「日本政府代表団帰国」: (2014年10月30日 「朝鮮中央通信」)

    10月末の日本政府代表団訪朝に関して、北朝鮮メディアは入国と出国を伝える記事のみ報じた。入国については「朝鮮中央通信」が10月27日「日本政府代表団到着」というタイトルで、井原局長一行が平壌空港に到着した2枚の写真と共に配信した。『労働新聞』は、写真無しの同記事を28日付けの同紙に掲載している。記事では、「井原局長一行が飛行機で平壌空港に到着した」とのみ伝えている。

    平壌空港に到着した井原局長
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this

    帰国に関する記事は「日本政府代表団帰国」というタイトルで30日に写真無しで配信され、31日付けの『労働新聞』には掲載されていない。こちらの記事は若干詳細で『30日に飛行機で帰国した」という事実の他に、「国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長である徐大河『特別調査委員会』委員長は、代表団の在留期間、朝日政府間のストックホルム合意履行のために共和国領内の全ての日本人に関する今までの調査状況を概括して日本側に通報し」、「『特別調査委員会』の各分科別責任者が日本側の当該関係者と実務会談を行った」と伝えている。

    「首相官邸HP」に掲載された官房長官の記者会見によると、北朝鮮側からは「新たな角度で調査をする」という話があったとのことである。一方、首相は「(日本側)はゼロベースで調査を始めるものと理解している」と国会答弁で述べているが、「新しい角度」と「ゼロベース」は全く違うことに注意しなければならない。北朝鮮の言う「新しい角度」というのは「将軍様」が述べたことを前提に「追加的に」という意味であり、「将軍様」の発言を「ゼロベース」に戻すということではない。北朝鮮が言う「新しい角度」というのは、まさに「特別の権限が付与された」委員会が「将軍様」が対象としなかった機関も含む「全ての機関」に対する調査をするという意味である。その意味では、北朝鮮はストックホルム合意をリワードして繰り返しているだけと考えた方がよい。もちろん、合意が有効であるということが確認できたという点からは評価できる。

    官房長官は、「(北朝鮮)政府が管理している拉致被害者」については「(北朝鮮側は)把握している」というのが日本政府の立場であるとも述べた。認識としては非常に正しい。もしその上で、「分かっているなら早く出せ」ということを言わずに粘り強い交渉をしようというのであれば、これも評価できる。拉致問題は放置しておけば解決するものではなく、「交渉」によってのみ解決する。理不尽なことがあっても粘り強く交渉するという姿勢を貫くことができれば、何らかの結果に結びつけることはできるのではないだろうか。

    過去記事にも書いたが、今回の調査が「拉致被害者」のみを対象としているのではないということも忘れてはならない。「拉致問題解決が最優先課題」であることについては疑問の余地はないが、その他の問題、例えば、「遺骨収集問題」についても「拉致問題」に引っ張られることなく、うまく進めていかなければならない。そして、北朝鮮側がそちらについて何らかの成果を出せば、「全ての分野について同時並行的に」という点を勘案しながら、北朝鮮側を評価する必要が出てくるであろう。

    過去記事にも書いたとおり、金正恩が療養中、南北関係、対米関係、対日関係など、対外関係について色々と検討されたようだ。平壌への代表派遣についても、9月29日中国・瀋陽で開催された日朝政府間協議で提案されており、金正恩の療養期間中に検討された可能性が高い。

    今回の協議は10月28~29日に行われたが、金正恩は28日には「軍人食堂現地視察」と「改築された5.1競技場で女子サッカーの試合観戦」をし、29日には「航空及び反航空軍の訓練指導」をしている(『労働新聞』に掲載される前日に実施したと仮定)。確かに、5月26~28日にストックホルムで日朝協議が行われいる間も機械工場や酒工場の「現地指導」を行っていたが、今回は平壌で行われている協議にもかかわらず、それには関心もないかのようにサッカー観戦をしているというのは、北朝鮮側の強気な立場を示す狙いがあるように思われる。

    確かに、日本では首相以下、政府の官僚が日朝協議の進行状況について固唾をのんで見守っている一方で、方や北朝鮮の指導者がサッカー観戦をしているというのは、この問題に対する「優先度」の違いを見せつけるものでもある。

    日本側は、「対話と圧力」と言いながら、「圧力」がまだ残っているようなことを言っているが、北朝鮮に取ってみれば、この協議が破綻しても「特別委員会設置で解除されたいくつかの制裁措置」が元に戻るだけの話である。これらの制裁解除で北朝鮮側にどれだけのメリットがあったのかは分からないが、目に見えるのは許宗萬総連議長の平壌訪問ぐらいである。

    ただ、北朝鮮は何の目的もなく交渉に乗り出したわけではない。まず第一の目的は、総連本部ビルの問題解決であり、第二の目的は万景峰号入港金措置の解除であろう。これらについては、既に過去記事に書いたので繰り返さないが、「10時間の協議」の中では、日本側に対するこれらの問題についての考えに関する質問も出されたはずである。

    また、北朝鮮は日本の政治状況も見ているはずである。閣僚の入れ替えや政治資金問題が噴出している安倍政権を彼らがどう判断するのか、これも今後の交渉に大きな影響を与えることになろう。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍航空及び反航空軍戦闘飛行士の検閲飛行訓練を指導された」:金正恩、戦闘機の梯子を登る (2014年10月30日 「労働新聞」)

    30日付けの『労働新聞』に表題の記事が紹介された。この記事の中では、金正恩が戦闘機の操縦席に座っている写真も紹介している。29日に『労働新聞』に掲載された「敬愛する金正恩同志が新たに建設された軍人食堂を現地指導された」の中でも、彼が会談を降りる姿を紹介している。

    「現地指導」も療養前のペースに戻って来ており、杖は持っているものの、足の方は順調に回復しているのであろう。

    戦闘機の操縦席に座る金正恩
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 항공 및 반항공군 전투비행사들의 검열비행훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    この座席に座るためには、この梯子を登らなければならない。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 항공 및 반항공군 전투비행사들의 검열비행훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    階段を降りる金正恩
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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 새로 건설한 군인식당을 현지지도하시였다」

    北朝鮮、拘束していた米国人を帰国させる (2014年10月21日 「米国務省定例記者会見」)

    北朝鮮が「聖書を置いた」として拘束していた、米国人ジェフリー・ファウル氏を解放したというニュースが流れており、「米国外務省定例記者会見」でもここ数日、この問題について盛んに質疑応答がされている。

    その「質疑応答」の中で「朝鮮中央通信」が「このような報道をした」ということが記者側から出されているのだが、私が解する朝鮮語、英語、日本語で「朝鮮中央通信」のサイトを検索しても、このニュースを見つけることができない。実は、この記事は「北朝鮮側はまだ公式に報道していないが」と途中まで書き、北朝鮮メディアが何らかの報道をするまで「下書き」のまま待っていた。

    ところが、米国務省の共同記者会見では「米国人の解放は、金正恩最高司令官の直接的な命令である」と「朝鮮中央通信が報じた」とか、「オバマ大統領が繰り返し解放を要請した」と「朝鮮中央通信が報じた」などと質問されている。西側の主要なメディアも「朝鮮中央通信」が配信したという記事を引用しながら「米国人解放」を伝えているが、私はその肝心の記事を見つけることができない。

    「朝鮮中央通信」が短時間で記事を削除した可能性もあるが、記事の内容からすれば、それはあまり考えられない。

    調査状況説明のための日本当局者の平壌招聘も、南北朝鮮接触も、そして米国人解放も、全て金正恩の「療養中」に決定されている。

    実は、彼は「療養」しつつ、これらの施策について幹部と深い議論をしていたのではないだろうか。「元帥様」はただ者ではないのかも知れない。

    北朝鮮が配信した記事に関する情報があれば、教えていただきたい。ただし、「引用」ではなく、北朝鮮系サイトが発信している一次情報に限ってお願いしたい。

    「梓洞駅―江東駅―南浦駅区間鉄道改良工事着工式開催」:朝露関係強化 (2014年10月22日 「労働新聞」)

    朝露協力による平壌-南浦間の鉄道改良工事の着工式が行われたと『労働新聞』などが報じた。「朝鮮中央TV」の「報道」としてはまだ報じられていないようである。

    着工式は21日、東平壌駅で行われ、北朝鮮側からは「朝露政府間貿易・経済・科学技術協力委員会朝鮮側委員長の李龍男」、ロシア側からは「朝露政府間貿易・経済・科学技術協力委員会ロシア側委員長のアレクサンドル・S・ガルシカ極東発展相」などが出席した。着工式で行われた演説では「朝露外交関係樹立66周年となる今年、平壌で両国の経済発展において意義のある鉄道改良工事着工式を開催するに至ったことは喜ばしい」とし、「朝露人民共同の発展と利益に符合する大規模協力計画実現の第1段階」としているが、どのような協定でロシアが鉄道改良工事にコミットするのかは明らかにされていない。特に、ロシア極東地域へと繋がる平壌から東に延びる鉄道の改良工事ならともかく、反対方向の西に向かう鉄道工事にロシアがコミットしている点が興味深い。

    ロシアと北朝鮮との関係強化は、ウクライナ問題が発生してから顕著になっている。これは、米国との関係で北朝鮮をカードとして使いたいロシアと中国一辺倒から脱却したい北朝鮮の意向が一致したためであると考えられる。

    式典に参加した朝露両国の代表
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/

    「金正恩同志が金メダルを取った選手と監督に会われた」:夫人同伴、「金メダル」だけ、食事制限? (2014年10月19日 「労働新聞」)

    アジア大会で「金メダル」を取った選手と監督に金正恩が会い、宴会を開いた。復帰後初の李雪主夫人同伴である。

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    Source: 『労働新聞』、「김정은동지께서 금메달을 쟁취한 선수들과 감독들을 만나시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    実は、「アジア大会参加者」には「朝鮮労働党中央委員会と朝鮮民主主義人民共和国国防委員会」が「6日木蓮館で宴会」を開催している。この様子は写真で紹介されていないので詳細は分からないが、メダル取得如何に関わらず「参加者」全員を招待したのであろう。この時は崔龍海が「金正恩同志の委任により、第17回アジア競技大会で優勝の快挙を連続して記録した選手と監督を熱烈に祝賀した」。

    しかし今回は「金メダル」を取った選手だけを招いてということで、『労働新聞』に掲載された写真では、やはり女子サッカー選手を中心に紹介している。
    20141019kju4.jpg
    Source: 『労働新聞』、「김정은동지께서 금메달을 쟁취한 선수들과 감독들을 만나시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    下段一番右の宴会風景を見ると、テーブルの上にあまり料理が並んでいない。これから出てくるのかもしれないが、もし金正恩の足の不調が内臓疾患によるものであり、食事制限を受けているのであれば、その影響の可能性もある。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が呉仲洽7連隊称号を授与された朝鮮人民軍航空及び反航空軍第1017軍部隊と第458軍部隊の戦闘飛行士の道路飛行場での離着陸飛行訓練を指導された」:復帰後初の軍部隊指導、横転飛行、命令違反と度胸 (2014年10月19日 「労働新聞」)

    金正恩が復帰後初めて人民軍で「指導」をした。『労働新聞』で紹介されたのは、杖を持ってたっている写真と座って双眼鏡を覗いている写真である。

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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 항공 및 반항공군 제1017군부대와 제458군부대 전투비행사들의 도로비행장에서의 리착륙비행훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    下の写真の上段右から2番目のことであろうが、「最高司令官同志」が「特に地面すれすれの超低空で道路飛行場上空を通過し、低い高度で横転操作を遂行する追撃機を見」て「あのような任務を与えなかったのだが、飛行士ドンムが最高司令官の前で自分が錬磨してきた飛行術を自慢したかったのではないだろうか。とても勇敢だ」と評価したと記事に書かれている。「与えなかった」「任務」、しかも「最高司令官同志」の上に墜落する危険すらある危険が「任務」を勝手にするのは命令違反に等しいと思うのだが、これも「ペッチャン」(度胸)ということであろう。この、「ペッチャン」というか英雄主義は「朝鮮芸術映画」の中でも2つのパターンで扱われている。一つは、「命令違反」として批判されるパターン、もう一つは「ペッチャン」(度胸)として称賛されるパターンであるが、今回は後者ということであろう。命令違反すらも「ペッチャン」と褒める「最高司令官同志」の「ペッチャン」は、健康不安説の払拭にも繋がる。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 항공 및 반항공군 제1017군부대와 제458군부대 전투비행사들의 도로비행장에서의 리착륙비행훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    NAVER「国語辞典」によると、「横転」を「<航空>水平飛行の途中で横に一度回転し、再び水平飛行を続ける特殊な飛行」とイメージしにくい説明が書かれている。北朝鮮のweb「朝鮮語大辞典」の検索機能がずっと壊れており、使えなくなっているのが痛い。uriminzokkiriにメールを送っていたが、直してくれるのだろうか。

    「北南関係改善の雰囲気を壊す不当な行為の真相を明らかにする-朝鮮中央通信社 公開報道」:未完 (2014年10月17日 「労働新聞」)

