「<北朝鮮ミサイル>菅長官「EEZ外に落下、被害報告ない」:日本政府の対応は評価できそう、飛行距離は800キロ、米軍「ICBMではない」、中国11時過ぎるも沈黙 (2017年5月14日 「毎日新聞」)

    14日早5時27分、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したと『毎日新聞』が報じた。日本の官房長官の発表によると、ミサイルは日本海に落下したという。

    『毎日新聞』、「<北朝鮮ミサイル>菅長官『EEZ外に落下、被害報告ない』」、https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170514-00000005-mai-pol

    同じニュースを韓国の『聯合ニュース』でも見ているが、こちらには落下地点に関する情報は出ていない。通常、韓国メディアに詳細が出てから、日本政府が発表するという流れであるが、今回は、発射から結果に至るまでの発表が非常に早い。どこの情報を使っているのかは分からないが、日本独自の監視で判明したことであれば大変素晴らしいし、また、それを迅速に発表しているというのは、評価できる。今回、地下鉄を止めたり、Jアラートを鳴らしたりしたという報道は今のところ出ていないが、発射、分析、日本国内での対応という3つの流れが、迅速かつ正確に行われた結果であるのならば、日本国民にとっては安心のレベルが上がったといえる。もちろん、続報まで確認する必要はあるが。

    続けて、北朝鮮の意図について考えてみる。

    北朝鮮のミサイル発射の兆候については、既に昨日報じられていた。しかし、これは威嚇だけで、実際の発射には至らないと私は予測していた。それは、韓国に対北融和的な大統領が誕生し、昨日の記事にも書いたように、ノルウェーで米朝非公式接触が行われた直後に、北朝鮮自身が「トランプ政権が、我々に接近する姿勢を見せている」と評価し、さらに中国で開催されている2017一帯一路フォーラムに北朝鮮が代表団を派遣しているなど、「外交」が活発化している時期であったからである。

    米国は、一帯一路フォーラムに北朝鮮が参加したことについて、「北朝鮮を招待することは、世界が核・ミサイル問題で北朝鮮に圧力をかけている時期に、誤ったメッセージを送ることになる」と中国外交部に書面を送ったという報道があるので、この点については、北朝鮮を怒らせる一つの要因となり得る。

    『朝日デジタル』、「北朝鮮の「一帯一路」会議参加、米が懸念伝える」、https://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/ASK5F6J9TK5FUHBI01P.html

    『聯合ニュース』を見ていたら、韓国合同参謀本部が、ミサイルの飛行距離は700キロと発表した。

    『聯合ニュース』、「합참 "北, 오전 5시27분 탄도미사일 발사…700여㎞ 비행"(속보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/05/14/0505000000AKR20170514008500014.HTML?template=2085

    Google Earthでこの範囲を見ると、韓国全土、日本は対馬、中国は北京市、ロシアはウラジオストックに到達している。日本海に落下としているので、もちろん北京や対馬は今回の発射では関係ないが、前回のように北東(ロシア方向)に向けたのか、真東に向けたのかは、現在のところ不明である。

    パンヒョン空港は、移動式発射台が確認された場所。赤い円はパンヒョン空港から約700キロの範囲。
    20170514 dprk missile from banghyon r700km
    Source: Google Earth

    『聯合ニュース』が、日本の分析を「速報」として伝えている。普段は逆であるが、それだけ日本政府の対応が迅速であったことを示している。

    『聯合ニュース』、「일본 "北미사일 30분 비행 …일본 EEZ 밖 동해상 낙하한 듯"(속보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/international/2017/05/14/0602000000AKR20170514009800073.HTML?template=2085

    韓国大統領文ジェインは、NSCを招集したというが、まだ組閣が終わっておらず、朴槿恵時代の閣僚との会合になるという。そうしたことこからすると、NSCは総合参謀本部からの朝鮮人民軍の動向報告、韓国軍の警戒態勢報告などを受けるに留まるのではないかと思う。

    『聯合ニュース』、「文대통령, 北탄도미사일 발사에 NSC 첫주재…대북메시지 주목(종합2보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/05/14/0501000000AKR20170514008252001.HTML?template=2087

    日本首相は毎度おなじみの「断じて容認できない。ミサイル発射はわが国に対する重大な脅威であり、国連の安保理決議に明白に違反する」を繰り返しただけであるが、国際的にはそれが日本にできる全てであり、仕方がない。

