。しかし、同映画のアナウンスを聞いていると金正日が死去した年である「2011年12月16日、自身(金正恩)に最後に掛けてきた電話で話したことは、戦闘任務を立派に遂行した飛行士を平壌に招聘・鼓舞する問題であった」と金正恩が語ったとしている。続くアナウンスでも強調しているように、飛行士の平壌招聘も金正日の遺訓貫徹の一つということになる。

    それもあろうが、大会会場の色を見て直ぐに考えたのが、韓国に飛来した無人機の色である。北朝鮮は、「国防委員会検閲団」が無人機が北から飛来したという説を否定する「公開状」を出しており、それを紹介しようとした拙ブログの記事が書きかけになっている。しかし、韓国当局が公開した無人機の一部の写真と会場のカラーは実に類似している。色についても、「検閲団」は一般的な色と関与を否定しているが、確かに青空を象徴する色合いではあるものの、薄水色は実に無人機の色に近い。

    『労働新聞』、「무인기사건의 《북소행》설은 철두철미 《천안》호사건의 복사판 조선민주주의인민공화국 국방위원회 검열단 진상공개장」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-04-15-0016&chAction=L

    「第1回飛行士大会」会場
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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

    韓国・国防部が公開した無人機の写真
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    Source: 韓国・国防部HP、http://www.mnd.go.kr/cop/kookbang/kookbangIlboView.do?categoryCode=dema0138&boardSeq=4205&id=mnd_020106000000

    無人機の偵察ミッションからすれば、青空に溶け込むような色にペイントするのは当然ということになるのかもしれないが、それにしても似ている。

    金正恩は、開会の辞で「朝鮮半島の南側上空を帝国主義の銀バエ群れが覆っている険悪な状況の中で、祖国の領空を全て開放しても全国の飛行士を全て平壌に招聘し、大会を開催するということは、それ自体が我々の勇気と胆力の勝利」であると述べている。「祖国の領空を全て開放して」というのは誇張であろうが、敢えてこのような発言をしているのは、北朝鮮からの無人偵察機をみすみす青瓦台上空まで侵入させた韓国の防空能力の低さを揶揄するためなのかもしれない。

    『労働新聞』の「第1回飛行士大会」関連記事に掲載された金正恩の写真。動画中でも金正恩が笑っている場面が何回も映し出されるが、この種の大会で金正恩が笑っている(微笑んでいるではない)写真が『労働新聞』に掲載されるのも珍しい(初めて?)のではないだろうか。
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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 최고사령관 김정은동지의 지도밑에 조선인민군 제1차 비행사대회가 성대히 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-04-20-0001&chAction=L

    一連の流れからかなり乱暴なシナリオを組み立てると以下のようになる。、南北関係を対決モードに切り替え、朴槿恵を徹底的に攻撃する。韓国では「帝国主義の銀バエ」を大量に呼び込んで大々的な米韓合同演習をしているなか、国籍不明(実は北朝鮮)の無人機数機が堂々と韓国の軍事施設や青瓦台の上空を飛び回り写真を何百枚も撮影する。北朝鮮への帰還も可能であるが敢えて墜落させる。韓国軍は初めは無人機を「素人が趣味で遊ぶラジコン飛行機程度」と馬鹿にするが、その後、事件の重大さを認識し始める。それを待って北朝鮮は「検閲団公開状」を発表し、「天安号事件」と比較しながら関与を否定する。一方、無人機から回収された写真は韓国民衆を驚かせ、政権や軍部に対する批判が高まる(それが保守的な批判であれ、反保守的な批判であれば北朝鮮にとってはどうでもよい)。あわよくば、「5.24措置」解除も狙う。ついでに、無人機に搭載された日本製カメラやラジコン機エンジンを見せ、経済制裁の無力さも晒す。そして、仕上げに北朝鮮の上空を「開放」し、平壌で飛行士大会を開催し、金正恩が韓国の防空体制を嘲笑しながら、うれしそうに笑う。日本製一眼レフとラジコンエンジンなど、その他搭載されたGPS装置などを含めても、宣伝効果からすれば軍事作戦のコストの内に入らない。

    ついでに書いておくと、同系の脅しは北朝鮮の核実験場「豊渓里」での動きとも関連している。オバマの日韓歴訪に合わせて核実験をちらつかせる。ミサイルの発射準備をしたり、人民軍を前戦に移動させるかもしれない。米国は強い挑発を感じ、「戦略的忍耐」を続けることができなくなり、94年のような事態至る。もちろん、94年は西部前戦(ウクライナ)問題がなかったことは北朝鮮も認識しているので、「東部前線(朝鮮半島)も作るのか」という意味で米国に揺さぶりを掛ける。一度は、堪忍袋の緒が切れる米国も、西と東ではどうにもならないので、北朝鮮との対話に応じる。状況的には、ロシアも北朝鮮の側に立つ公算が高い。中国は核実験に対する警告はしつつも様子見をし、米国が対話に乗り出せば「六者会談」の議長役を買って出てそのプレゼンスを高めるであろう。これも乱暴なシナリオだが、考えられないこともない。

    大会では複数の討論者が演説をし、ベトナム戦争での北朝鮮空軍の活躍や金正日部隊視察時の逸話などを披露した。中江でも興味深かったのは、殉職した空軍兵士の妻、金ヘヨンの演説である。彼女は自分を「2009年4月、敵共が我々の平和的な人工地球衛星『光明星2号』を迎撃すると騒ぎ立てたとき、偉大な将軍様と敬愛する元帥様が下された戦闘命令を輝かしく貫徹した14人の決死隊員の内の1人であったチョン・チョルチュ飛行士の妻」と紹介している。「光明星2号」発射に際し、南北や米朝間で戦闘があったという話は聞いたことがない。金正恩も「命令を下した」と言われているものの、この話の意味がよく分からなかったようで、横に座っていた空軍幹部から当時の状況の説明を受けていたようだ。

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    Source :KCTV,2014/04/22放送