    10月16日21時頃、「北南関係改善の雰囲気を壊す不当な行為の真相を明らかにする-朝鮮中央通信社 公開報道」という記事が「朝鮮中央通信」で配信された。その後、22時頃には、「朝鮮中央TV」で約15分掛けてアナウンサーが同記事を読み上げる番組を放送した。翌17日には、『労働新聞』に同記事が掲載された。

    南北関係は、黄炳瑞(人民軍総政治局長)、崔龍海(国家体育指導委員会院長)、金養建(労働党統一戦線部長)が10月4日に仁川で開催されたアジア大会閉幕式に急遽出席し、閉幕式出席前に韓国側の金寛鎮(国家安保室長)、柳吉在(統一部長官)らと会談し、10月末から11月初旬の間に「高位級会談」を開催することとした。

    その後、10月4日にはNLL付近で南北艦船間で銃撃戦があり、また同10日には脱北者団体が飛ばした北朝鮮体制非難のビラを北朝鮮領内に散布するための風船を人民軍が銃撃し、その弾丸の一部が南側領内に落下するという事件が起きた。

    北朝鮮は、4日のNLL銃撃戦については終始沈黙を保っていたが、10日のビラ風船散布についてはその予定が公開された時から、韓国側に中止させることを強く求めてきた。例えば、9日に出された「祖国平和統一委員会書記局報道第1075号」では「万が一、水面朝鮮当局がビラ散布乱動を許可したり黙認したりする場合、北南関係は再び収拾できない破局へと向かうことになり、その責任は全的に挑発者が取ることになる。我々は、北南関係が再び破局に直面するという好ましくない状態にならないことを望んでいる。」と警告している。

    『労働新聞』、「남조선당국은 상대방을 중상모독하는 삐라살포놀음을 중지시켜야 한다 조국평화통일위원회 서기국보도」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-10-10-0023&chAction=S

    北朝鮮は、黄炳瑞一行がアジア大会の閉幕式に出席したことについては対内向けにも報道してきたが、「閉会式出席のため」という以上の詳細は伝えていなかった。しかし、10日に出された「民族和解協議会代表人談話」の中で初めて「今、民族全ては我々の総政治局長一行の仁川訪問により作り出された北南関係改善の新たな雰囲気が持続され、よい結実を結ぶことに期待をしている。北南関係を改善しようとするならば、その雰囲気を上手く作り出さなければならず、双方が共に努力することが何よりも重要である。既に北と南は第2回高位級接触を持つことに合意した」と、仁川で「閉会式出席」以外に南側と接触が行われ、その結果として「第2回高位級接触」が決まったことを伝えた。

    この「談話」の趣旨は、8日、ASEANの事務総長との会見の中で朴槿恵が北朝鮮の「核開発放棄」や「挑発と融和の二重的形態」に触れたことに対する反発であるが、対内的には北朝鮮の努力で「第2回高位級接触」まで実現しようとしているのに、「南朝鮮」の「執権者」こそがまさに「二重的形態」でそれを無にしようとしているという説明になる。

    『労働新聞』、「민족화해협의회 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-10-11-0027&chAction=S

    ビラ風船は結局飛ばされ、北朝鮮は11日に「ビラ散布妄動の操縦者は誰なのか-朝鮮中央通信社論評-」を通して、「今回の事態は、人間の屑共のビラ散布狂乱が一日が行き交う熱戦へと飛び火するということをはっきりと示している」と、北朝鮮がビラ風船を銃撃したことを暗に認め、「今後、北南関係がどうなるのかは、全的に南朝鮮当局の態度如何にかかっている」と警告している。

    ビラ風船について、北朝鮮をより激怒させたのは、「創党記念日」の10月10日にタイミングを合わせ、体調を崩していた「元帥様」を誹謗中傷するビラを散布しようとしたからであろう。一方、NLLでの銃撃について一切触れなかったのは不思議であった。

    そして、10月16日に冒頭に書いた、「北南関係改善の雰囲気を壊す不当な行為の真相を明らかにする-朝鮮中央通信社 公開報道」という記事が「朝鮮中央通信」で配信された。この記事では、15日に板門店で開催された「北南緊急接触」に至る経緯と「接触」の状況について、北朝鮮側から見た詳細が書かれている。

    「公開報道」では、15日の「緊急接触」は「北南関係改善ムードに抵触する西南海上で発生した銃撃戦と南北境界線付近で続いている反共和国ビラ宣布のような好ましくない事件が再発することを防ぐための我々の深い気持ちにより行われた責任ある場であった」とし、この「接触」が上述の2つの事件について話し合うために開催されたしている。北朝鮮は「ビラ散布」については繰り返し非難していたが、今回の「西南海上で発生した銃撃戦」について触れたのは初めてである。

    「公開報道」は、「第2回高位級接触が実現するまでに何とか北南関係における事態の悪化を避け」ようと「緊急接触」をしたが、「何の結実を結ぶこともなく霧散してしまった」とその結果について伝えている。そして、「公開報道」をした背景として「南朝鮮当局」が会談中にメディアに会談内容を公開したり、「北方限界線のいわゆる正当性が確証されたように世論を誤った方に誘導した」ことがあるとしている。

    「公開報道」は、時系列的に「緊急接触」に至る過程を次のように伝えている。

    ・「10月4日、仁川で開催された南北高位級当局者の階段は北南関係を改善するよいムードを造成」
    ・「10月7日午前10時、西南海上の対立水域で相手側の艦船に向けてお互いに銃砲射撃を加える好ましくない事件が発生した」
    ・韓国の国家安保室長に「双方首脳の意図とは無関係なこうした事態が持続するのであれば、関係改善の出発点に立ったよい流れが再び止められてしまう」ので「緊急単独接触をもつことを丁重に提案」し、北朝鮮側の「特使、接触日時、場所」を指定。
    ・ 韓国側は「今回の事件が誰それがNLLを超えたことに対する不可避な対応な対応であった」とし、「(北朝鮮側に)NLLを尊重して厳守すればよい」、「軍事的緊張緩和の問題は『今後適切な機会』に話し合えばよい」と「緊急接触提案を一方的に拒否」した。
    ・北朝鮮は、「10月8日1時23分、深い夜中にもかかわらず」、「我々の緊急接触提案は、けっしてどちらが正しいのかを巡り言い争いをする場にしようということではありません。我々の提案は、せっかく実現した仁川北南公級会談が、初めからうまく進むように力を合わせて、必要な対策を一つ一つ積み重ねていこうというところにあります。出たばかりの芽も力を合わせて育てなければ、巨木にはなれません。今回の事件は、第三者は関わらない北南間で発生した状況なので、我々が手を取り合って解決していかなければ、貴重な合意履行に好ましからざる影響をもたらすと我々は考えています。仁川で見せた顔つき、語調とは全く違う道義も礼儀もない誠意のない返信をした貴下の態度に失望せざるを得ません。『今後、適切な機会』などを云々する貴下の無礼で誠意のない立場を勘案すれば、合意された高位級接触について再考しなければなりません。迅速に緊急接触提案に応じてることを丁重に勧告します。接触日時と場所は貴下に一任します」と返信
    ・韓国側、「まるで我々が(北朝鮮側が)西海銃撃事件に対する不満を綴った『抗議通告文』を送ったように世論を間違った方に誘導し、関係改善に抵触する妄言を躊躇することなく吐いた」だけではなく、「『止めさせる法的根拠がない』という口実の下、人間の屑共を再び反共和国ビラ散布作戦に動員し我々の軍隊と人民を激怒させた」

    (つづく)

    「敬愛する金正恩同志が完工した金策工業総合大宅教育者住宅を現地指導された」:杖の使用、8月ペースでの現地指導、左足はまだ不自由なのか (2014年10月17日 「労働新聞」)

    10月17日の『労働新聞』に金正恩が「金策工業総合大学教育者住宅現地指導」をしたという記事が掲載された。復帰から2回目の「現地指導」を紹介する記事であるが、相変わらず杖は使っているものの、このまま行けば「現地指導」のペースは8月とほぼ同じに戻る。

    単に「現地指導」した時間帯の問題なのかもしれないが、前回はどちらかというと日陰で撮影した写真が多かったが、今回は日向で撮影した写真を多く紹介している。ただし、彼が「大元帥様」を意識してやっているのか、遺伝的な癖なのかは分からないが、彼がよくやる左足のつま先を持ち上げるポーズはしていない。やはり左足はまだ不自由なのであろう。動画を見ないと杖が実用的なものなのか「元帥様の労苦」を強調するための小道具なのかは分からないが、得意のポーズが出来ていないことからすると、実用的な杖なのであろう。

    韓国系メディアが「腕時計の未使用」を伝えているようであるが、腕時計については、過去にも未使用、あるいは腕の高い位置で着用しているため見えないことがあったので、今回の事態とは直接的な関係はないはずである。

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공된 김책공업종합대학 교육자살림집을 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    腕時計が見えない金正恩
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    Source: KCTV, 2014/10/16放送、「영원한 태양의 성지로 만대에 빛내이시려」(2013.12.13に初回放送)より

    <追記>
    確認のために再び書いておくが、「腕時計」は、上記写真からも分かるように着用していない時もある。さらに、腕のかなり高い位置で(肘に近い位置)で着用していることもあるので、内臓疾患で「腕にむくみ」が出たとしてもバンドを弛めればいくらでも着用できるはずである(彼の腕時計の革製バンドはかなり長いもの)。復帰後に腕時計を着用していないとすれば、腕時計が下がってきて、杖をつく際に手の甲に当たり邪魔なので外している可能性はある。私も金属製ベルトが緩めな少し重い腕時計を使うことがあるが、その時は手の甲に当たるので外してしまうことがある。

    「北南関係を破局へと向かわせるビラ散布妄動」:韓国による産経新聞前支局長起訴問題に触れる (2014年10月16日 「朝鮮中央TV」)

    本質的には「南北関係」のカテゴリーに入る「番組」であるが、番組中で韓国が産経新聞前支局長を起訴し、出国禁止にしていることを指していると思われる発言があったので紹介しておく。

    「北南関係を破局へと向かわせるビラ散布妄動」
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    Source: KCTV, 2014/10/16放送

    この番組の中で、韓国当局が脱北者による北朝鮮非難ビラ散布を事実上黙認しているとしながら、女性キャスターが次のように発言している。

    「さらに問題となるのは、南朝鮮当局に反対する進歩的民間団体に対しては過酷な弾圧を加え、挙げ句の果てには、当局者を非難したという理由で外信記者まで問題視した南朝鮮当局が、人間のゴミ共の反共和国謀略騒動に対しては法的根拠がないと言いながら、知らん顔をして、目をつぶっている」

    この「当局者を非難したという理由で外信記者まで問題視した」という部分であるが、当局者が朴槿恵、外信記者が産経新聞前支局長を指しているものと思われる。その他にも類似した事例があり、それを指しているのかもしれないが、もし産経新聞前支局長関連の事件を指しているのであれば、興味深い。

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    Source: KCTV, 2014/10/16放送

    今夜22時頃から、21時頃「朝鮮中央通信」に掲載された「北南関係改善の雰囲気を台無しにする不当な諸事の真相を明らかにする-朝鮮中央通信社公開報道-」を「朝鮮中央TV」でも放送していた。こちらについては、別記事として書くことにする。

    「<テレビ連続劇>我々の女子サッカーチーム」:2011年に制作された女子サッカーチームを扱ったドラマ、とてもおもしろい (2014年10月13日 「朝鮮中央TV」)

    10月13日から「朝鮮中央TV」で「我々の女子サッカーチーム」というドラマを放送している。北朝鮮女子サッカーチームのアジア大会優勝に合わせたタイムリーな放映であるが、優勝してから随分短い期間で制作したものだと思っていた。というのも、このドラマが金正恩時代のドラマと遜色ないほどよく出来ていることに加え、韓国・統一部のサイトで確認しても「第1部」は「再放送」として掲載されていなかったからである。しかし、「第2部」からは「2011.6.20の再放送」と掲載されているので、「第1部」は同月19日の放送であるにもかかわらず、同サイトが「再放送」と記載を付け忘れたということのようだ。

    昨日は、「第3部」が放送され、今日は「第4・5部」が放送される予定となっている。過去記事で紹介した、女子サッカー優勝試合録画放送の解説者「教授・博士、李ドンギュ先生」の解説では、2011年、北朝鮮の女子サッカーチームは特段の活躍をしていない。それにもかかわらず、この時期にこうした「テレビ連続劇」が制作されたというのは興味深い。やはり、北朝鮮は継続的に女子サッカー育成に力を入れてきたことの証左であろう。

    まず、このドラマを見て思ったのは、登場人物が「FILA」を中心とした海外ブランドのトレーナーなどを着用しているということである。

    「第1部」でチームメンバーもFILAのサッカーウェアを着用している。正面で話しているのは、このドラマの主役となる新「責任家督」。この監督は着任したばかりなので人民服を着ているが、その後はFILAのトレーナーを着て登場することが多くなる。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    FILAの公式HPには「フィラは、1911年、イタリアのビエラで生まれました」と書かれているが、Wikipediaによると2007年にFILA Koreaに買収されている。