    上で引用した、日本官房長官の発表報道を読んで不思議に思ったは、「約30分後に日本海に落下したとみられる」と言っている点である。このところ、北朝鮮から日本へのミサイル到達時間について記事にしようと色々と調べているのだが、きちんと計算するには、どうやら数学が苦手な私では到底解くことができない複数の数式が必要になるので、結局のところ分かっていない。加えて、その数式を適用したとしても、変数が多すぎて、なかなか正確には出せないということのようだ。ただ、北朝鮮が予告した上で発射したロケットが沖縄上空を通過したとされる時間を見ると、約10分かかっている。だとして、今回、西海ロケット発射場に比較的近い地点から発射したミサイルが、落下(着水)するまでに30分もかかっているというのであれば、以前もあったように非常に高角度で発射し、相当の高度まで上昇したのではないかと思われる。であるとすると、これは北朝鮮にとっては「大成功」の部類に入り、早ければ今日の「朝鮮中央TV」の中で「元帥様」の「革命活動」として紹介される可能性がある。「朝鮮中央通信」は、現時点ではこのミサイル発射を伝えていない。

    トランプは、この発射についてなにもツイートしていない。FBI長官解雇や「Fake News」との「闘い」で頭がいっぱいなのであろう。

    問題は中国である。一帯一路フォーラムに米日韓と北朝鮮代表まで招聘して開催されている最中のミサイル発射である。これは、中国の神経を逆なでしても余りある。しかも、上の地図で見られるように、ミサイルを北京に向けて発射していれば、一帯一路フォーラム会場を打撃できるかの如くの落下地点を選んでいる。一応、中朝間の舌戦は一段落付いたものとみていたが、もしかするとパイプラインによる石油供給で軋轢が残っているのかも知れない。

    また、カールビンソンが日本海に展開している中、今回は、日本海に落としている。非常に危険で挑発的な方向ではあるが、これもトランプ政権の態度変化を試すためなのかもしれない。同政権が「先制打撃」をさかんに口にしていたときは、北朝鮮もその危険度を認識して日本海に着水させるようなミサイルは発射しなかったが、今度は、同政権の態度が変わったということを見越して、日本海に落としている。そして、上に書いたように「大成功」という話になれば、トランプ政見はどう出てくるのか、依然として危ないが掛けといえる。もちろん、ノルウェーでの非公式接触で、「発射しても大丈夫」という確信を得ての発射なのかもしれないが、破れかぶれの挑発という可能性も完全にないとは言えない。現状、米側の反応は伝わってきていないが、中国の反応と共に注視しなければならない。

    <追記>
    もう一つの可能性としては、4月に実現できなかった「太陽節」の「祝砲」を1ヶ月後に打ち上げた可能性である。「太陽節」前後に発射したミサイルは、「自爆」させた事実上の「成功」であったとしても、国際的にも国内的にも目に見える結果としては「大成功」と誇れるものではなかった。しかし、今回の発射は、今のところ「成功」と見られるので、1月遅れはしたが、「太陽節」の「祝砲」と充分になり得る。「最高首脳部を狙ったテロ」への抗議という可能性もあるが、犯人まで特定して北朝鮮の「検察所」が引き渡し要求までしているのだから、ミサイルで殲滅させる話ではない。しかも、融和的な政権が誕生した「南朝鮮」を「前傀儡国情院一味」と共に吹き飛ばしてしまっては、話にならない。

    <追記2>
    「800km飛行」とのことなので、地図を修正した。

    20170514 800kmradius
    Source: Google Earth

    <追記3>
    文ジェインは、「国連安保理関連決議の明白な違反であるだけではなく、朝鮮半島はもちろん、国際平和と安全に対する深刻な挑発行為"유엔 안보리 관련 결의의 명백한 위반일 뿐 아니라 한반도는 물론 국제평화와 안전에 대한 심각한 도전행위"」と非難した。

    『聯合ニュース』、「文대통령 "北탄도미사일 발사, 안보리결의 위반…강력규탄"」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/05/14/0501000000AKR20170514017100001.HTML?template=2085