    ともかく、彼女の夫である飛行士は「戦闘任務中に犠牲となった」ということで、「将軍様」と「元帥様」が彼を「永世の丘に立たせて下さり、遺族は党が面倒を見るようにしてくれた」とナレーションは語っている。問題はこの「戦闘」が何かということだが、彼女の話では「敵共の迎撃機を破綻させるための戦闘」と言っている。実際に、韓国や米国との交戦はなかったので、「敵共の迎撃機を破綻させるための戦闘」に向かう途中で事故でも起こしたのであろうか。

    金正恩は、「戦闘任務中に犠牲となった」チョン・チョルチュ飛行士は「共和国英雄称号」を与え、残りの13人には「偉大な将軍様のお名前を刻んだ時計表彰」を授与するといっている。1名と残りの13名を分けていることからすると、やはりチョン飛行士だけ何かの理由で殉職したのであろう。

    表彰状と腕時計
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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

    チョン飛行士の未亡人に表彰状を手渡す金正恩
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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

    「記録映画」では、続けて金正恩が飛行士たちとモランボン公演を観覧する様子を短く伝えている。モランボン公演については、別記事にしようと思っているので、詳細は書かないが、この「記録映画」の中でいくつか気になった点だけを記述しておく。

    下の写真は、金正恩が別の観覧者と握手をしているとき、後方で李雪主が飛行士の未亡人(チョン飛行士ではない)と握手をしている。そしてその後も、しばらくの間、観覧者たちと握手を続ける。
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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

    これまで、李雪主はこのような場で個別に握手をせず、横で拍手をしていたように記憶しているのだがどうだっただろうか。握手の対象が女性なので気を許しているのだろうか。ファースト・レディーの格が高まったとまでは言うつもりはないが、少し気になった。

    <追記>
    既にコメントに対するお返事で書いたが、こちらにも追記しておく。2009年4月の「敵共の迎撃機を破綻させるための戦闘」であるが、2009年4月10日付けの『中央日報』(日本語版)のきじには「ミサイル発射を1日後に控えた今月4日、舞水端里のミサイル発射施設前にある東海(トンへ、日本海)上では「ミグ23」1機が墜落した」とある。

    『中央日報』、「北、戦闘機の墜落相次ぐ…金正日総書記が激怒(1)」、http://japanese.joins.com/article/849/113849.html?sectcode=&servcode=

    「金正日総書記が激怒」については、「事故が相次ぐと、金委員長が李炳鉄(リ・ビョンチョル)空軍司令官に“苦労して稼いだ外貨で購入した飛行機をすべて無くすつもりか”と激怒した、という情報がある」ということで、噂の範疇ではあるが、高価な軍用機を失うことは北朝鮮のみならず、どの国にとっても大きな損失であることは間違いない。

    建国以来、「空軍飛行士大会」が開催されたことはなかったので、ミグ墜落という不祥事と開催されなかったこととの直接的な関連はないにせよ、3軍の中では空軍が比較的軽視されてきたのであろう。思えば、抗日パルチザンは言うに及ばず、朝鮮戦争でも北朝鮮空軍はほとんど活躍しなかった。むしろ、「首領様」の「卓越した戦術」として、地上から陸軍が「米帝」の戦闘機を打ち落とす競争に力を入れていた。

    そうではあるが、ミグを墜落させたと思われる飛行士の未亡人を大会に招き、亡き飛行士に「共和国英雄」称号を与えるのには意味があろう。その系で、この未亡人の発言はとても面白い。「朝鮮記録映画」の中では、「討論者」の声と、それを要約するナレーションを混合して使用しているが、この未亡人については、他の討論者よりも肉声を流す部分が長くなっている。

    この未亡人の話の前半部分については、上記のとおりであるが、その後の部分について聞き直すと、未亡人が「戦闘任務に就いた夫に手紙を書いた」とナレーションが入っている。ちょうど、上の写真にある空軍幹部が金正恩に何かを説明している部分の映像が出た直後である。続いて未亡人の肉声が流れ「幼い子供のまん丸い目に恥じぬよう、立派なお父さんになってくださいとお願いしました」(前後関係からして、「将軍様」を死守せよという意味である)と手紙に書いたと言う。この時、金正恩は真剣なまなざしで討論者の方を見ながら、小さく頷いている。

    頷く金正恩
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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

    その次にナレーションが入り、「将軍様」と「最高司令官」が「永世の丘に立たせて下さり、遺族は党が面倒を見るようにしてくれた」と語っているのは上記のとおりである。「追記」を書く前はあまり意識しなかったのだが、『中央日報』の記事にあるように「将軍様」が「激怒した」のならば、「永世の丘に立たせ」るどころか懲罰の対象とした可能性が高い。また、「(金正日)将軍様と(金正恩)最高司令官」は同時に存在しないので、「将軍様」はAをして下さり、「最高司令官」はBをして下さったということになる。

    しかし、このナレーションの後で、再び流れる未亡人の肉声を聞いていると、主語が「敬愛する元帥様(金正恩)は」となっており、2009年に飛行士の妻たちが夫に書いた手紙を「保管しておられ、何回も熱く思い出して下さり、今年、4月15日には光明星2号発射時に敵共の迎撃機を破綻させるための戦闘に動員された14名の飛行士が作戦地域を発つ前に将軍様に差し上げた手紙と妻が夫に送った手紙は本当に涙を流すことなく見ることができない。その時に、英雄称号は与えなかったが、彼らは英雄として遜色なく戦ったと熱く語られた」と言っている。飛行士が「将軍様」に出した手紙を保管しているのは分かるが、妻が夫に出した手紙がなぜ彼の手元にあるのだろうか。

    やはり、ミグを墜落させた飛行士を「永世の丘に立たせ」たのは、「将軍様」ではなく現「最高司令官」であり、その意味で当時、金正日の判断で与えられなかった「英雄称号」を、金正日の判断を覆し(金正日が本当に「激怒」したのであれば、180度覆し)与えるということにしたのであろう。すると、金正日の決定を覆す「罪悪」を払拭するために「空軍幹部から説明を聞く」演出の意味も分かってくる。