    FILA公式HP、http://www.fila.jp/aboutfila/index.html

    よって、このドラマが制作された2010~2011年は、経営権が韓国に移転していた時期であるばかりか、南北関係が悪化に転じた李明博政権期でもある。こうした状況で、ドラマに登場する北朝鮮チームがこぞってFILAを着用したのはなぜであろうか。

    FILA以外では、「クウォルサン」女子サッカーチームの「責任監督」がナイキのロゴがついた帽子を着用している。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    「我々のもの」を着用せず、国際的なブランドを着用させているのは、金正日が北朝鮮のスポーツの世界化を意識していたからなのかもしれない。

    ストーリーであるが、大変おもしろい。「第1部」では、アジア大会で銀メダルを取った北朝鮮男子サッカーチームが全く紹介されない理由が何となく分かった。

    「第1部」の中で北朝鮮女子サッカーチームが「国際試合で優勝できずに」平壌駅に戻ってきた時の様子。選手は暗い顔で列車から降りてきており、出迎えの人数も少ない。「第1位になれなかったのは残念だったが・・・」と「部長」が言っているので、第2位だったということだろう。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    そして「総話」が行われ、「前回は3位、今回は2位、国際試合で順位を上げてくるのには、血と汗がにじんだ努力があったことは良く分かっている」と語っているので、第2位であったことが確認される。やはり北朝鮮では金メダル以外は歓迎されないのであろう。ましてや今回「南朝鮮」に敗れた男子サッカーチームはそういうことなのだろう。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    新「責任監督」は、「頭脳サッカー」を標榜し、物理学の座学もする。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    居眠りをしていた選手(左)が問題に答えるよう指名されるが、友人(右)が「この子は、そういう問題が嫌いで、サッカー選手になったんです」と言い訳をする。このドラマに登場する女性は一部の試合シーンを除いては、俳優を使っているが、彼女たちの話や演技がとてもおもしろい。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    「前回の試合では相手チームと体育能力的には互角であったが、知能戦で敗れたんだ。皆さんは、数学や物理学について専門学校生水準の知識は持たなければならない。これから毎日10問ずつといてもらう」という新「責任監督」の言葉に、「はい」と元気よく返事をする選手たち。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    「第1部」から「第2部」にかけては、女子サッカーチームが力を発揮するにはスター選手が必要なのではなく、皆が一丸となって戦うことが必要であるということを教えていく。そのため、わざわざ「クウォルサン」チームとの戦いで負けるという状況を作り出し、選手の精神をたたき直す。

    その過程で、ちょっとした「恋愛」らしきものも芽吹くが、「悪」として処理されてしまう。女子チームの選手を「自分の誕生日だ」と嘘をついて誘い出した新「責任監督」の息子(この息子もサッカー選手)。実は、「恋愛」ではなく「深い事由」があるのだが、結局、この息子は一度サッカーを中断して「突撃隊員」(第3部までではここは不明)となる。
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    Source: KCTV, 2014/10/13放送

    女子チームの中に、ボールを怖がる選手がいる。農村で暮らしていた時にトラクター事故に遭い、そのトラウマが残っているという設定である。「部長」はこの選手を抜くことを提起するが、新「責任監督」は根性を入れ直す特訓をする。

    新「責任監督」の車に乗せて女性選手を連れ出す。シートベルトはしていない。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    銅像(当然、大元帥様の銅像ではない)に向かって車を走らせ、急ブレーキを掛けギリギリで止まる。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    シートベルトを締めて、この選手に同じことをやらせようとするが、女子選手は「責任監督同志が乗っていては出来ません」と新「責任監督」を降車させる。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    車は北朝鮮には珍しいオートマ車であった。トラクター以外の運転経験の女子選手に運転させるという点では現実的だが、新「責任監督」の車がオートマというのは若干非現実的か。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    新「責任監督」は自分が目標物となり訓練をする。下の写真は車が停止した地点の車内からの映像。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    車外から見るとこうなっている。細かい話ではあるが、随分距離感が違っている。
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    Source: KCTV, 2014/10/15放送

    ともかくも、この特訓で女子選手はトラウマを克服した。

    「第4・5部」の展開が楽しみだ。

    「敬愛する金正恩同志が新たに建設された衛星科学者住宅地区を現地指導された」:杖を持つ「元帥様」 (2014年10月14日 「労働新聞」)

    『労働新聞』に、金正恩が「衛星科学者住宅地区」を「現地指導」する様子が写真入りで紹介された。写真を見る限りでは、杖は持っているが元気な様子である。9月4日に写真なしで報道された「モランボン新曲演奏会」以後、初めての動静報道である。昨日、韓国メディアが米韓の消息筋情報として金正恩の容態を詳しく伝えていたが、それを受けたタイミングのように北朝鮮メディアが報道した。

    科学者住宅キムジョンウン
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 새로 일떠선 위성과학자주택지구를 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/

    私ですら、元気な様子の「元帥様」をみるとなぜかホッとするのだから、朝鮮人民はさぞかし安心したことであろう。

    短編小説「火の約束」5:金正恩が「将軍様」に花火大会の火に誓う「火の約束」(2014年10月2日 「uriminzokkiri」)

    (第5部:最終回)
    雑誌『青年文学』2014年第1号収録
    短編小説「火の約束」 作:金イルス

    火の約束
    火の約束
    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa5&no=87073

     それから2ヶ月後、4月の夜。
     主題思想塔(訳注:「主体思想塔」と思われるが、誤植ママ、「주제사상탑」と原文表記)を見渡す大同江の岸辺の遊歩道は、人々で混み合っていた。
     夜の海のように波打つ人々のうねりは、どう表現したらよいのか分からない巨大な活力に満ちていた。しばらく後、幕を上げる祝砲夜会への熱気を帯びた興奮と期待感で大同江岸のどこもが熱くなっていた。
     その熱気を吸われながら金正恩同志はヒョンジンに声をかけられた。
     「祝砲への人々の熱気がすごいですね。実際にこの川岸に来てみると、想像していた以上にそれを感じます。・・・」
     「『強盛大国の火の嵐』という題名が示唆するように首領様の生涯の念願、我々人民の念願が実現されるその日が近づいているわけですが、興奮せずにはいられません。」
     ヒョンジンを見詰められる金正恩同志の瞳が閃光のように明るく輝いた。淡々とではあるが、底力のある金正恩同志の声が響いた。
     「それは・・・明日に対する熱望であり、確信です。ベルトを締め上げて、ついに世紀の頂上に登り詰めた我々人民が、自分たちを手招きする強盛大国に向かい、泣き、そして笑いながら勝利の歓喜を叫びたいという強烈な激情であり、興奮なのです。将軍様をいただき、天に達する民族の尊厳と誇りがその熱源として、無窮の源泉となっているのです。」
     金正恩同志は、手を強く握りしめて振り上げられた。
     金正恩同志の雄志に溢れる思索の世界をいただくヒョンジンの鼓動する胸に叙事詩「白頭山」の一節が浮かんだ。

     毎夜の如く増えていく群衆
     高く登り、剣を振り上げ叫ぶ、金大将
    ・・・

     しばらく後、偉大な将軍様をお迎えして祝砲夜会が始まった。
     晴れ晴れしく荘厳な雷鳴に続き、多彩な火の玉が無数の模様と色合いで炸裂し、光芒たる花火となり空を覆った。大同江の水が激情を抱いて流れていた。歌「朝鮮の幸運」に続き「パルコルム」の荘重な旋律が祝砲と重なり合い、平壌の夜空へ、国中へと響き渡った。
     祝砲の風景を意味深く凝視され、時として満足げに微笑まれた将軍様が金正恩同志に視線を向けられた。
     「素晴らしいなぁ。やはり主体思想塔を背景にした大同江で繰り広げられているから、言葉どおり壮観だ。独特だ!」
     「あの火は、将軍様が先軍の道に流された無数の汗、一滴、一滴が輝いているのです。将軍様が捧げられた労苦があのように美しくきらきらと輝く花火となったのです。」
     「あの火を見ると、人民の笑い声がもっと大きく聞こえるようだなぁ。」
     「そうです、将軍様!我々人民が、朝鮮が笑っています。」
     「そうだ。強盛国家の明日を目前にしている朝鮮の痛快な笑い声だ。未来に向かい突進する朝鮮の気性だよ。あの火は、我々の未来を照らしている。僕は、その未来を確信している。」
     金正恩同志は、図らずも心臓が大きくなっていくように感じた。
     「将軍様、私は必ず世界に見ろと言わんばかりに将軍様が守って下さった先軍朝鮮を、あの空高く持ち上げます。将軍様が率いられる朝鮮は常に世界に向かって進んでいくのです。」
     火の言葉は長くなかった。しかし、断固とし、明白で、強烈である。
     明日を信じろ!

    <完>

    <翻訳後記>
    初めは力を入れてやっていたが、だんだん手抜きが多くなった。しかし、大きな文脈での間違いはないと思う。苦労したのは、「火」、「電気(電力)」、「電灯の光」、「電飾」をどのように分けたらよいのかということであった。朝鮮語(韓国語)では、「電気」を「火」(プル)としばしば表現するので、その区別をどのように表すのかに苦労した。「電飾」は「ライトアップ」としたが、イメージとしては下の写真のような感じだと思う。

    羅先市のライトアップと羅先市電飾事業所の支配人李ヨンチョル
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    Source: KCTV, 「20時報道」、2014/10/08放送

    「将軍様に従い千万里」この山肌に飾られたスローガンは羅先で見たが、ライトアップの準備が進んでいるとは思わなかった。羅先の夜は、「エンペラーホテル」だけが煌々と輝くという感じであったが、それ以外のライトアップも進んでいるようだ。
    20141008_2flv_013148621.jpg
    Source: KCTV, 「20時報道」、2014/10/08放送

    「火の約束」は後編があるようなので、機会があれば続きを読んでみたい。

    <追記2>
    1部から5部まで、若干手を入れたバージョンに差し替えておいた。

    短編小説「火の約束」4:チャンジャ江と元山のライトアップ、「将軍様」の功績、「強盛大国の大門」を叩く (2014年10月2日 「uriminzokkiri」)

    (第4部)
    雑誌『青年文学』2014年第1号収録
    短編小説「火の約束」 作:金イルス

    火の約束
    火の約束
    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa5&no=87073

