安保理決議2375採択:石油制限、労働者受入禁止(朝鮮食堂壊滅へ)、北朝鮮IT製品も影響 (2017年9月12日)

    11日、国連安保理で北朝鮮制裁決議2375が採択された。安保理HPには全文がまだ出ていないので、安保理米代表部のFact Sheetから主要な内容を見ておく。

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    安保理決議2375主要内容
    Resolution 2375 (2017) includes the following key elements:

    石油
    Oil/Petroleum

    北朝鮮への石油供給を30%、精製済みの石油は55%削減する。これにより、精製済みの石油(ガソリン、軽油、重油など)に200万バレルの上限が設けられる。北朝鮮は、現在850万バーレルの石油、450万バーレルの精製済み石油、400万バーレルの原油を受け取っている。
    This resolution reduces about 30% of oil provided to North Korea by cutting off over 55% of refined petroleum products going to North Korea.
    It will achieve this through imposing an annual cap of 2 million barrels per year of all refined petroleum products (gasoline, diesel, heavy fuel oil, etc.)
    North Korea currently receives a total of about 8.5 million barrels of oil/petroleum: 4.5 million in refined form and 4 million in crude form.

    決議では、北朝鮮に対する原油供給量を現在のレベルで凍結し、中国が丹東ー新義州のパイプラインで供給している原油以外の提供を禁止する。また、決議では天然ガスとコンデンセートの輸出も禁止する。これにより、北朝鮮が石油精製のための添加物を得ることを防止する。
    The resolution freezes the current amount of crude oil provided to North Korea by banning countries from providing additional crude oil beyond what China provides through the Dandong-Sinuiju pipeline.
    The resolution also bans the supply to North Korea of all natural gas and condensates -- this will prevent North Korea from obtaining substitutes for refined petroleum products.

    繊維
    Textiles
    決議では北朝鮮による全ての繊維製品の輸出を禁止する。
    The resolution bans all North Korean textile exports.
    繊維輸出は、安保理がこれまで禁じてこなかった北朝鮮最大の輸出部門であり、これにより北朝鮮は過去3年平均で760万ドルを獲得していた。
    Textile exports – North Korea’s largest economic sector that the Security Council had not previously restricted – earned North Korea an average of $760 million in the past three years.
    これまでの安保理決議と合わせて北朝鮮が公表した2016年の輸出額27億ドルの90%以上が禁止の対象となる(石炭、繊維、鉄鋼、海産物)。これには北朝鮮海外労働者からの送金は含まれていない。

    Combined with the previous Security Council resolutions, over 90% of North Korea’s publicly reported 2016 exports of $2.7 billion are now banned (coal, textiles, iron, seafood), which does not include revenues from overseas workers.

    海外労働者
    Overseas Laborers
    改定安保理決議では、約10万人の北朝鮮労働者が海外で得る収入5億ドル/年を北朝鮮政権が獲得できなくなる。
    This provision we adopt today will eventually deny the regime another half billion dollars each year it takes from the nearly 100,000 North Korean citizens working around the world to earn wages.
    現在契約中の企業への影響を細小化するために、この決定は契約更新までは適用されない。しかし、契約更新は禁止される。
    In order to minimize business disruptions to existing contracts and work authorizations involving North Korean overseas workers, this provision allows existing authorizations to reach their original expiration dates but does not authorize any renewals.

    検閲
    Interdiction

    決議では、加盟国が公海上で禁止品目(通常兵器、石炭、繊維、海産物など)の密輸を防止する手段も提供している。北朝鮮は、石炭と鉄鋼を巧妙に隠蔽して海路で他国に密輸出している。
    The resolution provides member states new tools to stop high seas smuggling of prohibited products (e.g., conventional arms, coal, textiles, seafood, etc.). North Korea has been smuggling coal and iron ore to other countries using very sophisticated evasion techniques by sea.

    旗国が疑わしい船舶の検査を拒否した場合、旗国は検査のために船舶を港に向かわせることが求められる。
    If flag states refuse to allow inspections of suspicious vessels, then the flag state is required to redirect the vessels to a port for inspection.

    もし、旗国あるいは船舶が検査に協力しない場合は、船舶は凍結資産指、入港拒否、登録解除など、罰則を課させる。
    If a flag state or vessel does not cooperate with inspections, then the vessel can be designated for an asset freeze, denied port access, de-registered, and suffer other penalties.

    合弁企業
    Joint Ventures

    決議では、北朝鮮との全ての合弁企業を中止することを求めている。これにより、北朝鮮当局が合弁契約から得られる収入を枯渇させるだけではなく、今後、北朝鮮の新しく弱い商業を支援するための投資や技術移転を停止させる。
    The resolution requires the end of all joint ventures with North Korea. This will not only starve the regime of any revenues generated through such arrangements, it will now stop all future foreign investments and technology transfers to help North Korea’s nascent and weak commercial industries.