    今回の「飛行士大会」は、何らかの理由でお爺さんもお父さんも開催しなかった「飛行士大会」を開催したことを金正恩の実績とし、さらに暗にお父さんの決定を覆すほど権力基盤が強化されたことを示し、一方で未亡人に「討論」をさせることで「恩情深い元帥様」を同時にアピールする場として利用したのであろう。

    未亡人は「今日、飛行士だけ参加する栄光の大会に13人の飛行士の家族と共に私も招待して下さいました。私は、亡くなった革命戦士たちに永世する命を抱かせて下さる敬愛する元帥様の懐があり、夫と共に戦った飛行士がいるので、今日のこの大会に夫も共に参加したと思っています」と「討論」のまとめの部分で語っている。

    ところで、この大会に展示された戦闘機であるが、空軍飛行士大会モランボン公演で展示された戦闘機とは機体に書かれた番号が異なっている。また、「革命史跡」としての価値を示す「見て下さった」事実が記されている赤い部分も、横に2つ並んでいる。モランボン公演の方は、書かれている内容が範読できたので、別途、モランボン公演の記事に書くが、こちらは内容が判読することができない。「金日成と金正日」なのか「金正日と金正恩」なのか分からないが、大会の流れからすると、後者ではないだろうか。

    「空軍飛行士大会」に展示された戦闘機
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    Source: KCTV, 2014/04/22放送

    「<録画実況>モランボン楽団、大紅湍郡文化会館で公演」:帰ってきたモランボン楽団、フルメンバーで再登場、抗日パルチザンの衣装、粛清の噂払拭、(追記)過去公演との比較 (2014年4月16日 「朝鮮中央TV」)

    何人かの方が、コメントでモランボン楽団公演が昨夜放送されたという情報を教えてくださった。残念ながら、昨夜は録画状態が悪く、その放送は見ることができなかった。uriminzokkiriにも「4月の春、親善芸術祝典」の方はアップロードされているが、モランボン公演はなかった。

    北朝鮮の「国防委員会検閲団」が発表した「無人機事件の『北の仕業』説は徹頭徹尾『天安』号事件のコピー版」なる長文の「公式報道」がなかなか面白かったので、それに関する記事を書きつつ、ミュートして昼頃から流れ出した「朝鮮中央TV」を見ていた。すると、3時頃から表記タイトルの番組の再放送が始まった。韓国・統一部のHPで昨夜の放送スケジュールを調べたところ、この番組は21時30分から22時37分にかけて放送されている。したがって、これは再放送ということになる。

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    Source: KCTV, 2014/04/16放送

    両江道におけるモランボン楽団の公演については、「20時報道」で使われた映像を使用しながら別記事で既に紹介したが、今回は「録画実況」ということでフルバージョンである。演奏された曲目は16曲で、大紅湍を訪れた金正日を歌う「大紅湍は暮らしやすい故郷です」や「大紅湍三千里」など少し古い曲から最新の「白頭の馬蹄の音」まで様々な曲が披露された。

    番組の冒頭で驚いたのは、曲名紹介の後に歌手の名前を紹介したことである。これまでのモランボン公演をくまなく調べてはいないが、曲名だけで歌手名は出さないケースが多かったと思う。最初に登場したのが、チョン・スヒャンである。

    背景にいるのはチョンではないが、この名前が出た後で
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    Source: KCTV, 2014/04/16放送

    チョンが登場して「希望に満ち溢れた我が祖国よ」を独唱する。
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    Source: KCTV, 2014/04/16放送

    モランボン楽団の歌手の顔が皆同じに見えてしまう私にとっては、名前を出してくれるのはとても有り難い。

    続けて、金ソルミが歌う「大紅湍は暮らしよい故郷」など6曲が入った後、7曲目で粛清説が出ていたらリュ・ジナがチョン・スヒャンと歌う「私たちの元帥様」が演奏された。

    「チャン・スヒャン リュ・ジナ」
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    Source: KCTV, 2014/04/16放送

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    Source: KCTV, 2014/04/16放送

    リュ・ジナは以前の写真と比べると、髪の毛をかなり短く刈り上げている。他のモランボンメンバーもショートであるが、リュほど刈り上げている人はいない。

    リュ・ジナの粛清説の出所がどこかと気になり調べてみたところ、どうやら米国政府の資金提供で運営されているRFA(Radio Free Asia)のようだ。

    RFA HP,「북, 연예인들 숙청 바람」、http://www.rfa.org/korean/in_focus/purge-02122014092316.html

    「北、芸能人たち粛清の嵐」というタイトルのこの記事(番組)では、北朝鮮を往来する「消息通」の言葉を引用しながら「張成沢の側近と分類された北朝鮮の芸能人40名あまりが、清津市『スソン教化所』に収監されたことが分かった。収監者の中には『モランボン楽団』の功勲俳優リュ・ジナと『朝鮮芸術映画撮影所』人民俳優李イクスンも含まれている」と伝えている。

    どうも張成沢処刑の印象が強すぎるのか、北朝鮮で「粛清」というとイコール「処刑」というふうに思われがちだが、処刑に至らずも収容所送りなるケースも多いはずである。

    上でリュ・ジナの髪型に拘ったのは、もしかすると本当に一度収監され、その後釈放された可能性を考えたからである。収監時に断髪されたので、あのような刈り上げスタイルになってしまったのではないかということであるが、単なるファッションということもあり、何ともいえない。しかし、他のメンバーよりも明らかに短いということは、やはり何かを暗示しているのではないかと思えてならない。

    リュ・ジナはその後、羅ユミと共に「輝け正日峰」を歌い、5名で歌う「人民の歓喜」、6名全員で歌う最後の2曲、「我々はあなたしか知らない」、「人民は一心団結」を歌っている。6人目の歌手が誰なのかは分からないが、他の歌手と比べると、リュ・ジナが歌う曲は放送された公演の中では少ない。これまでの公演とのクロスチェックはしていないが、今回特に少なくなっているとすれば、何らか懲罰的な意味合いが含まれている可能性はある。