     人民軍部隊に対する現地指導を終えて戻ってこられた金正恩同志は、車をムンチャン基礎食品工場へと向かわせた。
     「ヒョンジンドンム、時間がないが、ついでにムンチャン基礎食品工場にもう一度立ち寄ってみましょう。」
     金正恩同志のお言葉にヒョンジンは意気込んで答えた。
     「あの働き者の支配人は、きっと色々なことをしたと思います。」
     何日か前、ヒョンジンは金正恩同志から命を受けて元山と東海岸地区を回ったついでに、時間を作ってムンチャン基礎食品工場にも立ち寄った。支配人が原料基地に出かけていたので、直接会うことはできなかったが、一新された工場の内外のどこからも、支配人のきちんとした仕事ぶりと誠実な汗の果実、またその苦労を感じ取ることができた。
     「江原道の人が答えました。自らの力で元山青年発電所を打ち立てたのもそうだし、電化された新たな村もそうだし・・・元山青年発電所を視察された将軍様も本当に喜ばれました。」
     車窓を流れていく丘陵地帯を見ておられた元帥様が再び続けられた。
     「今、元山はライトアップしようと懸命になっていると思います。」
     「はい、いたるところでライトアップをしようと、元山市全部が動いています。今となっては、工場の名前も変えなければならないと、水自慢しかできなかった『水の江原道』でしたが、これからは電気の光の自慢をする『電気の灯火の江原道』と呼ばれなければならないと大騒ぎしています。」
     ヒョンジンは、まるで自分の自慢をするように肩を張りました。
     「昨日は、慈江道がチャンジャ江の火の夜景を『自慢道』にしていたのに、今日は自分の江原道が『強盛道』になって、肩を張って話しているのを見ると、熱誠がただものではありませんね。」
     金正恩同志の口元に微笑が浮かんだ。
     「将軍様は、電化の万歳を叫ぶそんな日を見通され、何年も前に元山市のライトアップに関する課業を命じられました。幸福の創造者にまずその恵沢を謳歌してもらえるようにしようという深い配慮でした。『電気の灯火の江原道』、『強盛道』・・・とてもロマンが溢れているではありませんか!そこには涙を流さず聞くことができない体験もあり、自分の力を信じ、光明な明日を信じる人々の笑いとロマンがあります。」
     鳥が東の方に向かって飛んでいた。まだ冬は明けていなかったが、地中の深いところで動き出した春の夢を見る自然の力強い息吹と呼吸が、躍動する羽ばたきの中から伝わってくるようであった。
     「数日間この地区を出張で回る中で、電気の灯火の意味についての考えも深まり、新たな感動も感じたのだが、どのようにお話申し上げたらよいものか・・・ともかく電気の灯火、明るく照らされる野山、明るくなる人民の表情、これが私に衝撃的でした。チャンジャ江の火の夜景、平壌の火の夜景に続き、元山の火の夜景が連続して広がり・・・このように全国が明るくなり、人民の表情がさらに明るくなったなあ、そう思うと、胸が張り裂けそうで涙が流れ出ました。」
     真摯に応じて下さる金正恩同志のお言葉に余裕を感じたヒョンジンは、そのまま激情と感じたままを吐露したかった。
     「火、火の意味か・・・何か新しく示唆するものがあるな。よい知らせを伝えてくれてありがとう。」
     金正恩同志は、しばらく間を置いて、明快な語調で続けられた。
     「・・・ヒョンジンドンムが言ったように火は喜びであり、希望の力です。元山だけではありません。将軍様は今後、会寧、南浦、このようにライトアップを拡大していく構想を持っておられます。その火は、単に消えていた灯を再び付けるということではありません。また、皆が豊かになりライトアップをするのでもありません。そこには、自分の国の青い空も、我々の力で切り開き、その空の下の作物も我々の手で育てようという、つまり、人民を幸福の未来へと鼓舞されようとする将軍様の意図が刻み込まれているのです。」
     いつのまにか車は文スキ支配人が働いている基礎食品工場に着いていた。
     ほぼ1年ぶりの嬉しい再会であった。
     「敬愛する大将同志!・・・」
     思いがけなく金正恩同志にお目にかかることができた文スキは、挨拶もきちんとできないまま呆然としていた。目だけパチパチしながら、夢なのか現実なのか分からない様子であった。しかし、金正恩同志はお咎めにならず、工場を見ようと言われ、彼女の手を握って導かれた。
     「いいか、私が来たことは言わずに静かに!」
     それほど広くない工場の構内と生産現場を全て見て回られた金正恩同志は、満足したように微笑を浮かべられた。
     「工場のどこを見ても気が引き締まるのは、やはり支配人がよい仕事をしているからです。」
     そのお言葉を聞いて、支配人は目を潤ませました。
     「大将同志、私共は、ただ将軍様が灯して下さった火を抱いて仕事をしただけです。」
     感情が高まった時にする癖なのか、彼女の言葉は「ええと」で始まり続いた。
     「ええと・・・その日、私が工場に戻ってきて将軍様の綿の手袋の話をすると、従業員が皆泣きました。大将同志が胸を痛められた話まですると、泣き声の海となってしまいました。しかし、その涙が力となったので、設備更新も生産現代化も、ええと、問題ではありませんでした。そして、少しでも将軍様にお喜びいただけるのではないかと思いつつも、再び問題がないか点検をして改善をしていきました。」
     金正恩同志は、明るい目つきで首を縦に振られました。素朴ではあるが、剛毅な女性支配人のその気持ちに何よりも感心されたのです。
     「多くの仕事をしたということが分かります。本当に女性の力で大変なことをしました。そうだよな、ヒョンジンドンム?」
     彼らの成果を労われようとする金正恩同志の方を見ながら、ヒョンジンも共感して微笑を浮かべた。
     「私たちの将軍様でなければ、ええと、私どもに生産正常化の火を灯して下さることはおできにならなかったでしょう。本当に、将軍様が小さな地方産業工場に過ぎない私共の工場に来られ、新しい創造の火を灯して下さったおかげです。」
     続けて彼女は、表彰休暇で家に帰ってきた同じ工場のある女性の息子である兵士の話をした。
     「・・・休暇の荷物を入れたリュックサックを置くと、直ぐにライトアップ研究者たちと寝食を共にしたその兵士は、軍務に戻る日に工場の人々にこんな言葉を残しました。『私は自分の故郷、自分の家を明るくライトアップして軍務に戻ります。この火、偉大な将軍様が抱かせて下さった火が、私の心臓を燃やしている限り、祖国の防衛体制はいつでも鉄壁です。』この言葉を聞くと、ええと、涙が溢れだしてきました。私たちが喜ぶその火が、ええと・・・私たちの将軍様のご苦労の代償のようで・・・」
     「ええと」を連発しながら続けたスキ支配人の言葉が、突然、その流れを断った。将軍様への思いに濡れる彼女の心中を推し量られた金正恩同志も、その手袋にまつわる出来事を思い出されて胸が締め付けられた。
     「本当に私たちの火には、その根底に涙の池があるのです。幸福の火を灯して下さろうと私たちの将軍様がかき分けられた冷たい雪と雨、吹雪の下から今日の祖国繁栄の火が灯り、人民の笑い声が生まれ出たのではありませんか。だから、我々人民は、元山のライトアップのニュースを聞き、皆が将軍様の労苦の上に咲いた火の花だと涙をこらえることができません。」
     ヒョンジンのむせび泣くような重い声であった。
     金正恩同志は、そのとおりだというように首を振られ、文スキに視線を向けられた。
     「将軍様が抱かせて下さった火!本当に意味深い言葉です。敵共が社会主義の最後の火が消える日が来たと『崩壊』のカウントダウンをしていた時、誰がこんな明るい今日を見通すことができたでしょうか。だからこそ我々は、明るくなる祖国の野山、移り変わる新しい姿を見せる今日の社会主義の火をぼんやりと見ることはできないのです。チャンジャ江の火の夜景や元山のライトアップは、朝鮮がどのように赤旗を守ってきたのかを火の言葉として刻み込んだ歴史であり、風雨、吹雪をもものともせず先軍長征千万里を歩んでこられた将軍様の献身により成し遂げられた希望の創造物なのです。」
     文スキとヒョンジンの胸は、その場の雰囲気を一変させ、火について深遠なる世界についてお話になる金正恩同志に魅了された。
     しばらく深い追憶の中で思索をしておられた金正恩同志は、情緒的な語調で続けられた。
     「今は、首領様を失った後、血の涙を流しながら将軍様がタバクソル守備隊に向かわれた時とは違います。試練の暗闇は消え去り、今日、我々は強盛大国の夜明けを迎える山頂に立っているのです。苦難の千里を超え、幸福の万里を目前にした直線走路に入っているのです。幸福は待っていれば来るものではなく、創造で迎えるものです。金亨稷先生が息子の代で出来ないのなら、孫の代で革命を最後まで貫徹しなければならないとおっしゃったように、革命はひ孫の代まで続けなければならないとおっしゃった将軍様のお言葉が毎日、毎時、私の心臓を力強く鼓動させています。強盛大国を目前に眺めながら、我々は走っています。今、その大門を叩く時が来ました。晴れやかな気持ちで力強く叩いてみようではありませんか。これは、将軍様の意志なのです。」
     周囲を見回される金正恩同志の目は、確信と意志の光で力強く満ちていた。
     「今日、支配人ドンムと将軍様にお喜びいただけるようなよい知らせをお伝えしたのですが、僕も答礼として見せたいものがあります。強盛大国の大門に入る入城式の宴会とでも言うか・・・夕方、みんなでその場所に行きましょう。」
     「?!」
     その日の夜、とうとう我々式の新しい祝砲発射プログラムで祝砲の芸術化、造形化、律動化を最高の水準で完璧に実現した最終試験発射が成功裏に行われた。発射課程がプログラム化され、歌まで組み合わされた新スタイルの祝砲であった。

    「偉大な首領金日成同志と偉大な領導者金正日同志の銅像を国家科学院に高く頂いた」:銅像の種類 (2014年10月7日 「労働新聞」)

    「朝鮮中央通信」のサイトも『労働新聞』のサイトも今日はなかなか更新されない。昨日は、「金正日労働党総秘書就任17周年中央報告大会」もあったので、報道ネタはあるはずなのだがなぜ更新が遅れているのだろうか。西海での韓国との銃撃戦についてもまだ何も伝えていない。

    「国家科学院」に建立された銅像を見ていたら、2人のスタイルがこれまでの銅像と少し違うことに気付いた。「朝鮮中央通信」と『労働新聞』サイトで検索できるものだけであるが、銅像写真を集めて比較してみることにする。

    「国家科学院」に建立された最新銅像。金日成は右手を腰に当て、金正日は両手を後ろで組んでいる。金日成のコートと、金正日の「野戦服」は右側がめくれている
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    Source: 『労働新聞』、「위대한 수령 김일성동지와 위대한 령도자 김정일동지의 동상을 국가과학원에 높이 모시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-10-07-0001&chAction=T

    基本形となる「万寿台」銅像。金日成は右手を前方挙げ、金正日は左手を腰に当てている。金正日の「野戦服」は左側がめくれている。
    万寿台銅像
    Source: KCNA、「김일성동지와 김정일동지의 동상에 전국도대항군중체육대회-14 참가자들 꽃바구니 진정」、2014.9.30報道

    清津市の銅像。金日成は後ろで手を組み、金正日は右手を腰、「野戦服」も右側がめくれている。
    清津市銅像
    Source: KCNA、「김일성동지와 김정일동지의 동상을 청진시에 높이 모시였다」、2014.9.6報道

    新義州市の銅像。細部までは見ていないが、「国家科学院」銅像と同じスタイル。
    新義州銅像
    Source: KCNA、「김일성동지와 김정일동지의 동상을 신의주시에 높이 모시였다」、2014.7.24報道

    「松涛園国際少年団野営所」の銅像。場所柄、子供たちと「大元帥様」というスタイルである。金正日は「野戦服」のコートを着用していない。
    松涛園銅像
    Source: KCNA、「위대한 김일성대원수님과 김정일대원수님의 동상을 높이 모신 송도원국제소년단야영소 준공식 성대히 진행」、2014.5.2報道

    元山市銅像。「国家科学院」と同じ。
    元山銅像
    Souce: KCNA、「김일성동지와 김정일동지의 동상을 원산시에 높이 모시였다」、2013.12.22報道

    「錦繍山太陽宮殿」内の銅像。「大元帥様」たちは、手を後ろに組み、室内にいるからか両名ともコートは着用していない。
    太陽宮殿銅像
    Source: KCNA、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조국해방전쟁승리 61돐에 즈음하여 조선인민군 지휘성원들과 함께 금수산태양궁전을 찾으시였다」、2014.7.27報道

    「万寿台議事堂」内の銅像。「錦繍山太陽宮殿」内銅像同様、「大元帥様」たちはコートを着用していない。金日成は「太陽宮殿」内銅像と同じスタイルだが、金正日は左手にノートのようなものを持っている。
    万寿台議事堂銅像
    Source: KCNA、「조선 최고인민회의 제13기 제2차회의 진행」、2014.9.25報道

    こう見ると、「国家科学院」スタイルが最もポピュラーなようである。何を基準に決めているのか分からないが、羅先市にはどれが建立されるのであろうか。

    『労働新聞』はまだ更新されていない。

    「<録画報道>第17回アジア競技大会で特記すべき成果をあげた我々の選手が平壌到着及び沿道歓迎ニュース」 (2014年10月5日 「朝鮮中央TV」)

    5日は午前9時から「朝鮮中央TV」が放送していたにもかかわらず、ストリーミングが終日なかった。今朝、uriminzokkiriを見たら、昨日放送された主要な番組がアップロードされていた。中でもアジア大会に参加した選手団の帰国を紹介する表題の番組は興味深いので紹介しておく。