    しかし、人民の需要を保護するために、羅津の国際商取引、中朝国境を流れる鴨緑江の水力発電所、中露国境ハサンー羅津間の鉄道とロシアの石炭を他国に輸出するための港湾プロジェクトは除外される。
    However, to protect civilian needs of the North Korean people and continue facilitating international commerce involving the North Korean port of Rajin, the China-DPRK hydroelectric power stations on the Yalu River and the Russia-DPRK Khasan-Rajin rail and port project to transshipment of Russian coal to other markets are exempted.

    指定
    Designations
    制裁決議では、北朝鮮政府と軍隊を運営し、人民を抑圧している北朝鮮政権機関(労働党組織指導部、中央軍事委員会、宣伝・扇動部)のほとんど全ての資産を凍結する。
    The resolution imposes asset freezes on the most important North Korean regime organs: Organizational Guidance Department, Central Military Commission, and Propaganda and Agitation Department that run the DPRK government, military, and keep its people down.

    決議には、北朝鮮への移転が禁止される大量破壊兵器や通常兵器に用いられるデュアル・ユース品目と技術が追加されている。
    The resolution facilitates the listing of additional dual-use items and technology that could be used for WMD or conventional arms-related purposes that will be banned for transfer to and from North Korea.

    決議は、北朝鮮の輸出禁止品目を他国に密輸する船舶を特定する手段を合理化する。
    The resolution also facilitates a process to identify vessels caught smuggling prohibited North Korean goods to other countries.

    US Mission to the UN, FACT SHEET: Resolution 2375 (2017) Strengthening Sanctions on North Korea
    *********************

    石油については、全面禁輸ではなく丹東ー新義州パイプラインの現供給量を維持するとなっている。過去記事で、丹東ー新義州パイルラインの中の油の種類について話題にしたが、原油のようだ。やはり、Google Earthで確認史が新義州郊外にある製油所に原油の形で供給され、そこで精製されているようである。また、北朝鮮が石油精製をして、自由に精製済み製品を作れないよう、精製に必要な添加物の輸出も規制している。天然ガスについては、中国からの輸出をターゲットにしているのか、ロシアからの輸出をターゲットにしているのか分からない。

    繊維製品の輸出も禁止された。実は、「探査」の途中で、中国の市場や百貨店を歩きながら衣料品のタグを見ているのだが、made in DPRKと書かれているものはまだ見たことがない。恐らく、made in Chinaとして売っているためだと思うが、そんなこともあり、北朝鮮の繊維製品がそれほど多く輸出されていると印象はない。過去、羅先で韓国と合弁で設立した衣料品工場に行ったが、その時も、タグはmade in Chinaにしていると言っていた。made in Chinaのタグが付けられた衣料品が北朝鮮から持ち出されるのを規制するのは、なかなか大変だと思う。

    労働者については、厳しく規制している。中国で働いているドンム達もいずれ契約期間が切れるのだろうから、北朝鮮に帰国、そして新たな受け入れは禁止されているので、朝鮮人民がいるホテルも食堂も壊滅することになる。恐らく、3年ぐらいの雇用契約で来ているのだろうから、直ぐにはなくなることはないが、このままの状態が続けば、いずれ27探査隊員にとっては厳しい状況になる。昨夜の記事にも書いたが、偶然だが今年は「探査」の機会が多いので、できるだけ回っておこうと思う。ともかく、全体として、ドンム達の口がとても堅くなっている。

    その系で合弁企業も同じで、これまた昨夜の記事に書いた長春の仁風閣食堂も合弁解消を求められるのであろう。合弁解消、北朝鮮従業員の雇用契約更新禁止となれば、自動的に撤退となる。また、北朝鮮のIT系の製品を作っている「ハナ電子」や「プルン・ハヌル電子」も合弁企業のはずなので、こうした企業での製造がストップし、タブレットやスマホが供給できなくなる可能性も高い。さらには、過去記事で自動車のモデルを紹介した「平和自動車」も自動車製造ができなくなるのではないだろうか。

    中国で参加した会議では、北朝鮮に対する制裁の効果を出すためには、北朝鮮企業を国際市場に巻き込むべきだという議論があった。今回は、始まったばかりの北朝鮮の国際市場との関係を断ち切る形になっている。これを時期尚早と捉えるべきかどうかは議論の余地があるが、現状の国際市場との繋がりのレベルでは、仮にそれが制裁措置で断絶されたとしても、北朝鮮は「自力自強」で対抗できるのではないだろうか。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

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