    チョン:8曲、金:6曲、朴:6曲、羅:4曲、リュ:3曲

    ともあれ、歌手の名前のテロップを出した上で、クライマックスに向かって歌手を5人、6人と増やしていくところなど、この番組は、これまでさりげなく「20時報道」で見せてきたモランボン楽団の復活をはっきりと見せつけるところにも目的があったはずである。

    これは、「人間の屑である」脱北者情報や「消息筋」情報がいかに当てにならないものであるかということを証明し、さらに米国務省や国連人権委員会が「人権報告書」で北朝鮮の人権状況を非難していることに対し、「粛清」の噂や「強制収容所」への大量収監は事実ではないということを間接的に証明しようとしているのであろう。

    抗日パルチザンスタイルではあるが、金正恩が人民軍将兵と観覧したリーダーのソヌ・ヒャンヒやリュ・ジナ抜きの公演と比べるとモランボンらしさが戻ってきており、特にソヌ・ヒャンヒのバイオリン独奏曲「魅惑と敬慕」はとても素晴らしい演奏であった。また、インストルメントで紹介された新曲「白頭の馬蹄の音」もモランボンらしい楽曲である。

    <追記>
    何人かの方からコメントを頂いた。非常に重要なコメントだったので、記事の方に追記することでお返事と代えさせていただくことにした。

    まず、4月15日に放送されたモランボン公演であるが、上に書いたように16日の「大紅湍郡文化会館にて」ではなく「三池淵郡文化会館にて」であった。韓国・北韓情報センターHPを一応見たのだが、「モランボン」だけを見て勝手に再放送と決めつけていた。また、昨夜の「明日の放送順序」では、今日(17日)は「両江道芸術劇場公演」の放送が予定されているという情報も頂いた。

    YouTubeに15日に放送された「三池淵郡文化会館にて」がアップロードされているという情報を頂き、そちらもざっと見た。曲目や歌手は同じであるが、最後の曲「人民は一心団結」の曲目テロップが出ていない。単なる出し忘れであろう。

    大紅湍郡公演の最終曲「人民は一心団結」
    20140416kctvfflv_015478965.jpg
    Source: KCTV, 2014/04/16放送

    三池淵郡公演、上記と同じ曲の同じ部分のキャプチャー
    Moranbong Band Concert in Samjiyon County, North Korea [Aprimp4_003883700
    Source: KCTV, YouTube

    また、歌手名のテロップについても以前からあるというご指摘をいただき、これまでの公演の映像をいくつかピックアップして眺めてみた。

    例えば、2013年1月1日の講演では、下のように曲目の後に歌手名が書かれていた。
    20130101 moranbong
    Source: KCTV, 2013/01/01

    しかし、2013年10月10日の労働党創建68周年を記念して行われた公演の模様では、独唱の場合でも歌手名はテロップに出てこない。
    20131010 moranbong
    Source: KCTV, 2013/10/10

    歌手名をテロップに出すことに何か基準があるのかどうかは分からないが、やはり今回名前を出すことには粛清説払拭という意図があったのではないかと思う。上部の電光板に名前が出ることがあるのは気付いていたが、会場の聴衆向けであり、テレビ視聴者向けではなかった。

    もう一つ思ったことは、曲の編成である。最後の3曲を除いては、独唱であったり少数の歌手で歌う曲が続いている。全員(あるいは多数)登場する場合は名前を出さないという原則があるとすると、名前が出せる少数をまず登場させ、最後でフルメンバーを強調するために6人にしたという編成とも考えられる。

    名前の表示を確認するために過去公演の動画を見ていたら、2012年党創建記念日に際して行われた公演の中に参考になる映像があった。当時は、単なるメンバー紹介の演出だと流していたが、今回のような事態になるとこうしたメンバー紹介は有り難い。過去記事で問題にしたパンフレットは、基本的にこの演出と同じなのであろう。以下、画面に登場する順番に見ていくと、

    ソヌ・ヒャンヒ
    sonu.jpg
    Source: KCTV, 2012/10/10

    フン・スギョン、チャ・ヨンミ
    fung and cha
    Source: KCTV, 2012/10/10

    ユ・ウンギョン
    yu.jpg
    Source: KCTV, 2012/10/10

    金ヒャンスン、李フィギョン
    kim and lee
    Source: KCTV, 2012/10/10

    崔ギョンイル、金インミ
    che and kim
    Source: KCTV, 2012/10/10

    李ユンフィ
    lee yunhui
    Source: KCTV, 2012/10/10

    チャン・ソンフィ、李ソルラン (誤読の可能性あり)
    chang and lee
    Source: KCTV, 2012/10/10

    金ユギョン
    kim yugyong
    Source: KCTV, 2012/10/10

    金ソルミ、リュ・ジナ、朴ミギョン
    park ryu and lee
    Source: KCTV, 2012/10/10

    チョン・スヒャン、朴ソンヒャン、李ミョンフィ
    park chang and lee
    Source: KCTV, 2012/10/10

    モランボン楽団のフルメンバー
    moranbong full member
    Source: KCTV, 2012/10/10

    となる。

    2012年10月公演と「大紅湍公演」とを歌手について比較してみると、2012年10月の公演でトップで紹介された金ユギョンと朴ソンヒャン、李ミョンフィが今回はいない。それ以外の公演などとも比較したいのだが、私はモランボンの歌手の顔を見分けるのが実に苦手なので、名前のテロップが出ないと自信がない。そんな事情もあり、単純に今回の公演との比較になってしまうので、これまでの公演でも「声楽組」の中から歌手が入れ替わり立ち替わり出演していた可能性は十分にある。