    北朝鮮選手が「14の種目に参加」し、「金メダル11個、銀メダル11個、銅メダル14個を獲得した」と平壌空港で紹介する「体育省副相」のウォン・キルウ
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    過去記事でも紹介したサッカー女子、ラ・ウンシム選手のお父さん。「誇らしい娘たちを育ててくれた母なる党にお礼を申し上げたいです」と述べている。家でのインタビューとは違い、「公式的」なことを言っている。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    ホ・ウンビョル選手のお母さん李スンヒもインタビューに答えている。中央で画面を左右に分断するという編集をしている。あまり見ない切り方である。「町中の人が訪ねてきてお祝いしてくれるので、私たちの家族はその日からずっと名節です」と話している。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    平壌空港に到着した高麗航空機からまず降りてきたのはやはり女子サッカーチームであった。タラップの途中で立ち止まり「敬愛する金正恩元帥様万歳!」と万歳三唱。通過儀礼であろう。
    20141005_sonsu kigukflv_000270210
    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    玄永哲(国防委員会副委員長)、金己男(労働党秘書)、崔泰福(最高人民会議議長)、崔龍海(国家体育指導委員会院長)、金養建(統一戦線部長)などが出迎えに出ている。訪韓した金養建が出てきているのは、「南朝鮮」の地でよく戦ったという意味合いであろうか。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    「我が国のサッカー女子チームに3対1で破り名誉の1位を勝ち取った時、とても興奮しました。日本チームを夜中の2時までテレビを放送し、我々の女子サッカーチームが最高だ誇りだ、元帥様に喜びを与えた女子チームを熱烈に歓迎します」と興奮気味に語る男性。やはり、女子チームが優勝した日、0時から「録画実況」を放送したというのは、いかに「日本を破り優勝」が大きな出来事でったかを示しているようである。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    車列は先頭が女子サッカーチームを乗せたオープンの大型車、それに続くオープンの大型車にはその他の種目で金メダルを取った選手が乗っているようであるが、カメラは女子サッカーチームを中心に撮影しており、2台目の大型車の選手たちはほとんど写らない。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    沿道で歓迎する人々。北朝鮮では、しばしば「沿道歓迎」をやる。例えば、「銀河3-2号機」打ち上げに成功した科学者の平壌訪問時もこうした「沿道歓迎」を行ったが、その時とはかなり雰囲気が違う。というのは、下の写真でも見られるように「動員」されたと思われるチマチョゴリを着て花束を持った人の他にも後ろの方で多くの人々が歓迎をしている。また、「動員」による歓迎の場合、無関係な様子で道を歩く市民も写るのだが、今回はそうした人はほとんど出てこない。日曜日の凱旋だったということも影響しているのかもしれないが、こんなに「非人工的」な歓迎風景は初めて見た。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    また、いつもと雰囲気が違うのは、沿道の建物である。番組を見ていると、沿道の建物で窓がい空いている部屋がたくさん写っている。そして、例えば下の写真で見られるように、窓から手を振って選手を歓迎している人々もたくさんいる。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    北朝鮮報道では「煮えたぎっている」という表現をしばしば使うが、この歓迎風景を見ていると、まさに平壌全体が「煮えたぎっている」ように見える。一方で、やはりこの番組でも男子サッカーチームについては一切紹介されなかった。冒頭に書いた「銀メダル11個」の1つにはカウントされているはずだが、あれだけ頑張ったのに試合結果すら紹介されないというのは気の毒で仕方がない。「南朝鮮に負けた」というのが最大の原因なのだろうが、それでも男子チームも祝福して欲しいものだ。

    番組は「祖国賛歌」が流れる中、「大元帥様」の銅像に凱旋報告をする選手たちの姿を映しながら終わる。
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    Source: KCTV, 2014/10/05放送

    短編小説「火の約束」3:花火にまつわる金日成の追憶 (2014年10月2日 「uriminzokkiri」)

    (第3部)
    雑誌『青年文学』2014年第1号収録
    短編小説「火の約束」 作:金イルス

    火の約束
    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa5&no=87073

     突然、人の気配を感じられた金正恩同志は、顔を上げられた。いつの間に戻ってこられたのか、偉大な将軍様が後にいらっしゃった。
     「邪魔しないようにそのまま行こうとしたのだが・・・」
     将軍様は、立ち上がろうとする金正恩同志を止めながら、横の椅子に腰掛けられた。
     「夜も更けているのに、何をしてるんだ?」
     「祝砲発射プログラムをもう組み直しているところです。」
    金正恩同志は、新しい祝砲の開発状況と最大の懸案となっている制御プログラムについて具体的に話された。
     「すると、制御プログラムを大将が直接組むということだな。新しいものを創造しようとする、その気迫はよいことだ。僕も前から新しい祝砲を我々の人民に見せてやろうと思っていたのだが、僕の気持ちを大将が分かってくれたんだな。本当にありがたい。」
     誇らしげな眼差しで金正恩同志を見詰めておられた将軍様が「火!」と低い声で独り言のようにつぶやかれた。胸の深いところに埋もれていた痛みと苦悩が一緒ににじみ出ているような震えた声であった。将軍様の目には追憶の光が輝いていた。
     「火の貴重さを最も痛切に感じたのは、苦難の行軍の時だった。実際、僕は前方視察を終え、灯の消えた平壌の通りにさしかかる時、最も胸が痛かった。『一筋の明るい光でも与えることができるなら』という詩があるだろ。その詩の一節がまさにその時の僕の感情だった。だから、僕の体を燃やしてでも、人民に明るい光を与えようと決心したんだ。・・・」
     金正恩同志は、喉元がきつく締め付けられるのを感じた。将軍様が行軍の先頭に立っておられた日々が涙とともに蘇り、人知れず重病を患っておられながらも、自分よりも祖国と人民をまず考えられる将軍様のお姿が痛みと共に目を突き刺した。
     「将軍様、これからは私が将軍様のその重荷を担ぎますから、1日だけでもゆっくりとお休み下さい。痛切なお願いです。」
     偉大な将軍様は、粛然とした感情を抱いておられる金正恩同志の両手を恩情深く握られた。
     「ついに僕が望んでいた日がやってきた。新しい祝砲発射は、我々がこの地の上にいかにして強盛大国を打ち立てるかという朝鮮の決心と意志を実際に示すことになるだろう。僕は大将を信じている。全世界に朝鮮の未来を実際に見せてやってくれ。」
     「将軍様、分かりました。将軍様の信念であり、我々人民の願いである強盛大国を打ち立てる道に私の全てを捧げます。」
     将軍様が部屋を出て行かれた後も、金正恩同志は、心の中で空高く打ち上げられる花火を長い間止めることができなかった。走り出したかった。心地よい夜の空気を吸い、やってくる朝鮮の未来に向かって走って行きたかった。
     金正恩同志は、祝砲発射準備状況の報告のためにちょうどやって来たシンヒョクジンと共に外に出られた。
     車に乗られた金正恩同志は、直接ハンドルを握りアクセルを思い切り踏み込まれた。
     金正恩同志のお気持ちを察するかのように、車は首都の夜道を軽快に走った。
     市内中心部と忠誠橋を過ぎ、統一通りの入り口に至った。なぜここに来たのかご自身もお分かりではなかった。車に乗られた時から、何かが金正恩同志をここへと導いたのであった。月の光を反射して輝く川の水をご覧になって、やっとご自身がなぜここに来て、何がご自身をここへと導いたのか気付かれた。
     金正恩同志は、川縁に車を止め、ヒョンジンと一緒に川岸を歩かれた。
     流れる川の水音に大同江の語りかけを聞かれているように、無言で歩いておられた金正恩同志は、ヒョンジンに静かに尋ねられた。
     「ヒョンジンドンム、お父さんも砲兵でしたよね?!」
     意外な問いかけにヒョンジンは目を丸くするばかりで、答えは全然出てこなかった。
     金正恩同志は、彼の答えを待つことなく、独り言のように静かに言われた。
     「我々は、見ることができなかったが、この大同江はその日の光景を全て見たと思うんだ。戦勝のその夜、ここに来られた首領様のお姿も見て・・・ヒョンジンドンムのお父さんが打ち上げた祝砲も見て・・・」
     金正恩同志は、物思いにふけるような眼差しでヒョンジンを見詰められた。
     「きっと、首領様が立っておられた場所がこの辺だと思います。ヒョンジンドンムも首領様が戦勝広場の主席壇から戻られる途中、江南窯業工場に立ち寄られたという事実については知っていると思います。しかし、その日の夜にあったことについては知らないのではないでしょうか。・・・」
     その日は、7月28日。
     江南窯業工場を訪ねられた首領様は、夜遅くになって平壌に向かわれた。
     「9時までに平壌に戻らなければならないのだが・・・もう少しスピードを出してくれ。」
     首領様は、何回も腕時計に目をやりながら、繰り返し催促された。車の中では、まるで9時に向かって時を刻むような秒針の音が聞こえた。
     「大同江が見えます。」
     窓から半身を乗りだしていた副官の金オクピルが大声で叫んだ。その声に引き付けられるように、静かに流れる大同江の水面がぼんやりと視野に入り、川岸で夜釣りをする何人かの姿が見えた。
     首領様はちらっと時計をご覧になり、おっしゃった。
     「時間になったな。ここで降りて見ていきましょう。」
     「ここ・・・ですか?!」
     オクピルが驚いたように尋ねた。
     「そうだ。9時になったぞ。」
     その瞬間、突然、空にきらきらと輝く光が走った。続けて、ドーン、ドーンという低い花火の音が響き渡り、車体がぐらぐらと揺すられる中、鮮やかな色に飛び散る幻想的な光が車窓を覆った。
     「祝砲だ、祝砲!首領様、祝砲です!」
     オクピルが慌てふためいて甲高い声を上げた。
     ついにその時刻になったのだ。サインしておいた最高司令官命令どおりに、祖国解放戦争の歴史的な勝利を記念する祝砲を打ち上げているのである。
     百数十発の祝砲が一斉に砲門を開くと、天と地がひっくり返るようかのような激烈な振動があった。
     市中心部の大同江岸に眩しい花火の嵐が連続して打ち上げられていた。空がグルリと回るような感覚!瞬間、鋼鉄の心臓をもたれた首領様も心に安らぎを感じられた。
     戦争の3年間、どれほど多くの爆音を聞かれたことだろうか。しかし、そうした如何なる爆音も揺るがすことができなかった偉大心臓に突き刺さる異種の衝撃に耐えることができないように、車内で煮えたぎる激情に驚かれるように、首領様はすっと体を起こされた。
     いつ車が止まり、副官や運転手が駆け下りたのか分からなかった。後ろの車から降りた幹部と随行員たちも全て自己を忘れたように慌てて川岸へ降りていった。
     彼らの後から首領様も川の堤へ向かわれた。足下に何が落ちているのかも分からなかった。梅雨が残していった水たまりであろうが、ボウボウと茂った草であろうが、ゴロゴロとした石ころであろうが、関係ない。皆、表現しようのない熱い波動にただただ全身を押されていると感じていた。
     首領様は、祝砲を打ち上げの命令書にサインされた時も、今日のこの行事の光景を想像されはしたが、その時とは異なる興奮と喚起が首領様の渾身から湧き出ていた。
     「万歳!万歳!」
     勝利の気迫と共に打ち上がる花火に向かって叫ぶ声が響き渡っていた。
     「花火だ、花火!」
     川岸で魚を捕っていた人々も子供たちも次々と歓声を上げた。
     「そうだそうだ、花火だ・・・」
     首領様は、まだ祝砲という言葉を聞いたことも見たこともない子供たちの素朴な声を小声で繰り返された。
     今まで、一つの火の光も見ることができなかった平壌が、胸を開いて打ち上げられる祝砲を見ながら、人々は何を考えているのだろうか。敵共の砲撃で防空壕の灯火だけではなく、タバコの火まで覆い隠さなければならなかった日々の壮絶な追憶、無数の苦痛に満ちた夜と永遠に決別し、明るい明日を声高らかに呼ぶ喚起・・・
     川岸に立たれ、平壌の夜空を飾る戦勝の祝砲を見詰めておられた首領様は、ちらりと視線を移した。祝砲の火の光がパラパラと降り注ぐ中、光と暗闇がはっきりとしたコントラストをなす平壌の夜景が首領様の胸を鋭くえぐった。
     花火の光が反射し明暗を繰り返す大同江の対岸は平川埠頭周辺なのだが、目に入るのは砲撃で片側が崩落してしまった大同橋だけで、破壊されていない一軒の家も、光一つも見えなかった。花火の光が輝いた瞬間、水墨画のようにはっきりと見える全ての光景が、首領様の胸に突き刺すような鋭い痛みを感じさせた。
     重い思索にふけり、川の土手の上を何歩か歩まれた首領様がすっと顔を上げられ、暗闇の中でも悠然と火の流れを抱き、滔滔と流れる大同江の水を眺められた。
     大同江よ、お前の流れの上に今、廃墟から立ち上がる朝鮮の新しい歌を、明日に対する夢と希望を浮かべてくれ。あの祝砲のように類い希な、皆が喜び万歳を叫ぶ社会主義楽園の幸福の円舞曲をお前にやろう!・・・
     「これは、その夜、首領様が大同江と共に人民と分け合った心の対話であり、祖国の未来への誓いでした。その時、首領様は空に輝く祝砲の火をこの地に全て降り注がせ、世界が羨むように我が祖国を百倍、千倍と建設する決心をされたとお話になりました。・・・」
     首領様のそのお言葉が耳元で聞こえたように、金正恩同志は厳かに大同江の向こうの空を眺めておられた。
     金正恩同志の話を聞いているヒョンジンの胸の中では、爽快なこだまのようなものが広がっていた。
     よく聞け、大同江よ!金正恩同志は、戦勝の祝砲に刻み込まれた意味深い事実を追憶として抱いておられるだけではない。そして、単なる思いつきでここに来られたのでもない。
     ヒョンジンには、金正恩同志が心中で叫んでいる声がはっきりと聞こえるようであった。
     「首領様!僕は必ず朝鮮の祝砲を打ち上げます。首領様が願い、将軍様が願っておられる朝鮮の祝砲をあの空で輝かせます。朝鮮が強盛大国をどのように建設するのか、この金正恩が世界にはっきりと見せてやります。」
     ヒョンジンは、暗闇の中で悠々と流れる大同江を感情を込めて眺めた。大同江よ、今日を忘れるな!

