「朝鮮民主主義人民共和国中央検察所声明」:「テロ犯」引き渡し要求、北朝鮮は、「国際組織犯罪防止条約」加盟国、共謀罪 (2017年5月13日 「労働新聞」) 

    13日の『労働新聞』に「朝鮮民主主義人民共和国中央検察所声明」が掲載された。内容は、「最高首脳部を狙ったテロ」の国外にいる犯人を北朝鮮に引き渡せというものである。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 중앙검찰소 성명」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2017-05-13-0013

    以前紹介したことがあると思うが、北朝鮮刑法第8条では「共和国領域外で共和国に反対したり、共和国公民を侵害した外国人にもこの法律を適用する」と規定している。地球上どこにいても、「共和国に反対」できないスーパー刑法条項だが、今回はこの法律と同第21条の「犯罪組織体の首謀者と追従者につしては、その組織体が目的とした犯罪に該当する条項により、刑事責任を科し、首謀者は重罰の処す」という規定に従い、南朝鮮「前」国情院関係者などを引き渡せと要求している。「傀儡国情院院長」から「前国情院院長」へと「傀儡」が落ちたのも、新国情院長が対北融和的であるからだろう。

    そして引き渡し要求の根拠として「国際組織犯罪防止条約」の第16条第4項「犯罪人引渡条約の締結を引き渡しの条件とする当事国が、犯人引渡条約を締結していない他の当事国から犯人引き渡し要請を受けた場合、その当事国は、この条項に適用される犯罪と関連し、本条約を引き渡しのための法律的根拠と見なすことができる」ということと、同2条を要約しながら「犯罪を行う目的で一定期間、お互いに協力しながら活動する3人以上で構成された組織犯罪集団を組織犯罪集団と規定し、国際的性格を帯びた犯罪に限り、この条約が適用されると規定されている」と主張している。

    これを言うからには、北朝鮮は「国際組織犯罪防止条約」に加盟しているはずだと思い調べてみたら、やはり加盟していた。調べてみると、同条約に加盟していないのは11カ国だけで、それに日本も含まれている。

    日本外務省は、こうした状況からして

    *************
    我が国において,国際組織犯罪防止条約を締結することにつき,2003年5月に既に国会の承認が得られましたが,条約を実施するための国内法が国会で未成立のため,この条約を締結するには至っていません。我が国以外の全てのG7諸国を含め187か国もの国・地域(2017年4月1日現在)がこの条約を締結済みです。我が国がこの条約を締結することにより,深刻化する国際的な組織犯罪に対する国際的な取組の強化に寄与することができると考えています。国際社会からの要請も踏まえ,早期にこの条約を締結することが,我が国の責務です。

    日本外務省HP、 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(略称:国際組織犯罪防止条約)、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/soshiki/boshi.html
    *************

    と主張しているが、この条約を締結するためにどうして「共謀罪」を制定しなければならないのかについては、明確な説明がない。具体的にこの条約のどの条項に何に抵触して、現行の日本の法制度では加盟できないのかが全く分からない。Q&Aには赤字で「テロを含む組織犯罪を未然に防止し,これと戦うための枠組みである国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結して,国民の生命・安全を守るため」と条約締結の意義について書かれているが、その少し下に「年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控える中,このような国内外の組織犯罪情勢等を考慮すると,テロを含む組織犯罪の未然防止に万全の態勢を整える必要があります」と関係ない理由が書かれている。

    これが詭弁で、同条約を締結することを目的としているのか、オリンピックを口実に「テロを含む組織犯罪の未然防止」を目的としているかはっきりとしない。そもそも、オリンピックを口実に国民の基本的人権を制限する必要もないし、基本的人権を制限しなければオリンピックができないような不安な国ならば、オリンピック開催など返上した方がよい。

    さらに、条約加盟のための「共謀罪」法案作成に当たり、同条約を締結している187カ国の条文を詳細に検討したのであろうか。条約締結を真の目的とするのであれば、それに必要な最低条件をクリアしている国の法律に準じればよいだけである。

    187カ国全てを調べるわけにはいかないので、取りあえず北朝鮮の『法典』に出ている範囲内で北朝鮮の法律を調べてみたが、刑法20条ぐらいしか該当しないように思われる。

    朝鮮民主主義人民共和国刑法
    第20条(犯罪の準備と未遂に対する刑事責任)
    犯罪の準備と未遂に対する刑事責任は、犯罪の危険性の程度、犯罪の実行程度、既遂に至らなかった原因を斟酌して科す。
    犯罪の準備と未遂については、既遂と同様な条項を適用する。
    犯罪の準備は、未遂、犯罪の未遂は既遂よりも軽く処罰する。

    この他の法律がないのであれば、北朝鮮はこの国内法で同条約の締結国となっているのである。北朝鮮で、現実的にはさらに厳しく、時には法律を逸脱した警察権力・国家権力が行使されていると想像に難くないが、それは国際的な非難の対象にこそなれ、締結の条件にはならない。

    だとすると、日本の刑法にも重大な犯罪に対する「予備罪」という条文があり、それだけでも充分に、この条約を締結する根拠となり得る。それを、同条約にある「agreement」という言葉に拘り、「合意」(「共謀罪」では、「計画」と巧みに言い換えているが)だけ犯罪が成立し、その「合意」(あるいは「計画」)の定義すら曖昧な状態での法制化など受け入れられない。

    話が逸れたが、北朝鮮は、この条約締結国として、犯人引き渡しを要求しているわけであるが、ならば、日本も無理に「共謀罪」など制定せず、現行法制度の中で同条約に加盟し、北朝鮮に対して「日本人拉致実行犯」の引き渡しを要求すればよい。「将軍様」が誰であれ「自分の部下が拉致を実行した」ことを認め、北朝鮮の「中央検察所」がこのような見解を出しているのだから、日本は堂々と引き渡しを要求できるはずである。

    それなのに、姑息な言い訳を使いながら、反対が多い法律を無理矢理通過させようとするのは、一体、何がしたいからなのだろうか。現行法で同条約を締結できるのであれば、そうすればよい。

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    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「副部長同志」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
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