    「白頭の馬蹄の音」については、モランボンとしては新曲であるというコメントも頂いた。「日本の朝鮮学校演奏会などでは『白頭山の馬のひづめ』と紹介」されていたとのことであるが、「白頭の馬蹄の音」は私が勝手に翻訳したもので、北朝鮮の公式日本語訳ではないので、公式には朝鮮学校が使っているものが正しいのかもしれない。

    <追記2>
    予告されていたモランボン恵山市公演がキャンセルされたという情報を頂いた。私も同公演を期待して帰宅後直ぐにストリーミングを見だしたのだが、ちょうど在米朝鮮人ピアニストとオーケストラが共演する「朝鮮は一つ」が始まり、モランボン公演を忘れてそちらにはまってしまった。コメントにも書いたので繰り返しになるが、ピアノとオーケストラが奏でる「朝鮮は一つ」は私にとってはとても思い出深い。

    「朝鮮は一つ」を演奏する在米朝鮮人ピアニスト
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    Source: KCTV, 2014/04/17放送

    インターネットがない時代、普通の人は北朝鮮の官営メディアは中・短波放送で接することしかできなかった。40年ぐらい前のことであろうか、トリオ(現Kenwood)の9R59Dという短波受信機で「朝鮮中央放送」を聞いていた。当時は、朝鮮語が分かるわけでもなく、聞いていたのは日本語放送である。そしたら、昨夜、「朝鮮中央TV」で放送された「第29回、4月の春、親善芸術祝典-第6公演」の冒頭で演奏されたのと同じ「朝鮮は一つ」が流れていた。子供ながらに「良い曲だなぁ」と思い、「偉大なキミルソン(ママ)主席への賛辞」と共にこの曲のレコードが欲しいと手紙を出してみた。我が家では『朝日新聞』を当時購読していたのだが、周知の通り、同新聞では朴正煕政権の韓国は「人権弾圧の嵐」であるという記事で溢れていた。一方で、「朝鮮中央放送」では、毎日「偉大なキミルソン同志」の話ばかりで、子供の私は、よく知らないが、「キミルソン」という人は偉い人で、「南朝鮮のパッチョンヒぎゃくと(ママ)」は相当の悪者だと信じていた。その気持ちを手紙に綴ったのが受けたのか、「朝鮮中央放送」からは「朝鮮は一つが収録されたレコードはありませんが、別のレコードを送ります」という手紙と共に、分厚いレコードと金日成著作集の1冊が送られてきた。その後、数年間は、年末になるとカレンダーも送ってきた。著作集は研究室の本棚にまだ置いてあるが、レコードは行方不明になってしまった。

    当時の状況を振り返ると、今日、朝鮮人民が指導者を本当に「偉大」であると信じている実態も理解できないわけではない。

    そんなこともあり、「朝鮮は一つ」に聞き入ってしまったわけである。話をモランボン楽団に戻すと、同じ曲でも歌手が入れ替わっているとのことである。上にも書いたように、私は「誰が歌うか」についてはほとんど無頓着に同楽団を見ていたので、そのようなことがあることすら知らなかった。コメントを下さった方が、この点についてクロスチェックをされるとのことなので、是非ともその結果をご教授いただきたいものである。

    ところで、なぜ昨夜はモランボン恵山公演をキャンセルし「親善芸術祝典」に切り替えたのであろうか。これまで、「放送順序」で予告された番組がキャンセルされ、別の番組に切り替えられる事例がどれほど発生しているのかは分からないが、同じようなモランボン楽団公演よりも「親善芸術祝典」の方がよいという判断だったのかもしれない。宣伝効果としても、国際的な金日成に対する「敬慕の情」やこうした音楽家を北朝鮮に呼ぶことができる金正恩の「国際性」をアピールすることができる。朝鮮人民にとっても、普段あまり触れることができない海外の楽曲を視聴する方が、連日同じモランボン楽団の曲を聞かされるよりも楽しいのかもしれない。

    もしかすると、恵山モランボン公演に心待ちにしていたのは、我々のような海外愛好家だけだったのかもしれない。

    <追記:放送中>
    李ミョンヒも登場し、弦楽器はこれまでにない軍服パンツルック。抗日パルチザンのスカートからパワーアップ。空軍の革ジャンも初めてですね。さらに、バイオリンなどがアコスティックになったのか?マイクで音を拾っているように見えます。と思ったら、バイオリン演奏者たちも歌い出しました。噴水の小道具も登場。スカートもパルチザンスタイルのプリーツと両方ですね。金正恩幼少時代の軍服写真、合成写真のよう。ボーカル8名、凄い迫力です。放送時間も1時間半を超えて、モランボン完全復帰+αか。

    「敬愛する金正恩同志を朝鮮民主主義人民共和国国防委員会第1委員長として高く推戴」:金正恩、スーツ写真2枚目の公開 (2014年4月10日 「労働新聞」)

    金正恩が予定どおり国防委員会第1委員長に推戴されたという速報は昨日書いた記事の「追記」に書いた。今朝、更新された『労働新聞』HPには彼のスーツ姿の写真が大きく1面に掲載された紙面が出ている。

    金正恩 スーツ 2014410
    Source:『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_01_01

    金正恩のスーツ姿公開はこれで2回目だと思うが、2012年4月12日の『労働新聞』3面に掲載された「朝鮮労働党最高順位へ高く推戴」2年前の写真と比較すると、顔が丸みを帯び、眉毛を短く剃っていることが分かる。また、刈り上げにしている部分も2012年当時はソリが入っていなかったが、今回公開された写真ではきちんと剃られている。

    金正恩 スーツ 2012412
    Source: 『労働新聞』、2012/04/12 3面

    紙面全体で占める写真のサイズを比較すると、今回掲載された写真の方が若干ではあるが大きい。

    2012年4月12日の『労働新聞』紙面(3面)
    20120412 紙面 金正恩
    Source: 『労働新聞』、2012/04/12 3面

    2014年4月10日の『労働新聞』紙面(1面)
    20140410 金正恩 紙面
    Source:『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_01_01