    「20時報道」:「録画実況」を屋外で見る朝鮮人民、アジア大会女子サッカー優勝を喜ぶ朝鮮人民と家族 (2014年10月2日 「朝鮮中央TV」)

    記事にするのが遅れてしまったが、「朝鮮中央TV」が「20時報道」などで北朝鮮サッカー女子の決勝戦を見る朝鮮人民の姿や家族のコメントなどを紹介している。

    屋外に設置された大型テレビで「録画実況」を流している。大型スクリーンが出る場面では、しばしば平壌駅前に設置されたスクリーンが使われるが、このスクリーンはどこのものなのか分からない。
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    北朝鮮選手のゴールを見て地面に座っていた朝鮮人民が立ち上がって喜んでいる
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    嬉しそうに日本に勝った感想を語る朝鮮人民。右に座っている人など本当に嬉しそうな顔をしている。「録画実況」の解説もそうであるが、インタビューに答える人も「日帝時代」の恨み辛みは一切口にしない。インタビューだからということもあろうが、政策的にもスポーツと「歴史」を区別しているところは評価できる。
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    多くの朝鮮人民が見ている。平壌で撮影された映像だと思うので、家にテレビがないからということよりも、みんな一緒に見たいから集まってきているのではないだろうか。それにしても、0時からの放送である。翌日の仕事は大丈夫だったのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    表彰式における北朝鮮の「愛国歌」が流れるシーンで涙を浮かべる女性
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    近所の人が集まって一緒にテレビを見ている。左で嬉しそうな顔をしているのが、「速度戦」でゴールを決めたラ・ウンシム選手のお父さん
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    画面を指さしながら自分の娘の活躍について嬉しそうに語るラ・ウンシム選手のお父さん。横にいる人は、「一人でテレビを見ていたのだが、ウンシムが活躍しているので、一緒に応援しようと駆けつけた」と語っている。
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    試合が行われた日、朝鮮人民はいつものように寝ていたのであろう。ところが、23時頃、「0時から放送」がアナウンスされ、皆慌てたのかもしれない。この家でテレビを見ている人の中できちんとバッジを付けているのは、上で紹介した「駆けつけた」という男性だけである。

    「試合開始後12分頃、北朝鮮選手がゴールを決めたとき、私はとても興奮して、隣に座っていた婆さんの眼鏡を取ってしまいました」と語る若い頃サッカーをしていたという老人
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    「敬愛する元帥様が、競技を前にした我々の女子サッカー選手の師範競技をご覧下さり、彼女らに大きな愛と信頼を抱かせたことが、今回の勝利に結びついた最も決定的な要因だと思います」と語る男性。インタビューを結ぶには相応しい発言である。
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    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    男子で、これが出来なかったのは、やはり残念だったと思う。

    「第17回アジア競技大会閉幕式に参加する黄炳瑞同志と一行出発」:大物(黄炳瑞、崔龍海、金養建)の韓国訪問、韓国政府関係者と話をするのか (2014年10月4日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」の4日配信記事をチェックしながらサッカー関連の記事を書いていたら、4日付けの興味深い記事が掲載されていた。なんと、北朝鮮の大物2人(黄炳瑞、崔龍海)と南北関係担当の金養建がそろって「アジア大会閉幕式参加」を名目に韓国を訪問するという。これだけの大物が韓国を訪問するのだから、韓国当局も「閉幕式参加」だけで終わらせはしないと思うが、まだ、韓国側の反応については確認していない。

    北朝鮮は、朴槿恵の国連演説などを受け彼女を激しく攻撃しているが、一方で「10.4宣言を尊重しよう」とも訴えている。閉幕式は10月4日(今日)なので、「10.4宣言」に合わせて北朝鮮の大物3人がそろって参加するということには、相当の意義がある。

    南北関係で動きがあるかもしれない。

    閉幕式の生中継を見たいのだが、日本では放送されないようだ。

    <追記>
    韓国メディアを調べていたら、韓国メディアの報道があった。

    記事によると、北朝鮮側から3日朝に黄炳瑞などを派遣したいと通告があったという。北朝鮮代表は、4日午前10時頃、仁川空港に到着、韓国側の金寛鎮国家安保室長、柳吉在統一部長官、金奎顯国家安保室第1次長と昼食を共にするという。金寛鎮と柳吉在については、北朝鮮がこれまで激しく罵った相手であり、どのような雰囲気で昼食会が開催されるのか、また何が話されるのかが注目される。大物3人を10月4日という節目の日に派遣しているので、北朝鮮から南北首脳会談が提案される可能性もある。

    北朝鮮一行は、閉幕式が終わったら直ぐ22時頃に飛行機で平壌に戻るという。

    KBS GLOBAL, High-ranking N. Korean Officials in S. Korea to Attend Asiad Closing Ceremony, http://world.kbs.co.kr/english/news/news_Po_detail.htm?No=105725
    同上(韓国語版)、「북한 고위대표단, 아시안게임 폐회식 참석」、http://world.kbs.co.kr/korean/news/news_IK_detail.htm?No=223155&id=IK

    北朝鮮女子と韓国男子でサッカーのメダルを分け合った両国なので、それこそ「ウリミンゾクキリ(我々民族同士)」で話が進むのかもしれない。「元帥様」は表に出てこないが、今回の韓国訪問は、直接彼が指示していることは間違いない。

    南北関係改善に向けたよいニュースを持って、10月10日の「創党記念日」に元気な姿で登場できることに期待したい。

    <追記2>
    コメント内にも書いたのだが、4日の「朝鮮中央TV」放送開始直後(15時頃)、黄炳瑞一行の訪韓についての報道があった。内容は「朝鮮中央通信」と同じ。

    北朝鮮、アジア大会男子サッカー、韓国に惜敗:結果を報道しない北朝鮮、 「10.4共同宣言」7周年、「国家体育指導委員会」と金正恩、崔龍海新委員長韓国訪問 (2014年10月4日 「朝鮮中央通信」)

    10月3日夜、アジア大会男子サッカーの北朝鮮対韓国の決勝戦が行われ、1対0で北朝鮮が惜敗した。視聴率が取れない番組は放送しない資本主義国・日本の主要放送局は生中継をしていなかったようで、韓国の放送局によるネット中継でのみ見ることができたようだ(もしかすると、CSやBSの有料チャンネルでの放送はあったのかもしれないが)。

    北朝鮮も試合が行われている時間帯は、金メダルを取った女子サッカー同様、別の番組を放送していた。女子優勝後の状況については、過去記事に書いたとおりであるが、男子については、この記事を書いている4日朝に至るまで一切報道していない(「朝鮮中央TV」、「朝鮮中央通信」、「労働新聞」を確認)。

    北朝鮮が惨敗したのであればまだしも、日本のメディアが報じている試合展開を読んでも、非常によく戦い、しかも勝負を決めた韓国のゴールの際の審判の挙動に問題があったようだ。

    韓国以外に敗れて銀メダルを取ったのであれば直ぐに報道したのかもしれないが、やはり「南朝鮮」に敗れたのは痛いのであろうか。確かに、女子で日本を破り、男子で韓国を破って優勝すれば北朝鮮にとって最高の結果ではある。ベストな結果を達成できなかったのが痛恨なのかもしれないが、ここは男性選手にも女子と共に「よくやった」と「元帥様」から「お褒めのお言葉」があってもよいと思うし、そのぐらいの度量は欲しい。

    イラクとの準決勝で勝った際には、翌日の『労働新聞』に写真入りの記事が出ているが、試合から2日経過した『労働新聞』で全く触れられず、海外向けの速報を「朝鮮中央通信」が流していない。

    対イラク戦で北朝鮮選手がゴールした瞬間
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    Source: 『労働新聞』、「우리 나라 남자축구팀 결승경기에 진출 제17차 아시아경기대회에서」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-10-01-0026&chAction=S

    今、結果をどのように報道するかを検討中なのかもしれないが、「結果は報じません」では朝鮮人民も納得しないであろう。思えば、「10.4共同宣言」7周年を迎えた今日、「同胞」である「南朝鮮チーム」を褒めつつ、北朝鮮チームを称えるというやり方もあろう。北も南も朝鮮民族なのだから、十分に「民族の力」は強調できるはずだ。

    話が前後してしまうが、北朝鮮が報じたここ数日のサッカー関連報道を紹介しておく。

    10月2日の「朝鮮中央TV」の「17時報道」の中では、「共同通信」の記事を引用しながら、「日本の共同通信が、我が国の体育強国建設熱風を紹介しました」とし、「敬愛する金正恩同志が体育強国建設を目標とされ、体育発展に力を入れておられることを強調しながら、金正恩同志が国家の全般的体育事業を統一的に掌握、指導する国家体育指導委員会を新たに創設し、体育施設を改築、拡張して下さり、特出した成果を出した選手にあらゆる愛と恩情を与えて下さったことについて言及しました」などと伝えた。創設時の委員長は処刑されてしまったが、アジア大会での女子サッカーなど、北朝鮮選手の活躍と金正恩の功績を結びつけている。一方、新委員長の崔龍海については、「共同通信」の元記事でも触れられていないからか、出てこない。

    そう思って「朝鮮中央通信」を見たら、黄炳瑞、金養建と共に崔龍海も「アジア大会閉幕式参加」のために韓国を訪問すると書いてあった。「朝鮮中央通信」の報道では「労働党中央委員会秘書」という肩書きが記されていたが、実体としては「国家体育指導委員会委員長」の肩書きを使うのであろう。ちなみに、黄炳瑞は「国防委員会副委員長、人民軍次帥」、金養建は「中央委員会秘書」という肩書きになっている。

    「共同通信」の報道(2014/09/24):
    『47NEWS』、「【仁川アジア大会】「体育強国」目指す北朝鮮 トップ選手には「英雄」称号」、http://www.47news.jp/47topics/e/257387.php

    「日本通信、我が国の体育強国建設熱風を紹介」と字幕
    M3u8 Stream20141002flv_008098609
    Source: KCTV, 2014/10/02放送

    短編小説「火の約束」2:金正恩を扱った小説、花火打ち上げ、自分の技術 (2014年10月2日 「uriminzokkiri」)