    <追記4>
    「朝鮮中央TV」、新しく出た「リョミョン通り」建設に「献身」した「元帥様」の活動を紹介する「朝鮮記録映画」を放送中。「リョミョン通り」で「太陽節」の「祝砲」は充分だと思ったのだが。米国との「決戦」を迎えた時期に、「元帥様」が「リョミョン通り」建設を決めたのは、「元帥様」の「度胸を世界を誇示した」と言っているのだから、それで充分なのに。

    <追記5>
    『聯合ニュース』によると、米太平洋司令部が、北朝鮮が発射したミサイルは「ICBMとは異なる」と発表したと報じた。

    『聯合ニュース』、「美태평양사령부 "北발사 미사일 비행, ICBM과는 달라"」、http://www.yonhapnews.co.kr/international/2017/05/14/0608000000AKR20170514013500009.HTML?template=2087

    そもそも、米国が言う「北朝鮮のICBM」の定義は曖昧であったのだが、今回発射したミサイルが「ICBMと異なる」としているのは、米本土に到達する文字通り「大陸間」ではなかったこともあるが、北朝鮮による中短距離のミサイル発射は、米国が「先制攻撃」の一つの条件として警告している「ICBMの発射とは異なる」という立場を明確にしたことになる。

    今後、一般的な声明として「明白な安保理決議違反」というような声明は国務省かホワイトハウスから形式的に出されるだろうが、その後、米国が何を言い出すかに注目する必要がある。

    <追記6>
    その系では、明日、ホワイトハウスの朝鮮半島担当官が訪韓し、韓国大統領らと会談することになっている点にも注目しておく必要がある。北朝鮮は、同担当官が訪韓する前にミサイルを発射しておけば、米韓当局者がそれをどのように評価・判断するのか、特に文ジェインが韓国の立場、米国との関係でどのようなスタンスを取るのかを見極めることができる。文ジェインは、「北朝鮮との対話の可能性は開かれているが、北朝鮮が誤った判断をしないよう挑発に対しては断固たる対応をしなければならない ( "북한과의 대화 가능성을 열어두고 있지만, 북한이 오판하지 않도록 도발에 대해서는 단호히 대응해야 한다")」と述べている。文ジェインのこの発言は、「断固たる対応」とは言っているものの、依然として「対話の可能性は開かれている」とも言っている。前者は米国も含む国際社会、そして韓国民へのメッセージであり、後者は北朝鮮に対するメッセージといえる。

    『聯合ニュース』、「美 백악관 한반도 담당자들 내일 방한…한미정상회담 조율」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/05/13/0503000000AKR20170513046200014.HTML?template=2087
    『聯合ニュース』、「文대통령 "대화 가능성 열어두되 北 오판 않도록 단호대응"(종합)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/05/14/0501000000AKR20170514019300001.HTML?template=2085

    <追記7>訂正
    Global Timesをよく見たら、北京時間9時31分のスタンプがついた『新華社』報道が下の方にあった。

    Global Times, DPRK launches projectile believed to be ballistic missile: report, http://www.globaltimes.cn/content/1046801.shtml

    Global Timesは、北朝鮮のミサイル発射を日本時間の11時が過ぎるも報じていない。4月29日5時30分(日本時間)に北朝鮮がミサイルを発射したときは、Global Timesは『新華社』を引用しながら、8時23分(北京時間、日本時間9時23分)のタイムスタンプで報じている。

    Global Times, DPRK test-launches ballistic missile but fails, http://www.globaltimes.cn/content/1044623.shtml
    Global Times, Chinese president inaugurates Belt and Road forum, http://www.globaltimes.cn/content/1046802.shtml

    ところが今日は、『新華社』を引用しながらの第1報は、習近平による一帯一路フォーラムの開会宣言と基調演説である。中国にとっては、北朝鮮のミサイル発射どころではないというところが実状なのだろうが、習近平の同フォーラム開会宣言への「祝砲」が如く打ち上げたミサイルを中国はどう受け取るのか、今のところGlobal Timesに報道はない。

    <追記8>
    『聯合ニュース』がAPが専門家から聞いた話を引用しながら、今回発射したミサイルは4500キロ飛行可能と。到達高度は2000キロとしている。

    『聯合ニュース』、「美전문가 "北미사일, 정상발사하면 사거리 4천500㎞ "」、http://www.yonhapnews.co.kr/international/2017/05/14/0619000000AKR20170514030700009.HTML?template=2087

    もう少しでICBMになりそうな距離だ。
    20170514 dprk missile 4500km radius
    Source: Google Earth

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