    なお、2012年4月12日の『労働新聞』1面には「偉大な領導者金正日同志を朝鮮労働党総秘書として永遠に高く頂く」という記事が掲載されている。

    20120412 労働新聞 1面
    Source: 『労働新聞』、2012/04/12 1面

    3面から1面へ、そして若干ではあるが写真のサイズが大きくなったということは、金正恩の権力基盤が固まってきたということを象徴しているのであろうか。やはり「将軍様と全く同じ」金正恩ではなく、「白頭の血統」を受け継ぎつつも、お父さんとは違う金正恩時代を訴えたいのかもしれない。

    「敬愛する最高司令官金正恩同志が白頭山地区革命戦跡地踏査行軍に参加した朝鮮人民軍連合部隊の指揮官に会い鼓舞激励された」:北朝鮮の「政府専用機」、金正恩自身が米国を激しく非難、最近の朴槿恵攻撃モード (2014年4月2日 「労働新聞」)

    4月2日付けの『労働新聞』は金正恩が三池淵を訪問したことに関して標記記事で伝えている。

    同記事の関心事はやはり金正恩が飛行機で三池淵空港に降り立ったことであろう。これまで、金正恩の移動手段として北朝鮮報道中で見られたのは自動車と小型船であった。お父さん金正日は専用列車をよく使ったが、金正恩に関しては列車での移動らしき映像はこれまでない。飛行機については、韓国メディアなどが小型機を使っての移動説を展開してはいたが、北朝鮮報道ではそれらしき映像は出てこなかった。三池淵訪問で飛行機を使ったという文言は報道の中には見られないが、彼がタラップを下りる姿を『労働新聞』HPで紹介したり、「朝鮮中央TV」の「録画報道」で彼が乗った飛行機が離着陸する場面を紹介している。自動車での訪問でも到着から帰路への出発まで紹介することが多いが、今回の飛行機での訪問についても到着から帰路への出発までをカバーしている。

    三池淵空港に到着したキムジョンウンを乗せた飛行機
    20140402 kimju bektusan by airplaneflv_000144479
    Source: KCTV, 2014/04/02放送

    タラップをさっそうと下りる金正恩と彼を出迎える朝鮮人民軍指揮官
    2014-04-02-02-01.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 최고사령관 김정은동지께서 백두산지구 혁명전적지답사행군에 참가한 조선인민군 련합부대 지휘관들을 만나시고 고무격려해주시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-04-02-0001&chAction=L

    飛び立つ金正恩を乗せた飛行機
    20140402 kimju bektusan by airplanefflv_001303573
    Source: KCTV, 2014/04/02放送

    この訪問で金正恩が飛行機を使った理由は、三池淵空港という大型機も着陸できる民間空港があったからであろう。平壌国際空港(順安空港)と三池淵空港以外に北朝鮮に大型機が離着陸できる民間空港が存在するのかどうかは分からないが、外国人観光客も利用できる民間空港なので公開しやすかったのであろう。仮にその他の地方現地指導で航空機を利用しているとしても、軍用空港に離着陸しているのであれば公開は控えるはずだ。

    金正恩の勇敢さを誇示するために飛行機を使った映像を公開したする報道もあるが、どちらかというと金正日が飛行機を避けたのが異常であり、金正恩が飛行機に乗るのが正常なので、「勇敢」とまでは言えない。ともあれ、「全く同じであられ」ながらも、父親との違いを少しずつアピールしたいのかもしれない。

    金正恩は三池淵戦跡地で演説をしている。演説は肉声で伝えられず、その要旨が『労働新聞』などで記事の一部として伝えられている。要旨を聞いて直感的に感じたのは、金正恩の言葉として伝えているにもかかわらず、随分、強い表現を使っているということである。これまでの彼の演説やその要旨をきちんと読み返したわけではないのだが、今回、彼が行ったとされることは、これまで「国防委員会」、「党中央軍事委員会」、「北朝鮮外務省」、「祖国平和統一委員会」の「声明」や「談話」の中で使われた表現に近いものがある。

    演説をする金正恩。サングラスは新しいスタイルか。
    20140402 kimju bektusan by airplanefflv_000820153
    Source: KCTV, 2014/04/02放送

    まず、南北関係について、北朝鮮が「重大提案を発表し、現実的な措置を連続して取ったにもかかわらず、今、国家に造成された情勢は厳しい」とした上で、その理由を「米国と敵対勢力は、我々の雅量と善意を無視し、我が共和国を政治的に抹殺し、経済的に孤立させ、軍事的に圧殺するための策動を一層悪辣に行っている」とし、「座視することができない厳しい事態は、我々に対する米国と敵対勢力の凶悪な姿勢が変わっておらず、変わることもないこと、とにかく銃隊で最後の勝利を達成しなければならないことを示している」と述べ、「我が軍隊と人民は、米国の対朝鮮敵対視政策を絶対に受け入れることはしないし、徹底して粉砕するであろうと強調」した。この演説が金正恩自身の認識かどうかはさておき、最近の北朝鮮の対米・対南姿勢とは符合している。

    北朝鮮は、南北間で離散家族再会協議が続けられていた2月半ば辺りから対米対決モードに入り、米韓合同軍事演習について米国にターゲットを絞った非難をしてきた。しかし、3月6日に韓国が提案した南北離散家族再会に関する赤十字実務協議の開催を拒否してからは、対南対決モードにも入った。

    『聯合ニュース』、「北朝鮮 南北離散家族定例化に向けた赤十字協議を拒否」、http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2014/03/06/0200000000AJP20140306001700882.HTML

    特に、朴槿恵がヨーロッパを歴訪し北朝鮮の核問題や人権問題解決を訴えた3月末以降、彼女に対する名指しの攻撃をはじめた。その第一弾が3月26日に出された「祖国平和統一委員会スポークスマン回答」で記者の質問に答える形で「朴槿恵がオランダで開催された第3回『核安全首脳者会議」に参加し、我々の核問題に分別もなく触れ、挑発的な妄言を吐いたこと」を非難している。