    (第2部)
    雑誌『青年文学』2014年第1号収録
    短編小説「火の約束」 作:金イルス

    火の約束
    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa5&no=87073

     祝砲(訳注:「花火」の意、以下「祝砲」のママとする)試験発射終了後の帰路、金正恩同志にお言葉は全くなかった。
     金正恩同志の重い沈黙が、ヒョンジンの胸を重苦しくした。今日の祝砲試験発射は、ヒョンジンが金正恩同志から直接、課業として命じられ、長期にわたる準備の末、行ったものであった。ところが、何のお言葉もないところからして、絶対に金正恩同志の意図に反するものであったのであろう。
     しかし、いくら考えても引っかかるところがなかった。発射過程に失敗はなく、工程の各部にも手抜かりはなかった。コンピュータープログラムでコントロールした今回の試験発射を見て、新鮮な雰囲気がある、見事だと言う幹部たちの言葉を聞き、表には出さなかったものの、心を躍らせていたヒョンジンであった。
     金正恩同志にお喜びいただけたと思っていたのに、こんなに暗くなられるとは。彼の手のひらからは、じわじわと汗がにじみ出ていた。
     こんな疑問を抱いたまま、ヒョクジンは金正恩同志の後について職務室に入った。
     その時、職務用の机の電話がリーンと鳴った。金正恩同志は、立ったまま電話に出られた後、ヒョクジンにお話しされた。
     「ヒョンジンドンム、急な用件が発生し、しばらく出かけてくるから、その間にこの資料をもう一度見ておいてくれ。」
     金正恩同志は、職務用の机の片隅に積まれていた資料をヒョンジンに手渡し、部屋を出て行かれた。
     ヒョンジンは、少しホッとしながら、資料を眺め始めた。祝砲発射に関する制御プログラム開発状況の資料であったが、そのほとんどは既に見たものであった。ページを再びめくりながら、ヒョンジンの考えが各ページに記されていることの確認もできた。
     前に提示された資料なのに、なぜまた見ろと言われたのだろうか?あれこれ考えてみたが、答えに行き着くことはできなかった。
     しばらくすると、闊達な歩みで部屋に戻ってこられた金正恩同志は、恩情に満ちた眼差しでヒョクジンを見詰められた。
     「ヒョクジンドンム、資料を見直しながら考えたことはありませんか?」
     ヒョンジンは恥ずかしさで顔が熱くなった。いつも金正恩同志の意図を迅速に実行することができない自分が心苦しかった。
    金正恩同志は、呵責の念に駆られた彼の表情をしばらく眺めた後、部屋の中を歩きながら語られた。
    「今日の試験発射は、全ての過程で何の問題もなく無難に行われた。しかし、そこに何かがない。我々のものが見えなかったではないか。我々の血が流れ、我々の息遣いが感じられなかった。一言で、我々式ではなかったです。ヒョンジンドンム、何か言ってみなさい。強盛大国を誰かが来て建設してくれるのか、そうでなければ空からただでポトンと落ちてくるのか。そうではありません。将軍様が打ち立てて下さり、将軍様の領導に従って我々人民が自らの手で打ち立てるものなのです。ですから、我々が今度打ち上げようとしている祝砲は、まさにその強盛国家の実体を見せるものなのです。それなのに、その実体を我々のものではない他人の技術で見せてもよいものでしょうか?」
     ヒョンジンの脳裏で、そして目前で、青い閃光が光った。暗闇を引き裂き、周囲を真昼のように明るくする自然の稲妻のように、その閃光の輝きで全てが真っ白になった。稲妻に続く雷鳴が、そして恐ろしい後悔と自責が、彼の全身に響き渡った。
     金正恩同志のお言葉、一言、一言が、杭を打ち込むように、ヒョンジンの胸にそのまま刻み込まれた。
     「我々の幸福は、必ずや我々自身の手で創造するという将軍様の信念と、我々人民の誇りを持ってやらなければ、我々式の祝砲も創造することができません。」
     金正恩同志の語調が力強く響けば響くほど、ヒョンジンの頭はどんどん下がっていった。いつも新しい想像の世界を志向しておられる元帥様の前に、身をさらしている自分が情けないばかりであった。金正恩同志が今回の祝砲発射の意義を何度も強調されたにもかかわらず、なぜ他人の技術を模倣することで満足してしまったのだろう。
     「私が気を抜いていました。」
     ヒョンジンは、自分の思いをそのまま吐露した。そうしなければ、気の重さに耐えることができなかったからだ。
     すると、ヒョンジンを眺めながら、金正恩同志は追憶に浸りながら述べられた。
    「何年か前、将軍様がおっしゃったお言葉を今でも忘れることができません。『慈江道がだんだん明るくなってきている。一点の炎の光がどれほどいとおしく、貴重であるのかを血の涙の中で体験した我々人民だ。だから、我々が座視することを望む敵共に見ろとでも言わんばかりに、蝋燭の火の下で爛漫の歌をうたい、たき火をしながら発電所の堰を築いた彼らが、今、楽園の火を自らの手で灯した。江界精神で完成したチャンジャ江の火の夜景!我々はそうして一つ、二つと、祖国繁栄の火をさらに高く掲げていくのです。』」
     堰を切った水のように、金正恩同志の語調は興奮で揺れていた。
     「ヒョンジンドンム、一度考えてみなさい。将軍様がなぜあれほどにチャンジャ江の火の夜景をご覧になり喜ばれたのか分かりますか。外国の繁華街の華麗なライトアップと比べれば素朴なものですが、我々人民の限りない精神力が苦難を勝ち抜き、創造した火の光だからこそ、あれほどまで満足されたのです。だから、将軍様は、チャンジャ江の火の夜景は、見るだけでも自然と新たな力が涌いてくるし、気合いが入るとおっしゃったのです。その火こそ、我々の手で作り出した我々の火なのです。他人がスイッチを切ったり入れたりすることが出来ない自らの火(訳注:電灯の明かり)ということなのです。我々の幸福は、我々の手で!自力更生を行う人には光明な未来がある!これが我々の創造哲学です。祝砲発射には、この精神が盛り込まれなければなりません。そうしてこそ、本当の意味での我々の祝砲となり得るのです。今度の祝砲発射の意図もそこにあり、叙事詩の主題と構成を決定する核心もそこにあるのです。どうだ?ヒョンジンドンム、新しい祝砲発射で我々は将軍様の決心、朝鮮の宣言をあの空に刻むその日まで力強く努力してみませんか。」
     金正恩同志は、ヒョンジンの手を熱く握りしめられました。自身を信じ、人民の明るい明日を信じておられる金正恩同志の信念と意思が脈打つ手であった。
     ヒョンジンは、金正恩同志の手から熱情がそのまま流れ込み、自分の体と心がどんどん熱くなるのを感じていた。

    短編小説「火の約束」1:金正恩を扱った小説、「お母さん(高英姫?)」も少し登場 (2014年10月2日 「uriminzokkiri」)

    uriminzokkiriに雑誌『青年文学』に掲載された短編小説「火の約束」が出ている。

    http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa5&no=87073

    実は、「火の約束」は単行本として出版されているようで、日本のテレビ放送で紹介されていた。羅先でこの本を入手できればよかったのだが、この本の存在を知らなかったので、探すこともしなかった。しかし、一部ではあるが、上記のとおりuriminzokkiriに「火の約束」が掲載されている。単行本を見ることができないので分からないが、忖度するに、『青年文学』に連載された「火の約束」シリーズをまとめて単行本として発刊したのではないかと思われる。

    北朝鮮小説は、これまでほとんど読んでいないが、「児童文学」は何編か読んでみた。それはそれで、なかなか面白かった。しかしそれを除き「北朝鮮文学」はほとんど手つかずの状態なので、金正恩や「お母さん」を扱った小説が他にあるのかも分からない。しかし、2014年に出た「火の約束」で金正恩の「大将時代」を扱っていることからすると、そんなに多くは出ていないような気がする。お父さんの下での修業時代も短かったし、現役指導者としての期間もまだ短いので、まだまだ小説の題材とするには活動歴が足りないのであろう。

    どこまで続けられるか分からないが、拙ブログでは、『青年文学』に掲載された「火の約束」の全訳して紹介してみたい。「文学翻訳」は苦手であるが、できるだけ「文学的」に訳すことも試みている(とはいえ、その質は保証しない)。

    (第1部)
    雑誌『青年文学』2014年第1号収録
    短編小説「火の約束」 作:金イルス

    火の約束

    「運転手ドンム、私と席を替わりましょう。」
    何回も腕時計をもどかしそうにご覧になっていた金正恩同志は、運転手の肩を軽く叩かれた。
    「暗いし・・・道も・・・滑りやすいのですが・・・」
    途切れ、途切れの言葉に、どうしてよいのか分からない運転手のもどかしさと緊張感がそのまま表れていた。
    外は、出た時パラパラと降っていた雪が、いつの間にか空を覆い尽くし、激しく降っていた。
    「だから、僕が運転するというのです。将軍様のところに早く行かなければなりません。」
    ついに、運転席に座られた金正恩同志は、疾風の如く車を飛ばされた。
    ヒョクジンは、金正恩同志と一緒に車を運転しているような気持ちで、大粒の雪が降りしきるフロントガラスの前方を緊張した眼差しで注視していた。しかし一方で、出発したときからの疑問が頭から離れなかった。咸鏡南道と江原道一帯を何日間も現地指導されている将軍様と今朝お会いになったのに、金正恩同志はどうして今夜またそこに行かれるのだろうか・・・?
     万事に慎重かつ几帳面で、機転の利くヒョクジンであったが、今回ばかりはどうしても金正恩同志の心中を察することができなかった。
     金正恩同志の力強い手に操られる乗用車は、少しも躊躇することなく高速で疾走した。風の音が車窓に響き、車体に降った雪が白い粉となり吹き飛んでいった。
     しばらくすると、人気のない道路を走る車のヘッドライトが宿所周辺の背の高いもみの木を照らした。
     「?・・・」
     金正恩同志は、一瞬、シートから身を乗り出され前方を注視された。宿所から続く道に白綿をざっくり分けたように2本の長いタイヤの跡が残っていた。それはまぎれもなく、将軍様が乗られた野戦車のタイヤ痕であった。
     将軍様はまた遠くに出かけられたのかぁ!もう少し早く来ればよかった・・・
     未練さと無念さとが混ざり合ったような眼差しで宿所の方を眺めておられる金正恩同志の視野に、固まったように立っている中年女性の姿が飛び込んできた。
     「誰だろうか?・・・」
     急ブレーキを掛けたが、車は走ってきた速度に勝つことができず、女性の前をだいぶ通り過ぎた所で止まった。車をバックさせられた金正恩同志は、直ぐにその女性が今回、将軍様が現地指導されたムンチャン郡基礎食品工場の支配人、文スキであることがお分かりになった。女性の口からもうもうと立ち上がる白い息が、彫刻像のように突っ立っているこの女性が生きている人間であることを証明していた。
     支配人ドンム(訳注:「ドンム」は本来「仲間」の意であるが、「~さん」程度に捉えればよい)がこんな所に何で?
     両手で目をこすっているので、泣いているようであった。
     車から降りられる金正恩同志に気付いた女性は、驚きと喜びに弾かれたように金正恩同志のもとに駆け寄って来て、胸に飛び込みたい気持ちを抑えながら挨拶をした。
     「尊敬する大将同志、こんばんは。本当にお目にかかりたかったです。」
     金正恩同志は、寒い日にもかかわらず手袋もしていない女性支配人の手を温かく握って下さった。
     女性支配人は、本当に泣いていた。赤く腫れたまぶたが、グリーンの街灯の光の中にはっきりと見えた。
     「こんな夜中になぜこんな所にいるのですか?」
     「大将同志、あの・・・これをご覧下さい。将軍様が・・・お出かけになり、そして・・・」
     文スキは、すすり泣きながら金正恩同志に手袋を差し出した。
     その瞬間、金正恩同志の胸を重いものがガツンと打った。将軍様がはめておられた手袋、金正恩同志にとっては、ずっと前から見慣れた粗末な手袋であった。長い間お使いだったので、毛羽立ち色もあせ、見苦しくなっていた。
     お母様(訳注:高英姫)が何度も新しい手袋を差し上げたのに、いつも「まだ、縫い直せば何年も使えるから、新しいのは買わなくてもいい。今、着ている綿入りの野戦服もそうだし、この手袋にも愛着がある。だからです。」と言われた将軍様のお声が再び耳に響いた。
     支配人同志は、自分の工場を訪ねてこられた将軍様が、新たに生産した基礎食品をご覧になりながら外された手袋であると泣き声で話した。
     「私共がしたことって、いったいなんでしょう・・・女性が多い工場なので自ら生産活性化の火をともし、人民のために仕事をたくさんしたと、我々を褒めて下さりながら、ご自身は・・・」
     毛羽だった将軍様の手袋を見た支配人は、何も言うことが出来ず、ただ泣き続けたと語った。一国の首領である我々の将軍様が、どうしてこんな手袋を使われているのだろうか。あふれ出していた涙がやっと止まったので、正気になり急いで手袋を縫い直し、将軍様がおられる宿所を訪ねてきたが、将軍様は再び現地指導に行かれてしまい、おられなかった。支配人は、手袋をもっと早く縫い直すことができなかった自責の念に駆られ、嗚咽していた。
     「この・・・手袋すらはめられず、この寒い日・・・遠くに向かわれたなんて、どうしましょう。」
     手袋を受け取られた金正恩同志の目にも熱いものが込み上げてきた。
     まさにその日の早朝であった。遠方の現地指導から戻ってこられた父なる将軍様にご挨拶しようと部屋に入られた金正恩同志は、立ち止まられてしまった。
     将軍様がソファに半身横になられ目を閉じておられたからだ。
     「お体が・・・大丈夫ですか?」
     「とにかく足が固まってしまったようだ。」
     「・・・医者をお呼びにならないのですか?」
     「大丈夫だ。他の人が知れば、無用な心配をするから・・・」
     目頭が熱くなられた。将軍様も人間であられた。普通の人のように痛みも苦痛も感じておられた。しかし、それら全ての痛みと苦痛を静かにお一人で耐えられるそのお姿に胸が張り裂けるように痛かった。・・・
     金正恩同志がこの夜、将軍様の宿所に駆けつけられたのもまさにこのためであった。ご不自由なお体で、現地指導と前線視察の道を休むことなく歩み続けられる将軍様に、一夜だけでもゆっくりとお休みになっていただきたいという心情からであった。
     痛いほどの自責の念が金正恩同志の胸を容赦なく打った。
     女性支配人は、赤く腫れた目をこすりながら、かすれた声で申し上げた。
     「・・・私共がお役に立つことができないからです。将軍様がたくさんの仕事をしたと褒めて下さったとき、我々はただただ自分たちの喜びだけに浸っていました。将軍様が、このぐらいできればよい。しかし、人民のための仕事に満足ということはないと言われた時、はじめて我に返りました。将軍様がお求めになっておられることからすれば、我々はまだまだです。私は、これからもっと一生懸命仕事をして、将軍様を再びお迎えするつもりです。」
     金正恩同志は、自責の念で顔を上げることが出来ない支配人を見詰めながら、いつしかご自身も胸も打たれていることに気付かれた。
     「ドンムたちの過ちではありません。僕が将軍様をしっかりとお支えすることができなかったのです。将軍様の重荷を少しでも軽くして差し上げられたなら、こんなに冷たい雪降る夜道に出かけられることはなかったでしょう。・・・」
     逆にご自身を責められる金正恩同志のお言葉に、ヒョクジンも文スキ支配人も申し訳ないばかりであった。
     しばらくの間、無言で考えに浸っておられた金正恩同志が静かに語られた。
     「我々人民によい暮らしをさせようと将軍様は今日も冷たい雪道をかき分けながら強行軍をしておられます。我々人民が歓声を上げ、よい暮らしをする日は遠い将来の夢ではありません。それこそ、目前の現実として近づいてきているのです。」
     しばらくして、金正恩同志はヒョクジンの方を振り返られながら、決然とお言葉を続けられた。
     「ヒョクジンドンム、今日もひたすら人民のためにありとあらゆる労苦を全て背負っておられる将軍様のために、今、我々がしなければならないことは何だろうか。僕が少し前に言ったが、我々が建設しようとしている強盛大国がどんな姿なのかを、その実体がどうなのかを人民に早く見せてやらなければなりません。そうすれば、我々の人民が光明な明日に対する確信と楽観を持って、勇気百倍で立ち上がることでしょう。だから、僕は決心した。我々が迎える強盛大国の姿をあの空に大きく描いてみせる。我々人民だけではなく、世界中が見られるように。」
     「?!・・・」
     ヒョンジンと文スキの胸を揺さぶりながら、情熱と確信に満ちた金正恩同志のお声が再び響いた。
     「火で描いてやろう。多分、何百何万の言葉よりも火の言葉の方がずっと威力があるはずだから。」