    その後、朴槿恵非難はパワーアップされ、「朝鮮中央TV」が4月4日に放送した「座談会:朴槿恵は幼稚な言葉遊びを止め、分別のある行動をしなければならない」という番組では、彼女がヨーロッパ歴訪中にした発言を取り上げながら徹底的に非難している。その中でも興味深いのは、彼女が北朝鮮の「寧辺原子力発電所」とチェルノブイル原発を比較しながら、「延辺原子力発電所」で事故が発生する可能性とそれが周辺諸国に与える影響について憂慮を表明したことに対してである。

    韓国の『京郷新聞』に3月24日に掲載されたという風刺画。
    左上:信じても信じなくても
    朴槿恵(赤い服を着た女性)の言葉:「寧辺で火災が発生すれば、チェルノブイリより大きな災難」
    オランダ公営放送(右のマイクを持った男性)
    下に記された北朝鮮による解説:寧辺で火災が発生すれば、チェルノブイリよりもさらに大きな災難が発生するという妄言を吐く朴槿恵を風刺した漫画
    20140404 anti- park KHfflv_000905410
    Source: KCTV, 2014/04/04放送

    この問題について解説する金日成総合大学のファン・シンリュル教授は「規模も発電量も違う2つの原発を比較するなど話にならない」とし、「工学を専攻したという朴槿恵の口からこんな言葉が出たということからして、彼女が無知だといわざるを得ません」と非難している。そして、韓国の原発で事故が頻繁に発生していること、そして科学者でもない政治家が他国の事故を引き合いに出すのは失礼であることなどを挙げ、しかし敢えて言うなら「横にある日本の福島原発の爆発事故の影響が南朝鮮ではより緊急な問題ではないのか。今、日本の福島原発から毎日大量な放射能物質が海に流れ出ているので、一番近いところにある南朝鮮が最も困っている状況です」と福島原発の写真を示しながら説明し、「朴槿恵は、遠くの国で遠い過去に発生した事故ではなく、これを問題にしなければならないのではないか」と発言している。

    番組が紹介した福島原発関連の写真の1枚
    20140404 anti- park KHflv_001341820
    Source: KCTV, 2014/04/04放送

    また、「朴槿恵が・・・我々の妊婦と子供が栄養失調で苦しんでいるので、自分の任期中に栄養支援をすると騒ぎ立てた」とし、北朝鮮の保育制度や医療制度の「優越性」について語った上で、「妊婦と子供の気持ちは、子供を産んだことがある母親が最もよく知っている。それなのに、子供を産んだこともない、冷血動物のような朴槿恵ごときが我々の妊婦は子供を心配するなど冗談にもならない。女性は年を取れば知恵があるように見えるのが普通だが、朴槿恵は汚く年を取り、醜悪に変化している」と統一問題研究所の金インオク副所長が女性の立場から、朴槿恵の母性すら否定する強い非難を述べた。

    統一問題研究所の金インオク副所長
    20140404 anti- park KHfflv_001082898
    Source: KCTV, 2014/04/04放送

    李明博も政権末期に北朝鮮からネズミ呼ばわりされたが、朴槿恵も徐々に李明博並の扱いになってきている。過去記事にも書いたとおり、北朝鮮は離散家族協議が行われている期間、朴槿恵だけではなく韓国政府要人に対する個人攻撃は慎重に避けてきた。しかし、このタイミングでこれまでにないレベルで朴槿恵を非難し始めたのは、当面、韓国と対話をする気はないということなのであろう。


    <追記>
    予定されていたことではあるが、金正恩が国防委員会第1委員長に第13期第1回最高人民会議で推戴されたと「朝鮮中央通信」が報じた。

    「国家の富強繁栄のための宇宙技術発展の威力ある保証」:北朝鮮「国家宇宙開発局」のロゴ (2014年4月5日 「朝鮮中央TV」)

    4月5日、昨年4月1日の「宇宙開発法」採択にちなんだ座談会番組を放送した。番組の前半では、「銀河3-2」ロケットの発射及び「光明星3-2」衛星の軌道進入成功を回顧し、北朝鮮が調印している宇宙利用・開発に関する条約の紹介、それと絡めて科学発展、経済発展のために衛星発射をすることの正当性を強調しつつ、3月27日のノドン発射などを受けて出された国連安保理の「報道機関向け議長談話」に抗議する内容となっている。

    ここまでは新しい話ではないのだが、番組後半では「敬愛する元帥様の直接的な発議と細心の指導の下で制作された国家宇宙開発局のマーク」が紹介される。恐らく、このロゴの紹介は今回が初めてであろう。

    北朝鮮当局者の説明では、「背景の濃い青い部分は若さが躍動する我が祖国の平和的な宇宙開発の性格」を反映し、「北斗七星は金日成・金正日朝鮮を宇宙強国に輝かせた宇宙科学者の信念と意志」を示し、「NADAはNational Aerospace Development Administration (国家の宇宙開発局)「の」はママ)」を示し、薄い水色の2本の帯は「衛星の軌道を象徴しており、宇宙の全ての軌道に我々の衛星を継続的に打ち上げようという、我が共和国の宇宙開発の展望と我々人民の確固たる意志」を示しているという。

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    Source: KCTV, 2014/04/05放送

    番組は「我々の共和国は今後も我が党と国家の宇宙開発政策に従い、宇宙を平和的に開拓しながら、国家の経済発展と人民生活向上、人類の文明発展に積極的に寄与していきます」と番組を締めくくっている。

    それにしても「NADA」というのは一文字入れ替えれば、米国の「NASA (National Aeronautics and Space Administration) 」と同じになる。

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    Source: NASA official HP, http://www.nasa.gov/audience/forstudents/5-8/features/symbols-of-nasa.html