    北朝鮮女子サッカーアジア大会で金メダル:「朝鮮中央テレビ」長い放送時間、李先生の解説 (2014年10月1日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」がいつまでたっても終わらない。どうなっているのかと思いながら見ていたら、23時1分頃、「視聴者の皆さんにお伝えします。今日、第17回アジア競技大会女子サッカー決勝戦で我が国女子サッカーチームが日本チームを破り名誉な優勝を果たしました。しばらく後、0時より中央テレビ放送で我が国の女子サッカーチームが日本チームを破った試合の模様を録画実況でお伝えします」とアナウンスがあった。

    番組を中断して繰り返しアナウンスを入れている。
    M3u8 Streamcdfcrflv_000392102
    Source: KCTV, 2014/10/01

    やはり、北朝鮮にとって「南朝鮮」と日本を連破したのは大変嬉しいことなのであろう。日本時間の10時頃生中継は終わっているので、2時間かけて「録画実況」を編成したということのようだが、非常に早い。

    日本との試合の間は、男子サッカーのイラク対北朝鮮「録画実況」を放送していた。

    北朝鮮対イラク男子サッカーの「録画実況」
    aboutblankccce4flv_000008940.jpg
    Source: KCTV, 2014/10/01

    「元帥様」の「体調不良」があるなか、朝鮮人民にとっては明るいニュースなのであろう。

    私が見た「朝鮮中央TV」放送で、0時を超したことはあってもまれ(もしかしたらなかったかも知れない)、しかも超えたとしても10分程度であったはずである。0時からハーフタイムをカットした全試合を録画で放送したとしても、ロスタイムも含めて1時間45分ぐらいになる。2時近くまで「朝鮮中央TV」が放送を続けるということは、私が見た限りでは極めて異例である。

    それにしても、今は時間つぶしの番組を片っ端から流している感じである。

    <追記>
    北朝鮮の解説者は、日本チームを以下のように評価している(より正確な訳は下記<追記2>参照のこと)。
    「アジアでも世界でも1位になった日本チームと互角に戦えるというのは、我々のチームも相当強いといえる」
    「日本チームは、独特な試合方式がないく、スペインチームを参考にしているようだ。一方、我々のチームは集団力を活かした力を発揮している」
    「他国のチームは、日本チームとの試合を恐れているが、我々はそうではない。どちらかというと、日本チームが我々チームとの試合を倦厭しているようだ」

    <追記2>
    解説は、「教授・博士、李ドンギュ先生」と紹介されている。所属はどこかは分からないが、「教授・博士」と紹介しているので、どこかの大学の体育系の学者なのであろう。李先生は、北朝鮮の女子サッカーについて、次のように解説している。

    李:「我が国の女子サッカーは、1980年代に始まりました。我が国は、他国と比べて少し遅く始まったのですが、1980年代に偉大な金正日元帥様のお言葉により、急速な発展の道を歩んできたと言えます。」

    「金正日元帥様」はママ。当時ではあるが、現時点では「大元帥様」と言うことが多い。編集を急いだためであろうか。日本の生中継では、「北朝鮮は1980年代から女子サッカーやっているので、歴史は『長い』」というような解説をしていたはずだ。

    李:「世界的に見て、女子サッカーがオリンピック種目となり、1996年から正式種目となりました。その時から世界的な関心も高まりましたが、その間、我が国の女子サッカーは世界女子選手権大会をはじめとし、様々な試合に出場してよい成果を上げ、アジアにおける強いチームになったといえます」

    李:「我々のチームは、2001年に始まったアジアカップ競技大会で1位になり、2003年と2008年にも連続して1位になりました。このように、3年連続で1位になり、アジアの強豪チームとしての位置を確実なものにしたといえます」

    李:「我が国のチームは、青年の時期(19歳未満のリーグ)から日本チームを破って、上がってきたといえます」

    李:「現在、日本チームは、2011年に開催された世界女子サッカー選手権大会で1位となり、2012年に開催されたアジアカップ大会でも1位になり、このように客観的な評価は、世界の1位のチーム、アジアの覇権チームという評価を受けているチームです」

    李:「しかし、我々のチームは青年チームの試合でも勝ち、2001、2003、2008の競技大会でも、我々は決勝戦で日本チームを破り1位になりました」

    李:「このようなことからすると、我々のチームは、事実上、世界1位のチームを破って1位になったので、けっして我が国のチームが弱いチームではなく、世界的にも高く評価される強豪として知られています」

    李:「こうして、アジアサッカー連盟では、2008年に我が国の女子チームをアジア最優秀チームとして、そしてチームを率いる金グァンミン監督をアジア最優秀女子監督と評価しました」

    李:「ですから、この試合は世界1位のチーム、アジアの覇権チーム同士がぶつかり、アジアの最優秀チームを決め、最強のチームを決める試合であるともいえます。我々のチームとしては、世界1位のチームにこの試合で勝ち、我々のチームもけっして世界的に弱いチームではないということを示すことが出来る重要な試合であるともいえます」

    李:「(女子は年齢による区別がないので)事実上の国家代表チームです。オリンピックでも世界選手権大会でも、女子には年齢制限がありません」

    李:「日本チームは、世界で1に二なり、アジアでも1位になったことがありますが、試合のやり方を見ると、専門家的な立場からは、自己の固有の試合のやり方、『我々式』といえるような独自のやり方を持っていないチームともいえます。ですから、何回も1位になったスペインのやり方を参考にして、中間地帯でボールをホールドする時間長くし、ボールを奪ったら短いパスで攻撃してくるチームといえるでしょう。」

    李:「しかし、我々のチームは、党が明らかにした思想である『速度戦』に科学戦もミックスし、固有の『我々式』の試合のやり方を持っているのですが、それをきちんと貫徹しているのが我々の女子チームだといえます。高い集団力と精神力で日本チームを圧倒し、走力でも日本チームをこれまでの試合で圧倒してきました。日本チームとしては、もっとも相手にしにくいチームであると評価しています」

    李:「この試合でも、我々のチームの特徴、高い集団主義に基づいた強い精神力を発揮しながら試合をし、高い走力を活かせば、日本チームの短いパスの動きを十分に制圧することができ、試合の主導権を掴み、競技の成果を達成できると思います」

    李:「(北朝鮮チームには)これまでも日本と戦い勝った選手なので、他のアジアチームは日本チームと言えば、世界選手権を保有しているチームなので少したじろぐのですが、我々の選手はそうした心理的な制約は全くありません。むしろ、日本チームが『朝鮮チームとはやりたくないな』という心理が日本の選手に強いといえると思います」

    李:「精神力でも、心理的にも我々のチームが日本チームを押さえているといえるでしょう」

    サッカーにも「党が明らかにした思想である『速度戦』」が活かされているとは思わなかったが、北朝鮮の速攻によるゴールはみごとだったので、解説者が「速度戦」というのは理解ができる。「録画実況」なので、試合後に録画を見ながら解説しているのか、実況を見ながら解説をしているのかは分からない。10時少し前に試合が終わり、0時からの「録画実況」なので、結果を知った後、録画を見ながら解説をしている可能性は十分にあるが、年号が直ぐに出てこないなど、解説の準備が十分に出来ないまましているような場面もある。

    日本の解説者は、北朝鮮が前回のワールドカップのドーピング疑惑により、次回のワールドカップに出場できないということを何回か言っていたが、北朝鮮は「ドーピング疑惑」をどのようにとらえているのであろうか。

    ラ・ウンシムの「速度戦」
    M3u8 Stream20141001_sp1flv_005645102
    Source: KCTV, 2014/10/01

    そして、見事なゴール
    M3u8 Stream20141001_sp1flv_005652845
    Source: KCTV, 2014/10/01

    2点獲得で喜ぶ北朝鮮チーム
    M3u8 Stream20141001_sp1flv_005665512
    Source: KCTV, 2014/10/01

    金グァンミン監督
    M3u8 Stream20141001_sp1flv_005664157
    Source: KCTV, 2014/10/01

    北朝鮮の応援団
    M3u8 Stream20141001_sp1flv_005660198
    Source: KCTV, 2014/10/01

    韓国の応援団「我々の願いは統一」という横断幕を広げて、北朝鮮チームを応援していた。会場のムードは、明らかに日本チームにとっては不利であった。
    M3u8 Stream20141001_sp1lv_005658871
    Source: KCTV, 2014/10/01

    「<朝鮮記録映画>人民のための領導の日々(2)」:金正恩、「1月8日と命名」 (2014年9月25日 「朝鮮中央TV」)

    この「朝鮮記録映画」については、既に記事にしたが、冒頭部分で興味深いナレーションがあった。関連過去記事に既に書いた気もするが、念のために記録しておく。

    金正恩は、朝鮮人民軍第534部隊に水産物加工工場建設を指示し、工場建設に際して現地指導を行った。その様子を伝えるナレーションは次のように述べている。

    「(元帥様は)本当の父親のような情を込め、水産事業所の名前まで付けてくださりました。私たちの元帥様は、1月8日という名称を付けてくださるのは、ここが初めてでした。世の中であったこともないような愛の命名を受け、人民部隊の強力な建設部隊が駆けつけてきました」

    羅先シリーズに書いたように、北朝鮮ガイドは1月8日を「何かある日と理解している」と非常に微妙な表現で話していたが、この「朝鮮記録映画」のナレーションも「1月8日という名称を付けてくださるのは、ここが初めて」、「愛の命名」などと微妙な表現で「1月8日」を扱っている。

    過去記事にも書いたとおり、「1月8日」を金正恩の誕生日とするためには、どうしても「お母さん」問題を解決しなければならないわけだが、一歩ずつそれに向けて動いているのであろう。なお、「お母さん」については、『青年文学』に掲載された「火の約束」の全訳を紹介しようと思っている(とはいえ、「お母さん」の話はわずか数行であるが・・・)。

    この「朝鮮記録映画」では、終わりの方の「元帥様は体が不自由なのにもかかわらず」に関心が集中してしまったが、冒頭でも興味深いナレーションがあったということに後で気付いた。実は、新しい試み(というほどでもないのだが)、運転中に「朝鮮中央TV」の録音を音だけで聞くことにした。普段は日本のFM放送を聞いていたのだが、画像を見ずに音だけで聞いていると新しい発見がある。

    「1月8日工場」と命名する金正恩
    M3u8 Stream20140930flv_011775795
    Source: KCTV, 2014.09.25放送

    この記事の「1月8日」云々も音だけを聞いていて気付いたのだが、「朝鮮芸術映画」も音だけ聞いているとなかなか面白い。昨日は「リンゴを収穫するとき」という「朝鮮芸術映画」の音を聞いていたのだが、農場員の女性が作業班長に「アンニョンハセヨ」というアクセントがおもしろかった。韓国では「アンニョンハセヨ」は自国を問わない日常的な挨拶として使われており、本来の意味である「安寧(元気)かどうか」ということを問う意味合いは薄れているが、この農場員の女性の「アンニョンハセヨ」は、「ヨ」の部分のイントネーションが上がっており、本来の「安寧(元気)ですか?」という意味合いで使われているように感じた。というのも、北朝鮮では挨拶として使われる場合は「ヨ」で終わるフォームではなく「ニカ」で終わるフォームが一般的に使われており(もちろん、短い北朝鮮旅行経験と「朝鮮中央TV」の視聴による観察であるが)、「ヨ」で終わるとこんな感じになるのだなと思いながら聞いていた。恐らく、映像を見ていたらこんな細かなイントネーションの違いなどは、気付かなかったのだろうが、音だけで聞いていると色々と分かってくる。

    また、「リンゴを収穫するとき」に関して言えば、映像を見ることなく映画のストーリーをフォローできる構成になっていることも分かった。日本で放送されるドラマなどは、視覚障害者のために出演者の動きなどを伝える副音声を流していることがあるが、この映画については副音声がなくても進行がよく分かるように出来ていた。視覚障害者を意識してそのように作ったわけではないだろうが、やはり「思想教養」という側面も重視している「朝鮮芸術映画」は「分かりやすさ」を重視しているのではないだろうかとも思いながら聞いていた。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「副部長同志」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

          dprknow

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