    NASAによると「丸い形は惑星を、星は宇宙を、赤いV字は航空学、そしてNASAを囲む円形の軌道は宇宙旅行を象徴」しているという。

    同じ対象をデザインしているので自ずと似てしまうのかもしれないが、このNADAのロゴが飛び出したときは、あまり似ているので驚いた。世界情勢に精通した「元帥様」の「細心の指導」の結果であろうか。

    「大紅湍郡でモランボン楽団成功裏に公演」:リーダーのソンウ・ヒャンヒ復活、パルチザンの衣装 (2014年4月6日 「朝鮮中央TV」)

    コメントを頂いて気付いたのだが、モランボン楽団のリーダー、ソンウ・ヒャンヒが復活していた。したがって、過去記事に書いた、彼女の粛清説は間違いであったということになる。もしかすると、粛清までは行かずとも、しばらくの期間、取り調べを受けていたり、思想的再教育を受けていた可能性はあるが、ともかくも復活している。

    モランボン楽団は両江道の巡回公演を行っており、4月5日の「朝鮮中央TV」の「20時報道」で三池淵郡文化会館で開催されたモランボン楽団公演に関する報道があった。この中で、背景にソンウ・ヒャンヒらしき人物が見えたのだが、例によって解像度も悪く、フォーカスも歌手に合わさっていたので、彼女であるという確認はできなかった。翌、6日には大紅湍郡文化会館での公演の様子をやはり「20時報道」が報道したのだが、この中で彼女を大写しにするカットが使われた。

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    Source: KCTV, 2014/04/06 放送

    5日の放送で背景に映しておき、6日に大写しにしたのは意図的かどうかは分からないが、彼女がリーダーであるということと、張成沢事件との関連で粛清対象者が拡大しているという韓国報道を否定し、人権問題をかわす目的があるのかもしれない。

    また、演奏会場で聴衆が「モランボン楽団」のパンフレットを見る場面も大写しにされている。

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    Source: KCTV, 2014/04/06 放送

    パンフレットには歌手6人の写真、バイオリンなどを演奏する奏者4人の写真、そしてその他の楽器を演奏する奏者の写真が掲載されている。解像度の関係で誰が出ているのかまでは確認できないが、コメントを下さった方も書いておられるように、歌手の人数は6人構成ということのようだ。パンフレットを入場口で受け取り、それを開いて見ているところを中身が見えるように比較的大きく映しているのは、やはり団員に対する「粛清」の「噂」を打ち消そうとしているのかもしれない。

    モランボン楽団に張成沢がどれほど関与したのかは分からない。仮に関わったとしても、楽団本来の音楽構成や演出に彼が関わったのか、そうではなく単なる女性関係で関わったのかも分からない。しかし、明らかなことは、モランボン楽団が金正恩時代を象徴する楽団であり、朝鮮人民は同楽団と金正恩との深いつながりについては誰も疑いを持っていないということである。さすれば、いくら張成沢を悪人に仕立て上げたとしても、あまりにも楽団を攻撃することは金正恩の指導力のなさを露呈させることになり、ましてやリーダー自らを「思想的に間違った」行いをしたと追放してしまえば、金正恩自身に傷を付けることになるので、ソンウ・ヒャンヒ復活させたのかもしれない。説明のしようによっては、例によって「思想的に間違った」が、「慈悲深い元帥様の恩情」で復活したともいえよう。

    過去記事にモランボン楽団の衣装について書いたが、「20時報道」で見る限りは抗日パルチザンの女性隊員(金正恩のお婆さんの金正淑が肖像画でよく着ている長いスカートの軍服)のような衣装である。パンフレットには白い軍服姿が出ているので、白の軍服が標準的な衣装、今回の地方公演で着ているのはやはり場所柄、パルチザンの女性隊員にちなんだものにしているのかもしれない。

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    Source: KCTV, 2014/04/06 放送

    金正淑のような衣装は、単に戦跡地近くでの公演であり、また「太陽節」(金日成の誕生日)を控えたものであるからかもしれないが、「白頭の血統」と結びつけて高英姫公開を狙っている可能性もある。金ヨジョンをさらっと公開したので、もしかすると明日の最高人民会議か「太陽節」辺りでさらっと高英姫を出してくるのかもしれない。公演後、会場外でインタビューに答える朝鮮人民も「将軍様」の思い出ばかり語っている。もちろん、大紅湍(デホンダン)郡といえば、金正日が「ジャガイモ革命」を推進した場所ではあるのだが。

    漠然としたイメージであるが、記事にするといいながら未だにできていない、「ジャガイモ革命」を扱った「朝鮮記録映画」、今回の大紅湍郡でのモランボン公演、高英姫を幹部向けに紹介するために制作されたという「映画」が繋がってしまう。

    <追記>
    コメントを頂いたのでそちらに返信を書いていたのだが、写真なども合わせて出したかったので、記事に追記することにした。

    9日の「20時報道」でもモランボン楽団の両江道公演の様子を紹介している。この日紹介されたのは恵山市にある両江道芸術劇場での公演の様子である。今回は、巡回公演ということで、ほぼ毎日移動をしながらの公演のようである。

    6日の「20時報道」からキャプチャした写真でも紹介したが、9日の「20時報道」でもモランボン楽団のパンフレットをさらに大きく出している。

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    Source: KCTV, 2014/04/09放送

    また、女性がパンフレットを指さしながら読むのを子供がのぞき込んでいる場面も紹介している。

    20140409 20si podofflv_000591227
    Source: KCTV, 2014/04/09放送

    コメントを下さった方も「リュ・ジナらしき人が出ているよう」だと書かれているので、上の写真にあるようなモランボン楽団のパンフレットの出し方と併せて、やはり粛清説を打ち消そうとしている可能性はある。

    恵山市公演では、抗日パルチザン度がパワーアップされ、雪中戦闘でカモフラージュするためのマントも着用している。左の奏者のマントは照明の関係で黄色く見えるが、白である。

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    Source: KCTV, 2014/04/09放送

    やはり、粛清説を打ち消し、モランボン楽団の「思想的正統性」を強調することに今回の公演の目的があるようだ。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「副部長同志」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

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